遺産分割

遺産分割とは?

遺産分割とは、亡くなった人(被相続人)が残した財産を、共同相続人の間で分ける手続きです。

遺言書がある場合には、原則として遺言書の内容に従って遺産分割が行われます。

これに対して、遺言書がない場合については、遺産分割協議・調停・審判などの手続きによって、相続財産の分け方を決定することになります。

また、遺言書に不備がある場合や、遺言書で分割方法が指定されていない相続財産が残っている場合などにも、やはり遺産分割協議等を行う必要があります。

遺産分割の手続きについて(協議・調停・審判)

遺言書による場合以外の遺産分割の方法には、協議・調停・審判の3種類があります。

  • 遺産分割協議
    相続人同士の話し合いで、遺産分割の方法を決定します。
  • 遺産分割調停
    裁判所において、調停委員が相続人の言い分を公平に聴き取り、遺産分割の話し合いを仲介します。
  • 遺産分割審判
    審判は、訴訟をイメージしてもらえれば分かりやすいです。どう遺産分割するべきかを裁判官が判断します。ただし、訴訟とは異なり非公開です。

円満・迅速な相続を実現するという観点からは、基本的には遺産分割協議による解決を目指すのが望ましいでしょう。

もし遺産分割協議がこじれてしまい、解決の見通しが立たなくなった場合には、調停→審判と段階的に手続きを移行するのが一般的です。

遺産分割フローチャート

遺産分割の方法

①現物分割

遺産を構成する個別の財産の形状・性質を変更することなく、各相続人に取得させる遺産分割の原則的な方法です。

ただし、具体的相続分と実際の分割結果が一致しない場合には、差額について金銭による調整が行われることもあります。

②代償分割

一部の相続人に具体的相続分額を超える遺産を取得させる代わりに、当該取得者に他の相続人に対する債務(代償金)を負担させる方法です。

現物分割が財産の性質上不可能な場合や、不動産のように財産が細分化されると財産価値を著しく損なうような場合に代償分割の可否を検討しますが、代償金債務を負担する相続人が支払能力を有することが必要となります。

③換価分割

遺産を第三者に売却処分して、その代金を相続人間で分割する方法です。

現物分割が不可能かつ代償金債務の支払も困難であるような場合や、相続人が活用できない遺産がある場合などに検討します。

④共有分割

遺産を具体的相続分に従って、物権的に共有する方法です。それぞれの相続人が単独の所有権ではなく「共有持分権」を有することになります。

現物分割、代償分割、換価分割のいずれの方法も困難である等の場合における最終的方法とされており、共有分割後の共有状態を解消するには、当事者同士の協議か、協議が整わない場合には共有物分割訴訟(民法258条)によることになります。

特に不動産を共有する場合には、権利者が複数となることで将来不都合が生じる可能性もあり、問題の先送りにしかなりませんので、可能な限り共有分割は避けることをお勧めします。

遺産分割協議の主な流れ

遺産分割協議を行う際には、大要以下の流れを辿ることになります。

①相続人の確定

まず、遺産分割協議に参加すべき相続人を確定します。

相続人には順位があり、より高順位の相続人が参加することになります。

被相続人の配偶者は常に相続人となり、その他の者は以下の順で、上位のいない場合は次の順位というように相続人が決まります。

  • 第1順位:被相続人の子(子が先に亡くなっている場合は孫)
  • 第2順位:被相続人の直系尊属(父母や祖父母で被相続人に親等の近い者が優先)
  • 第3順位:被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は甥・姪)

遺産分割 相続人順位

遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があり、一部でも相続人が漏れていると、遺産分割が無効・やり直しになってしまいます。

そのため、相続人を漏れなく把握することが不可欠です。

親族構成がシンプルな場合には大きな問題は生じにくいですが、離婚・再婚・代襲相続が絡む場合や、相続人の数が多い場合などには、丁寧に相続人の確定作業を行うことが大切です。

相続人の確定は、主に戸籍の情報を基にして行います。

②相続財産の調査・評価

遺産分割の対象となる相続財産の全体像を確定することも、きわめて重要です。

各相続人の具体的な法定相続分や遺留分の額は、相続財産全体の金額(評価額)に応じて決まります。
そのため、相続財産の把握・評価が不十分・不適切な場合には、正しい遺産分割を行うことができません。

相続財産を管理している相続人が財産隠しを行っているケースもあり得ますので、預貯金の入出金履歴などを精査して、不審な財産の移動がないかをよく確認する必要があります。
不動産や未公開株式などについては、専門的な手法を用いた客観的な価値評価を行うことが必要です。

なお、生命保険金を遺産分割できないかという疑問が多くありますが、原則としては生命保険金(死亡保険金)は遺産分割の対象にはなりません。

[参考記事] 受取人の死亡保険金は遺産分割の対象になる?相続税は課税される?

