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相続財産の中に所有者不明土地がある場合に気を付けるポイント

「亡くなった被相続人が所有していたはずの不動産を調べてみると、登記簿上は違う人が所有者になっていた……」

このような土地を「所有者不明土地」といいます。
所有者不明土地は、権利関係が錯綜している可能性が高いため、売却や賃貸によって活用することが非常に困難です。

もし相続財産の中に所有者不明土地があることが判明した場合には、弁護士にご相談いただきながら、慎重に対応することをお勧めいたします。

今回は、所有者不明土地の相続について、法律上注意すべきポイントを中心に解説します。

1.所有者不明土地とは?

「所有者不明土地」とは、不動産登記簿などによって所有者が直ちに判明しない、または判明しても所有者に連絡がつかない土地をいいます。

たとえば、以下のような土地が所有者不明土地に該当します。

  • 売買などの際に所有権移転登記手続きが適切に行われず、登記簿と実際の所有者にずれが生じている土地
  • 登記簿上の所有者は存命中であると思われるものの、転居先が追えないなどの理由により、所在不明である土地
  • 相続登記が数代にわたって行われないまま放置され、かつ相続人が多数となっており、相続人の所在を探索することが困難な土地
  • 不動産登記簿の所有者欄に、「○○他10名」などの形で、すべての共有者が記載されてない土地

所有者不明土地が相続登記の未了によって発生した場合、きわめて深刻な問題が発生するおそれがあります。

所有者不明となるような土地については、相続関係者が厄介もの扱いして、遺産分割未了のまま放置されているケースがほとんどです。
この場合、厳密に権利処理をするのであれば、存命の相続関係者を全員探し出して、遺産分割を行わなければなりません。

しかし、何代にもわたって相続登記が未了の状態だと、相続人の数が指数関数的に増えていきます。
そのため、相続人全員を探し出すことは、事実上不可能になってしまうケースも多いのです。

国土交通省の資料の中では、以下のような所有者不明土地の事例について、土地活用に多大な労力と時間を要していることが紹介されています。
参考:所有者不明土地を取り巻く状況と課題について|国土交通省

【相続登記の義務化により、所有者不明土地の解消が期待される】
2021年4月21日に改正不動産登記法が成立し、同月28日に公布されました。改正不動産登記法によると、相続の発生および土地所有権の取得を知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務が新たに課されることになっています(同法76条の2第1項)。もし相続登記を申請する義務に違反した場合、「10万円以下の過料」の制裁に処される可能性があります(同法164条1項)。
現行の不動産登記法では、相続登記を行うことが義務ではないため、相続登記未了による所有者不明土地が発生しやすい状況にありました。相続登記の義務化を含む改正不動産登記法が施行されれば、現状よりも所有者不明土地の問題が解消に向かい、土地の利活用が促進されることが期待されています。
なお、改正不動産登記法は、遅くとも2024年4月28日までに施行予定です。

2.所有者不明土地を遺産分割する際の注意点

当初は被相続人の所有と思われたものの、登記簿を調べてみたら所有者が異なっていた場合(所有者不明土地)、遺産分割協議において慎重な対応が求められます。

(1) 被相続人が有していた権利の内容を把握する

相続登記の未了によって発生した所有者不明土地については、被相続人は完全な所有権を有していなかった可能性があります。
そのため、まずは被相続人が所有者不明土地について、どのような権利を有しているのかを確認・把握することが先決です。

具体的には、まず被相続人から戸籍を遡り、祖先の中に登記簿上の所有者がいるかどうかを確認します。
祖先に登記簿上の所有者がいた場合、今度はその人から戸籍を下っていき、所有者不明土地について権利を有する存命中の者を全員把握しなければなりません。

戸籍を辿っていく作業は手間がかかるうえ、慎重に進めなければ漏れが生じるおそれもありますので、弁護士にご相談ください。

(2) 可能であれば他の権利者との調整を図る

所有者不明土地が共有関係となっている場合、仮に被相続人が幾分かの共有持分を有していたとしても、その土地を単独で収益・処分することはできません。

そのため、前述の権利者確定の作業を行ったうえで、可能であれば各権利者との間で、所有者不明土地の収益・処分等についての調整を行っておくことが望ましいです。

しかし、権利者が数人・十数人程度であればまだしも、数十人・数百人といった規模になってくると、権利者間の調整を行うことは困難でしょう。
その場合は、遺産分割の方針そのものを検討し直す必要がありますので、お早めに弁護士へご相談ください。

3.所有者不明土地の管理が難しい場合

所有者不明土地は収益・処分が難しいことに加えて、権利者は管理の問題にも頭を悩ませることになります。

たとえば雑草が伸び放題になる、害虫が繁殖する、地盤が緩んで土砂崩れを引き起こすなど、周辺の土地や隣家に迷惑をかけることになれば、損害賠償責任を負担する事態にもなりかねないからです。

どうしても所有者不明土地の管理が難しい、責任を負いたくないという場合には、どのように対処すればよいのでしょうか?

