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根抵当権付き不動産の注意点|相続した土地に根抵当権がついていたら

根抵当権 相続

根抵当権付きの不動産を相続した場合には、元本確定に関する法律上のルールなどを踏まえつつ、その不動産をどのように活用したいのかをよく考えて、対応を検討する必要があります。

この記事では、根抵当権付きの不動産を相続する際の法律上の注意点について解説します。

1.そもそも根抵当権とは?

根抵当権は、債権を担保する「抵当権」の一種ですが、通常の抵当権とは若干異なる法的性質を有しています。

(1) 根抵当権の定義・具体例

根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度で担保する抵当権と定義されています(民法398条の2第1項)。

「不特定の債権」とは、根抵当権の設定時において、金額や発生原因が特定されていない債権を意味します。

たとえば抵当権が担保する債権が、以下のように定義されていたとしましょう。

ケース①

AのBに対する1000万円の貸付債権

ケース①の被担保債権は、金額も発生原因も特定されているため「特定債権」に当たります。
この場合、特定債権を担保する抵当権は、通常の抵当権ということになります。

これに対して、抵当権の被担保債権が以下のように定義されている場合はどうでしょうか。

ケース②

AがBに対して将来取得する一切の債権

ケース②の被担保債権は、金額も発生原因も特定されていませんので、「不特定債権」に当たります。
この場合、不特定債権を担保する抵当権は「根抵当権」に当たることになります。

もう一つ例を見てみましょう。
抵当権の被担保債権が以下のように定義されている場合はどうでしょうか。

ケース③

AのBに対する1000万円の貸付債権および当該貸付債権に係る貸付契約に基づく一切の債権

ケース③では、抵当権によって、貸付契約から生じる債権をすべて担保することが意図されています。貸付契約から生じる債権は、貸金返還請求権に加えて、派生する遅延損害金や契約違反に基づく損害賠償請求権など多岐にわたり、それらが発生するかどうかは不確実です。
したがって、ケース③のように被担保債権を定めた場合には、根抵当権に当たるものと解されています。

このように、通常の抵当権と根抵当権の違いを判断するには、被担保債権の実態を正確に分析する必要があります。
判断が難しい場合には、弁護士にご相談ください。

(2) 極度額とは?

不動産に根抵当権を設定する場合、必ず「極度額」を定めなければなりません

極度額とは、根抵当権によって担保される債権の上限額を意味します。

たとえば、根抵当権の極度額を1000万円と定めたとしましょう。
この場合、仮に被担保債権の金額が1000万円を超えたとしても、根抵当権者が根抵当権の実行によって回収できる債権額は、1000万円にとどまります。

根抵当権は、被担保債権の範囲が予想外に広がってしまう危険があるので、根抵当権設定者を保護する目的で、極度額を定めることが義務付けられているのです。

2.根抵当権付き不動産の相続では「元本の確定」に注意

通常の抵当権とは異なり、根抵当権には「元本の確定」という制度があります。
特に相続については、元本の確定について特別のルールが適用されるため、予期せぬ法的処理が自動的に行われることがないように注意が必要です。

(1) 「元本の確定」とは?

元本の確定とは、根抵当権によって担保される債権を、すでに発生しているものに限定する形で特定することをいいます。

もともと根抵当権は不特定の債権を担保するものです。しかし、被担保債権がそのまま不特定では、根抵当権設定者の地位は長期にわたり不安定になってしまいます。
そのため、一定の条件を満たす場合には、根抵当権の元本を確定させ、根抵当権設定者の法的負担の範囲を限定するものとされているのです。

(2) 相続開始後6か月で根抵当権の元本が確定する

根抵当権と相続の関係では、根抵当権者または債務者につき相続が開始した場合、何もしないまま6か月が経過すると、自動的に相続開始のときに根抵当権の元本が確定したものとみなされてしまうことに注意が必要です(民法398条の8第1項、第2項、第4項)。

元本の確定は、基本的には根抵当権設定者にとって有利な事情となります。
しかし後述するように、今後も債権者(=根抵当権者)から継続的な融資を受けたい場合などには、債務者(または根抵当権設定者)の側から、元本の確定を阻止する対応をとる必要があります。

(3) 根抵当権を存続させるには、債権者・債務者間の合意と登記が必要

元本の確定を阻止し、根抵当権を存続させるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • ① 根抵当権を存続させることについて、根抵当権者と根抵当権設定者が合意をすること(民法398条の8第2項)
  • ② ①の合意内容について、相続の開始後6か月以内に登記をすること(民法398条の8第4項)

具体的には、根抵当権設定者である不動産所有者と債務者が共に被相続人であった場合に、不動産を相続人名義に変更する相続登記(所有権移転登記)と、債務者の相続による変更登記及び、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた指定債務者となる相続人を登記(指定債務者の合意の登記)します。
この指定債務者となる相続人は、相続人の一部でも相続人全員でも構いません。

これにより、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保することになります(民法398条の8第2項)。

3.相続不動産を売却したい|根抵当権を外してもらうには?

相続した根抵当権付きの不動産を売却したい場合には、売却前に根抵当権を抹消する必要があります。
根抵当権を抹消するために必要な手続きは、以下のとおりです。

(1) 被担保債務の完済が必要

根抵当権は、根抵当権者の有する債権を担保するためのものです。
したがって、根抵当権を抹消するためには、被担保債務を完済する必要があります。

もし、不動産の売却価格が被担保債務の金額を上回る場合には、売却後に代金を被担保債務の弁済に充当することを条件として、根抵当権者が根抵当権の抹消に応じてくれることが多くなっています。

そのためには、まず不動産の売却先を選定したうえで、売却価格について大筋で合意しましょう。
そのうえで、根抵当権者と協議を行い、根抵当権の抹消に協力してもらうという流れが一般的です。

(2) 完済には元本を確定させる必要|元本確定の方法は?

