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死後離婚で相続や戸籍はどう変わる?死後離婚の影響・手続き

義父母や義理の兄弟姉妹との付き合いが上手くいっていない場合に、配偶者が死亡すると、1人でその関係を維持しなけなければなりません。

それを断ち切りたい時に行うのが、「死後離婚」です。

しかし、「死後離婚」を行って姻族関係を断ってしまった場合には、相続にどう影響するのか気になるところです。
今回は、死後離婚を行った場合の相続について解説します。

1.死後離婚とは

離婚は、配偶者が生存している間にのみできる制度です。残念ながら、連れ添った配偶者が亡くなってしまった後に離婚することはできません。

通称「死後離婚」は、配偶者が死亡した後に、義理の父母といった姻族との関係を終了させるための手続きです。

(1) 配偶者が死亡しても姻族関係は終了しない

配偶者が死亡しても、死亡した配偶者の義理の父母などとの姻族関係は自動的に終了しません。
しかし、次のように、配偶者の死後まで姻族との関係を続けたくないということもあるでしょう。

このような場合には、「姻族関係終了届」を市区町村に提出することで、姻族関係を終了させることができます。

  • 義両親の反対を押し切って配偶者と結婚しており、一切連絡を取っていない。
  • 義父母や義兄弟姉妹と遺産を巡る争いがあった。
  • お墓を巡るトラブルがあった。
  • 法要に関わりたくない
  • 配偶者と不仲であったため、完全に関係を断ち切りたい。
  • 義父母の介護をしたくない。

(2) 死後離婚は急増中

下記の表は姻族関係終了届の件数です。死後離婚を選択する人は、この10年間で1.5~2倍に増加していることが分かります。
妻が死亡した後まで嫁ぎ先に縛られたくないと、「あの世離婚」という言葉もあるほどです。

核家族化が進行して義父母との同居が減っており、昔に比べてお互いに情が湧きにくくなったことも理由の1つではないでしょうか。
また女性の社会進出によって、付きっ切りで親の介護を行うことが当然ではなくなった面もあるでしょう。

届出件数
2011年 1,975
2012年 2,213
2013年 2,167
2014年 2,202
2015年 2,783
2016年 4,032
2017年 4,895
2018年 4,124
2019年 3,551
2020年 3,022

【出典サイト】【戸籍統計 統計表】|法務省

(3) 義父母の介護をしたくない場合に効果的

死後離婚は、特に義父母の介護をしたくない場合に有効です。

民法第877条には、次のように定められています。

民法第877条
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる

第877条の2項では、特別の事情がある場合には、家庭裁判所が、配偶者を含む三親等内の親族に扶養義務を負わせることができるとされています。

義父母の介護は直系血族と兄弟姉妹が行うのが原則ですが、介護ができる状態にない場合には、姻族に対して家庭裁判所から扶養命令が出る可能性があるということになります。

絶対に義父母の介護をしたくないという場合には、死後離婚を行うことで、このような万が一の法的な不安からも解放されることができます(同法第730条には、同居している親族はお互いに扶助しなければならないとされていますが、単なる倫理規定と解されています)。

2.死後離婚の方法

それでは次に、死後離婚の具体的な手続き方法について解説します。

(1) 「姻族関係終了届」を提出する

届出人の本籍地または居住地の市区町村役場に「姻族関係終了届」を提出すれば、即日に姻族関係が終了します。

提出できるのは死亡した配偶者と結婚していた生存配偶者のみであり、それ以外の人が提出することはできません。

提出期限はなく、配偶者の死亡届を提出した後であれば何年経過していても提出可能です。

様式については各市区町村役場によって多少異なりますが、基本的には同じです。役場で直接入手するか、ホームページからダウンロードできるところもあります。

なお、提出して受理された後で取り消すことはできません。「一刻も早く死後離婚したい!」などの事情がなければ、落ち着いてゆっくり検討することをおすすめします。

(2) 姻族関係終了届に必要な書類

姻族関係終了届には、次の書類などを添付して提出します。

  • 戸籍謄本(配偶者の死亡の事実が記載されているもの)
  • 本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど)

なお、役場で提出する際に訂正が生じることがあります。訂正印が必要になるため、届出書に押印した印鑑も念のために持参しておくと安心です。

(3) 死後離婚の手続きは単独で行える

姻族関係終了届に姻族の同意は必要なく、届出人が自身で決めて自身で提出することができます。

義父母などの姻族に対して、届け出があった旨の通知がいくようなこともありません。

ただし、死後離婚後に姻族が戸籍を取得することがあれば、「姻族関係終了」という記載があることから知られてしまう可能性はあります。

(4) 相続放棄には別途手続きが必要

死後離婚は姻族関係を終了させる手続きであり、配偶者との婚姻関係を終了させるものではありません。

したがって、配偶者の相続には影響しないため、配偶者の相続について相続放棄をしたい場合には、死後離婚とは別に相続放棄の手続きが必要になります。

死後離婚したからといって、相続放棄もしたことにはなりません。相続放棄には期限があるため十分に注意しましょう。

3.死後離婚の相続への影響

では、死後離婚は相続へどのように影響するのでしょうか。

(1) 亡くなった配偶者の相続は可能

前述しましたが、死後離婚をしても配偶者との関係は続いています。配偶者の遺産は相続することができます。

遺産相続が完了した後に死後離婚をした場合であっても、当然ながら遺産を返還する必要はありません

(2) 死後離婚をしても遺族年金はもらえる

死後離婚をしても配偶者の遺産を相続できるのと同様の考え方になります。

死後離婚は遺族年金の受給要件に影響しないため、受給し続けることができます。もちろん死後離婚後に受け取った遺族年金について返還の必要もありません

(3) 死後離婚しても戸籍に変動はない

戸籍は夫婦と未婚の子を1つの単位として作成されるものです。よって、死後離婚をした場合には、戸籍に「姻族関係終了」と記載されるのみで、他に変動はありません。

もちろん、名字が自動的に変わることもないため、旧姓に戻したければ姻族関係終了届とは別に「復氏届も提出します。

復氏届が提出されると今の配偶者との戸籍を抜け、結婚前の戸籍か新たな戸籍に移ることになります。

(4) 自分が入るお墓は死後離婚と関係ない

元々ご自分が入る墓については本人が自由に決められるものであり、死後離婚をしたかどうかは関係ありません。

死後離婚をしていなくても、死亡した配偶者と同じ墓に入る義務はありません。慣習として嫁ぎ先の墓に入る人が多いだけです。

(5) 子どもには祖父母の相続権が残る

死後離婚をしても子供と死亡した配偶者との関係は続くため、義父母(子供からすると祖父母)からの相続権も維持されます。

子供は死亡した配偶者の遺産はもちろんのこと、義父母の遺産も相続することができます。

ただし、子供と死亡した配偶者側の祖父母との関係はギクシャクしてしまう可能性はあります。

4.まとめ

配偶者の生前から離婚を検討していた場合や、義父母と不仲であった場合など、配偶者の死後まで姻族に縛られたくないという思いを持つ方がいらっしゃるのは当然かもしれません。

死後離婚は、相続や遺族年金に影響することもなく、経済的なデメリットはほとんどありません。

死後離婚は姻族には相談しにくいため、届出人の単独の意思によって行えることもメリットではありますが、そのために姻族とのトラブルに繋がる可能性もあります。

トラブルになった場合には、弁護士が間に入るだけで、落ち着いた話し合いが行えるケースが多数あります。1人で悩まずに、まずは弁護士事務所へご相談ください。

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