(1) 相続放棄する

相続放棄(民法939条)をすれば、所有者不明土地を相続することを回避できます。

相続放棄とは、相続人の資産・債務を一切相続しないという意思表示のことです。
相続放棄をした者は、初めから相続人にならなかったものとみなされます。

ただし、他にめぼしい相続資産がある場合でも、相続放棄をすると一切相続できなくなってしまう点に注意が必要です。

また、相続放棄をする人が、事実上所有者不明土地の管理者となっている場合には、他の相続人(他の相続人がいない場合には、相続財産管理人)に引き渡すまで、自己の財産と同一の注意をもって引き続き管理を続けなければならないことにも留意しましょう(民法940条1項)。

なお、相続放棄は原則として、相続の開始を知った時から3か月以内に行う必要があります(民法915条1項)。

そのため、所有者不明土地との関係で相続放棄を検討する場合には、お早めに弁護士へご相談いただくことをお勧めいたします。

相続放棄 [参考記事] 相続放棄とは|メリット・デメリットから注意点、手続き方法を解説

【所有者不明土地だけを放棄することは不可】
所有者不明土地を管理するのが嫌だからといって、他の財産を相続しつつ、所有者不明土地だけを放棄することは認められません。
民法上、不動産の所有権を放棄できるかどうかは明確でなく、学説でも議論が分かれています。
しかし、所有権放棄の登記が実務上認められていないため、事実上不動産の所有権を放棄することはできないという整理になっているのです。

(2) 他の相続人に相続してもらう

遺産分割協議でうまく立ち回ることができれば、所有者不明土地を他の相続人に相続してもらえるかもしれません。
たとえば、「この遺産だけもらえれば、残りの遺産は要りません」といった形で交渉して、所有者不明土地をご自身の取り分から外すように誘導することが考えられます。

しかし、所有者不明土地に関する問題は、遺産分割協議において大々的に議論となる可能性が高いです。

その場合には、正面から所有者不明土地問題の解決に向き合うしかなく、逃げの一手で通し続けることは難しいでしょう。

(3) 第三者に売却する

所有者不明土地の管理責任を逃れるためには、第三者に売却するという方法も、理論的にはあり得ます。

しかし実際には、所有者不明土地に関するトラブルのリスクが非常に大きいことは、一般によく知られていますので、ほぼ買い手は付かないと考えるべきでしょう。

(4) 所有者不明土地を賃貸に出すことは難しい

所有者不明土地をいっそ第三者に賃貸してしまい、賃借人に管理してもらおうという考えが浮かぶかもしれません。
しかし、所有者不明土地を賃貸に出すことは、現実的にはかなり困難と言わざるを得ません。

土地の賃貸借契約を締結する際には、土地の登記簿謄本を確認するのが常識です。
その際、所有者不明土地であることは否応なく判明しますので、その土地を賃借したいと名乗り出る人はほぼいないと考えられます。

また所有者不明土地について、被相続人以外にも権利者がいたと考えられる場合には、他の権利者との間で賃貸に関する法的な意思決定が必要となります。具体的には、管理行為として、過半数の共有持分を有する共有者の同意が必要となるか(民法252条)、変更行為として、共有者全員の同意が必要となります(同251条)。

所有者不明土地を勝手に賃貸に出した場合には、後から他の権利者との間でトラブルになるリスクがあることも認識しておくべきでしょう。

4.対処ができない場合も管理責任に要注意

相続放棄はしたくない、他の相続人に押し付けることもできない、売却や賃貸も難しい、土地所有権の放棄も不可となると、所有者不明土地をどのように遺産分割してよいかわからず、途方に暮れてしまうのではないでしょうか。

実際にこうした事情から、所有者不明土地については、長年にわたって遺産分割が行われずに放置されてしまうという負のスパイラルに陥りがちです。

現実問題として致し方ない部分もありますが、所有者不明土地の管理責任についての問題は残ることに注意しなければなりません。

もし雑草・害虫・土砂崩れなどによって、周辺住民などに被害が生じた場合には、権利者が損害賠償請求を受ける可能性があります。

そのため、相続人の中で担当者を決めるなどして、定期的に所有者不明土地の手入れ・メンテナンスをするなどの対応をとることが望ましいでしょう。

[参考記事] 相続放棄後の管理責任(民法940条関連)

5.まとめ

所有者不明土地が関係する遺産分割は、相続手続きの中でも、対応がもっとも難しい分野の一つです。
検討の前提として必要な調査の量も膨大ですし、対処法も個々のケースによって異なるため、必ず弁護士にご相談いただいたうえで、慎重に対応することをお勧めいたします。

所有者不明土地の相続の当事者となった方は、お早めに弁護士までご相談ください。

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