また、借金などの債務も相続財産に含まれますが、債権者との関係に注意が必要です。

[参考記事] 相続法改正|相続分の指定があるときの債権者に対する義務の承継

③遺産分割協議

相続財産の全体像が確定したら、その財産を具体的にどのように分けるかについて、相続人全員で話し合います。
なお、この話し合いは必ずしも一堂に会さずとも、例えばメールなどでも可能です。

相続人全員が同意できるのであれば、相続財産はどのように分けても構いません。

しかし、相続人にはそれぞれ、被相続人に対する思いや相続財産への愛着があるため、すんなり遺産分割の交渉がまとまることはあまり多くありません。

遺産分割の交渉を円満・迅速にまとめるためには、法定相続分などの法律上の権利をベースとして、感情を抑えて冷静な話し合いを行うことが大切になります。

他の相続人の言い分や権利も尊重しつつ、お互いに歩み寄りの姿勢を見せれば、遺産分割協議の早期終結が期待できるでしょう。

法定相続分は、相続人の組み合わせによって異なり、次のように定められています。

遺産分割 法定相続分

なお、法定相続分を超えて相続する場合は、登記などの対抗要件が重要になりますので、こちらの記事をご参照ください。
[参考記事] 相続法改正|法定相続分を超えて権利を承継する場合は対抗要件に注意

また、「特別受益」や「寄与分」にも注意が必要です。

特別受益とは

一部の相続人が、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻もしくは養子縁組のため、もしくは生計の資本として生前贈与を受けた場合に、受けた利益を特別受益といいます。

特別受益が認められる場合は、相続財産に特別受益の価額を加算したものを相続財産とみなし、特別受益を受けた相続人については、相続分から特別受益の額を控除して具体的相続分を確定させることになります。

寄与分とは

共同相続人の中に、被相続人の財産の維持・増加について特別の貢献を行った者がいる場合に、その貢献を寄与分といいます。

寄与分が認められる場合には、相続開始時の財産から寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し、寄与を行った相続人にその寄与分を取得させて、相続人間の公平を図ることになります。

④遺産分割協議書の作成

遺産分割の内容について、相続人全員が合意に至った場合には、その内容を遺産分割協議書にまとめて明確化しておきます。

遺産分割協議書を作成する際には、各相続財産を誰が相続するのかについて、明確な文言で漏れなく記載することが大切です。

遺産分割協議書の内容に不備があると、後で相続人同士のトラブルが再燃する可能性があるので、十分注意しましょう。

遺産分割調停・審判になった場合

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、家庭裁判所で調停委員と呼ばれる専門家に遺産分割の話し合いをサポートしてもらい、合意を目指す手続きです。

基本的には当事者同士は非対面で、調停委員を介して話し合いが進みますので、感情的になりにくく、落としどころも提示してもらえるというメリットがあります。

調停を行う際は、家庭裁判所に申立書と戸籍関係の必要書類を提出します。
なお、もし遺産の範囲などに争いがある場合は、遺産分割調停では解決できないため、先に交渉または訴訟で「何が遺産分割の対象になるか」を確定させておく必要があります。

調停はおおむね1,2ヶ月に1回程度の頻度で行われ、半年~1年程度で結論を出すことが多いです。

話し合いがまとまり、調停が成立すれば、調停調書というものが作成されますので、これに基づいて、登記や名義変更など様々な相続手続きを進めることができます。
また、もし共同相続人などが調停で決まった内容を履行しない場合は、調停調書によって強制執行も可能です。

もし調停で話し合いがまとまらない場合は、調停不成立となり、自動的に遺産分割審判に移行します。

遺産分割審判とは

遺産分割審判は、ここまでの話し合いの手続きとは異なり、当事者がそれぞれ書面にまとめ、証拠を用いて主張・立証していきます。イメージとしては訴訟に近いものです。

単に自分の希望を述べるのではなく、それが法的に妥当であることを説得的に主張する必要があるため、審判になる場合は、それまでご自身で進められていた方も弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

何回か期日を重ね、最終的には裁判官が「審判」という形で判断します。これは判決のイメージに近いでしょう。
審判も、概ね1,2ヶ月に1回行われ、半年~1年程度で判断されることが多いですが、長いものでは2年以上かかるケースもあります。