ただし根抵当権は、将来債権を含めた不特定の債権を担保しているので、そもそも被担保債権(被担保債務)の金額が確定していません。

そのため、被担保債務を完済する前に、あらかじめ根抵当権の元本を確定させておくことが必要になります。
根抵当権の元本を確定させる方法は、以下のとおりです。

① 相続開始から6か月間待つ

前述のように、根抵当権者か債務者につき相続が開始してから6か月間が経過すると、自動的に根抵当権の元本は確定します(民法398条の8第1項、第2項、第4項)。

したがって、相続開始から6か月の経過を待って、その時点で発生している被担保債務を完済すれば、根抵当権の抹消が実現できます。

②根抵当権の設定から3年が経過した場合は、元本確定請求が可能

相続開始から6か月の経過を待たなくても、根抵当権の設定時から3年が経過した場合には、根抵当権設定者は根抵当権者に対して元本確定請求を行うことが認められます(民法398条の19第1項)。
この場合、元本確定請求の時から2週間が経過した時点で、根抵当権の元本が確定します。その時点で発生している被担保債務を完済すれば根抵当権を抹消することができます。

ただし、根抵当権設定契約において元本確定期日の定めがある場合には、上記の元本確定請求はできないので注意しましょう(同条3項)。

③根抵当権設定契約に基づき元本が確定する場合もある

根抵当権設定契約では、元本確定期日を定めることができます(民法398条の6第1項)。
元本確定期日の定めがある場合、根抵当権の元本はその日に確定します。
ただし元本確定期日は、設定日または変更日から5年以内の日に設定しなければなりません(同条3項)。

なお、元本確定期日の定めがある場合であっても、相続開始から6か月が経過した場合には、相続に関する特例が優先的に適用され、根抵当権の元本は確定します。

(3) 根抵当権の抹消登記

元本が確定し、債務を弁済したら、根抵当権者から必要書類を受け取り、根抵当権抹消の登記申請書を管轄法務局に提出して、登記簿上の根抵当権を抹消しましょう。

根抵当権の抹消登記に必要な書類は、次の通りとなります。

  • 根抵当権抹消の登記申請書
  • 根抵当権者の登記済証・登記識別情報
  • 根抵当権解除証書など
  • 根抵当権者の委任状
  • 根抵当権者の会社法人等番号の記載されている書類(委任状に記載されている場合あり)

根抵当権の抹消登記は、ご自分でもできる簡単な登記です。しかし、自分では不安で抹消登記できないといった場合には、司法書士など専門家に相談するといいでしょう。なお、専門家に登記をしてもらう場合は、根抵当権設定者の委任状なども必要になります。

4.根抵当権付き不動産を相続する場合の注意点

相続財産に根抵当権付き不動産が含まれている場合、その不動産をどのように取り扱うかについては、相続財産全体の状況を踏まえて判断する必要があります。

(1) オーバーローンの場合には相続放棄を検討すべき

被相続人自身の債務を担保するために根抵当権が設定されている場合、相続財産中に被担保債務が存在することになります。

この場合、被担保債務の額が不動産の価値を上回る「オーバーローン」の状態になっていないかをよく確認しましょう。
もし、オーバーローンの状態になっていると、不動産と債務をトータルした価値はマイナスになるため、相続によってマイナスの財産を相続することになってしまう可能性があります。

もちろん、他に価値の高い財産があれば、相続財産全体としてはプラスの価値になるケースもあります。
しかし、相続財産を調査したうえで、やはり全体としてマイナスになっているということが判明した場合には、相続放棄(民法939条)を検討しましょう。

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります(民法915条1項)。
その一方で、事前の財産調査などにある程度の時間を要するので、早めに弁護士にご相談をして、財産調査に時間を要するようであれば相続放棄期間3か月の伸長(民法915条1項)を検討していただくことをお勧めいたします。

(2) 継続融資を受けたい場合などには、元本確定を阻止する対応を

事業用にメインバンクから融資を受けている場合などには、継続的な融資の前提として根抵当権が設定されているケースがあります。
この場合、相続によって根抵当権の元本が確定してしまうと、その後の継続融資を拒否されてしまう可能性が高いでしょう。

また、既存の貸付契約において、根抵当権の元本の確定が期限の利益喪失事由として規定されているケースもあります。
このようなケースでは、相続によって根抵当権の元本が確定した場合、債務全体の一括返済を強いられてしまいます。

上記のように、相続を原因とする根抵当権の元本確定によって何らかのトラブルを生じる契約上の理由がある場合には、根抵当権設定者の側から根抵当権者に協議を持ちかけ、元本確定を阻止する対応をとることが必要です。

元本確定を阻止する必要があるかどうかは、相続の対象となる契約関係などを精査して確認する必要があるので、弁護士にチェックを依頼することをお勧めいたします。

5.まとめ

根抵当権付きの不動産を相続する場合、主に元本確定に関する法律・契約上の問題が生じないか、トラブルが生じそうであればどのように対処すべきかについて、法的な観点から慎重に検討することが大切です。

根抵当権付きの不動産が相続財産に含まれている場合には、ぜひ一度泉総合法律事務所までご相談ください。

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