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遺産分割

遺産分割審判に不満・不服がある場合の即時抗告のやり方

「遺産分割審判の結果が出たけれど、審判の内容に不服がある」という場合、「即時抗告」という不服の申立て手段が設けられています。

このコラムでは、「即時抗告」についてわかりやすく解説します。

1.遺産分割審判とは?

遺産分割について、相続人間での協議(遺産分割協議)がまとまらない場合、まず、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てる必要があります。
遺産分割調停は、裁判官と調停委員2名の計3名で構成される調停委員会が当事者の間に立って話合いを行い、合意を目指す手続です。

この遺産分割調停がまとまらず調停不成立となった場合、事件は自動的に遺産分割審判という手続きに移行して、「審判」という形式で裁判官の判断が下されることになります。

遺産分割審判では、調停段階で提出された資料やそれまでの調停期日での当事者の言動、そして審判手続きで新たに提出された資料や家庭裁判所調査官の調査結果などをもとに、どのように遺産を分割すべきか、という判断が裁判官によって下されます。

[参考記事] 遺産分割審判の進め方と気を付けるべきポイント

2.即時抗告とは?

審判(つまり裁判官が下した判断)に不服がある、というケースは当然あり得ます。
「即時抗告」は、下された審判に対して不服がある場合に、高等裁判所の裁判官に対し、家庭裁判所の審判に問題がないかの再審理を求める手続きです。

即時抗告を申し立てることができるのは、遺産分割審判を受けた当事者である相続人自身と、その法定代理人である親権者や成年後見人です。

任意代理人である弁護士や家庭裁判所の許可を受けて審判段階で代理人となっている特別代理人は、即時抗告についての代理権を与えられている場合に限り、代理人により即時抗告を申し立てることができます。

弁護士にご依頼の場合は、通常、調停段階の手続代理委任状に即時抗告についても委任する旨が記載されていますので、ご依頼の弁護士にご確認ください。

3.即時抗告の流れ

(1) 抗告状の準備と申立て

申立ての期限

即時抗告の申立ては、遺産分割審判の審判書を受け取ってから2週間以内に行う必要があります。
受け取った最初の日はカウントされませんので、受け取った日の翌日から数えて2週間後が申立期限の最終日となります。

即時抗告の申立ては、遺産分割審判がなされた家庭裁判所を管轄する高等裁判所を宛先とする「抗告状」を、家庭裁判所の事件受付係に提出して行います。

抗告状の書き方

抗告状の書式と記載例は裁判所のページで公開されています。

上記は養育費の審判に対する即時抗告の例ですが、遺産分割審判の場合もこの書式で大丈夫です。

すなわち、遺産分割審判に対する即時抗告の場合も、「抗告の趣旨」の欄には以下のように記載します。

1 原審判を取り消す。
2 <求める審判の具体的な内容を記載> との審判に代わる裁判を求める。

そして、「抗告の理由」の欄に、なぜ審判の内容に不服なのか、審判に示された判断のどこがおかしいのかを具体的に(できればこれまでに提出した資料を踏まえて)記載します。
書式の「抗告の理由」の欄に書き切れなければ、別紙として適宜の紙に記載して抗告状に綴じ込んで構いません。

また、即時抗告の申立てには上記のとおり厳しい期間制限がありますから、とりあえず抗告状には「抗告の趣旨」までを記載して(ここまでは必須です)、「抗告の理由」については以下のように記載して提出することが可能です。

本件の原審判は、令和○○年○月○日に抗告人に送達されたが、抗告人はこれに不服がある。
よって、抗告の趣旨どおりの裁判を求め、即時抗告の申立てをする。
抗告の理由の詳細は、おって書面にて提出する。

後から「申立理由書」といった標題で、抗告の理由を詳細に記した書面を提出しましょう。

ただし、抗告状に理由を書かなかった場合には、即時抗告の申立てから原則として2週間以内に理由書を提出する必要がありますので、ご注意ください。

これ以外には特に決まった必要書類はありません。
なお、もし抗告の理由を裏付ける新しい資料などがある場合、可能であれば抗告状と一緒に提出しても構いません。

また、抗告状にある程度詳しく抗告の理由を記載していても、さらに追加して抗告の理由を詳細に記載した理由書を提出することも可能です。

有効な理由書の書き方については、弁護士にアドバイスをもらうことをお勧めします。

(2) 高等裁判所での手続

抗告状が提出されると、家庭裁判所は管轄の高等裁判所に事件の記録を送ります。
高等裁判所では担当する裁判官が決まり、原審判の記録を読んで検討を始めます。

また、被抗告人にも抗告状と理由書が送られ、答弁書(反論の書面)を提出する機会が与えられます。

そして、高等裁判所が再審理が必要と判断した場合には、審理終結日(高等裁判所が即時抗告に対する決定を下すと決めた日の2週間前の日付)を当事者双方に通知します。
この期限を過ぎた後に提出された資料は、即時抗告の審理では考慮されません。

なお、被抗告人から提出された反論書面は抗告人にも送られますので、審理終結日までであれば、これに対する再反論の書面を提出することもできます。

ちなみに、即時抗告の審理はすべて書面による審理により行われるのが通常で、当事者が裁判所に出向く審問期日が開かれることはほぼありません。

ただ、高等裁判所の裁判官が和解による解決が妥当と判断した場合には、裁判所から双方当事者に対して呼出があり、和解の勧めがなされる場合があります。

(3) 即時抗告に対する決定

即時抗告の申立てから概ね2ヶ月半から3ヶ月半くらいで、即時抗告に対する高等裁判所の決定が下されます。

決定は、遺産分割審判と同様に、言渡期日に裁判所の法廷で言い渡される形式ではなく、前触れなく突然、決定書が郵送で裁判所から届きます。

なお、即時抗告の決定内容に対してさらに不服がある場合には、一応、「許可抗告」や「特別抗告」という更なる不服申立方法があります。

しかし、これらは憲法や判例、法令の違反などの極めて限られた場合しか受け付けてもらえないため、即時抗告で不服申立は事実上終わりと考えた方が良いでしょう。

4.即時抗告にかかる費用

即時抗告の申立ての際には、申立手数料として抗告状に貼る1,800円分の収入印紙と、裁判所から当事者に対する書面の郵送にかかる費用の予納(数千円を郵便切手で納めます。金額と切手の組み合わせは裁判所によって異なります)が必要です。

その他、弁護士にご依頼の場合には、(調停や審判段階から引き続き同じ弁護士に依頼する場合でも、別途)抗告段階として弁護士費用がかかるのが通常です。

弁護士費用については、現在は統一された基準が廃止され、個別の事件ごとに、弁護士と依頼者が協議して決めることになっていますので、ご依頼になる弁護士にご確認ください。

5.まとめ|審判の即時抗告は弁護士へ

他の民事事件と同様、即時抗告の手続きも基本的には弁護士に依頼しなくても自分でできる手続です。
しかし、これまでご説明したように、即時抗告には他の訴訟手続と比べてやや厳しい書面提出期限が定められています。また、書面審理であり、裁判官に口頭で自分の主張を述べて理解を求めるといったことはできません。

さらに、高等裁判所は事実関係に関する審理は調停や審判の段階で十分になされていると考えることが多いです。

このような即時抗告の審理にあたり、審判の事実認定がおかしいことを裏付け資料に基づいて主張し、さらに必要な法律論を展開して、家庭裁判所の判断を覆す結果を勝ち取ることは、かなり大変な場合が多いです。

比較的難しい手続きである即時抗告は、家事事件の経験が豊富な弁護士にご依頼することをお勧めします。

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