審判が確定すると「審判書」という形で判断が示され、これに基づいて様々な手続きを行うことができ、強制執行も可能です。

また、もし審判に不満がある場合、確定前であれば即時抗告といって高裁での審理を申し立てることができます。
これは審判書を受け取った翌日から2週間以内に行わなければならず、迅速な対応が必要です。

遺産分割を弁護士に依頼するメリット

遺産分割は、当初から弁護士に依頼することについて、以下のとおり多くのメリットが存在します。
遺産分割についてお困りの方は、ぜひお早めに弁護士にご相談ください。

①相続人の確定や相続財産の調査・評価を適切に行うことができる

相続人の確定や、相続財産の調査・評価を行う際には、法律その他の専門的な観点からの検討が不可欠です。

弁護士は、相続に関する法律上のルールを正確に適用して相続人の確定を行い、さらに相続に関する経験を活かして、隠し財産も含めた適切な財産調査を行います。

また、相続財産の評価についても、必要に応じて不動産会社・不動産鑑定士・公認会計士などと連携のうえで対応できるので、安心してお任せいただけます。

②感情的な話し合いを避け、円満・迅速な解決を目指せる

遺産分割協議を当事者である相続人だけで行うと、被相続人に対する思いや相続財産への愛着などが悪い方向に働き、話し合いが感情的になって迷走してしまうケースがよくあります。

第三者である弁護士が遺産分割協議を仲介することにより、揉め事のポイントを整理したうえで冷静な話し合いを行い、適切な妥協点を探ることが可能になります。

その結果として、遺産分割協議を円満・迅速にまとめることができる可能性が高まるでしょう。

③法律上の権利を踏まえた公正な遺産分割が実現できる

遺産分割協議では、他の相続人からもさまざまな主張や要望が提示されます。
その内容が法的に正当なものかどうかわからないと、不合理な主張を受け入れてしまうことにもなりかねません。

この点、弁護士をアドバイザーとして活用することで、ご自身や他の相続人の法律上の権利内容を踏まえたうえで、適切な交渉方針を定めることができます。

遺産分割の交渉では、時には妥協すべき場面があることも事実です。

しかし、他の相続人の横暴な主張を通してしまっては、遺産分割後も納得がいかない気持ちが残ってしまうでしょう。

弁護士のサポートを受けたり、弁護士に遺産分割協議を代理したりしてもらえば、公正な遺産分割が実現できる可能性が高まり、ご自身も納得できる遺産分割ができます。

④不備のない遺産分割協議書を作成できる

遺産分割協議書は、各相続人の権利内容に関わる重要な法律文書です。

そのため、法的に不備のない遺産分割協議書を作成することが、遺産分割の仕上げとして非常に大切といえます。

基本的な遺産分割協議書と作成のポイント

オーソドックスな遺産分割協議書の例をお見せします。
非常にシンプルな家族構成と協議内容ですが、これだけでも多数のポイントがあり、協議書の作成が重要であることがお分かりいただけるかと思います。

クリックで拡大します。

遺産分割協議書の例遺産分割協議書の例

実際には、例えば包括受遺者(遺贈を受けた人)との関係、相続分を譲り受けた人や、換価分割や代償分割などの記載も必要ですので、上記の例よりさらに複雑になります。

弁護士は法律文書の作成を専門的に取り扱っているため、複雑な遺産分割協議書の作成も安心してお任せいただけます。

⑤調停・審判への移行もスムーズ

遺産分割協議がまとまらない場合には、調停・審判手続きへの移行も検討しなければなりません。
遺産分割調停・審判は、裁判所で行われる複雑・専門的な手続きであり、準備にも大きな手間がかかります。

弁護士に遺産分割の相談をしていれば、途中で調停・審判に移行する必要性が生じた場合にも、スムーズに対応することが可能です。

また、裁判所に提出する書類などの準備や、期日当日の対応なども多くの部分を任せることができるので、依頼者のご負担は大きく軽減されるでしょう。

遺産分割問題の弁護士費用

泉総合法律事務所では、お気軽にご相談いただくため、リーズナブルな価格設定をしております。
まずはぜひご相談だけでも、お待ちしております。

ただし、着手金・報酬金のいずれについても、相続人が多数、特別受益・寄与分の主張、その他複雑・難解な事案については、別途協議により定めるものとします。
日当:ご相談時に弁護士からご説明いたします。
実費:その他実費として、郵便切手代、印紙代、交通費、金融機関等への弁護士法による照会手数料、戸籍謄本等の取得にかかる費用、公正証書作成費用等がかかります。
財産調査を行う場合の費用は、ご相談時に弁護士からご説明いたします。
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