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相続した空き家は放置してはダメ!空き家問題の解決法

過半数を超える空き家は、相続によって取得されています(※)。
実家は相続したものの、自分はマイホームを持っているし使い道がないと放置されてしまう傾向があります。

しかし、空き家の放置は、デメリットばかりで良いことはありません。

今回は、相続した空き家を放置するデメリットや、空き家の活用方法などについて解説します。

【※出典】「令和元年空き家所有者実態調査報告書」Ⅱ空き家の取得経緯などについて|国土交通省住宅局

1.相続した空き家を放置するデメリット

使わない家をただ置いているだけなのに、デメリットが発生し続けてしまうのが空き家です。具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか。

(1) 固定資産税が発生し続ける

土地や建物を所有している人には固定資産税がかかります。毎年11日時点での不動産所有者に対して課される税金であり、空き家であっても当然発生することになります。

さらに2015年(平成27年)に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたことにより、倒壊の危険がある空き家や、ゴミだらけで衛生上有害な空き家などは、「特定空き家」として指定されることになりました。

特定空き家には固定資産税が軽減される住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税が6倍に跳ね上がることになります。

(2) 劣化が進み不動産価値が下がる

人が住まなくなり、適切な管理や修繕が行われない家は急激に劣化が進みます。

放置される期間と劣化は比例するため、放置期間が長くなるほど不動産価値が下がってしまいます。

(3) 近隣物件への資産価値の影響

老朽化が進んだ空き家は周辺の景観を害します。また、放置された庭木が隣の敷地まで侵食している、蜂や害虫が住み着くなどすると、その地域に住みたいと思う人が当然減るでしょう。
近隣物件の資産価値にまで影響してしまうのです。

(4) 倒壊・不審火・犯罪の拠点などになるなどのリスク

近年ではテレビでも多く取り上げられている問題です。

倒壊しそうなほどの老朽化、放火などの不審火の心配がある、不審者が出入りしているなど、空き家が人の生命を脅かすほどの大きなトラブルの発生要因となる可能性があります。

(5) 自治体から特定空き家等に認定される可能性

特定空き家に指定され、さらに改善命令にも従わなかった場合には50万円以下の過料が科されます。

また強制執行が行われた場合には、その費用は所有者の負担になるため、空き家は放置しておけば良いという問題ではありません。

2.空き家を相続放棄しても残るリスク

空き家によるリスクを背負いたくない場合には、相続放棄をすれば良いと思われるでしょう。

しかし、相続放棄をしても空き家の管理責任は残るため注意しなければなりません。

(1) 相続放棄をしても残る管理責任

民法9401項には、「相続放棄をしても、次順位の相続人が管理を始めるまでは管理責任を負う」との定めがあります(ただし、この場合の管理責任は「自己の財産におけるのと同一の注意義務」であり、「善管注意義務」より軽いとされています)。

例えば、唯一の相続人である1人息子が相続放棄をしたために、次順位である被相続人の弟が相続人となった場合には、その弟が空き家を管理できる状態になるまで長男が管理責任を負うことになります。

また、相続人全員が相続放棄をすると、最終的に被相続人の財産が国庫に帰属するまで相続財産管理人が管理をします。相続財産管理人が就任するまで空き家の管理責任はなくなりません。

この間に、古くなった空き家の塀が崩れて歩行者が怪我をしたなど空き家を巡ってトラブルとなり、管理者である相続放棄者に重過失が認められれば、責任を問われる可能性が高くなります。

(2) 空き家のためだけに相続放棄するリスク

また、相続放棄をしてしまうと一切の遺産を相続できなくなります。

空き家はデメリットが多く大変な財産ではありますが、借金ではありません。空き家の為だけに相続放棄するというのは現実的ではないかもしれません。

3.相続した空き家の活用法

そこで、相続した空き家を放置せずに利益に代える活用方法を紹介します。

(1) 空き家を売却する

空き家になって間もないなど、まだ市場価値があるのであれば、売却してしまうのが最も手間のかからない方法です。手放すと同時に対価も得ることができるため、メリットが大きい方法です。

そのままの状態で売却できるのがベストではありますが、リフォームなども検討しなければならない可能性があります。古民家リフォームが流行っているので、消費者のニーズに合えば思った以上に早く売却できるかもしれません。

まずは不動産売買の仲介会社に相談してみましょう。

(2) 空き家を貸家など事業用に改築する

空き家を貸家や貸事務所、貸倉庫などにリフォームして、不動産賃貸業を行う方法もあります。立地に優れた入居率の高い場所であれば、売却するよりも長い目で見ると利益が出るかもしれません。

また、思い出の詰まった実家を手放したくないという場合にも有効な方法です。

ただし、安易な決行は禁物です。賃貸収入だけではなく、かかる経費もしっかりと把握しておかなければなりません。
長期的な収支計画をしっかりと立ててから行いましょう。

(3) 空き家を解体・更地にして駐車場などにする

建物に需要がないのであれば解体して更地にし、月極駐車場として活用することもできます。

月極駐車場であれば特別な設備も必要ないため、貸家にするよりも格段に経費がかかりません。
幹線道路沿いの土地であれば、コインパーキングにしても利益が望めるでしょう。

なお、家を解体してしまうと固定資産税の住宅用地の特例の対象外になるため、特定空き家にならなくても固定資産税が6倍になる点に注意しなければなりません。しかし、家に対する固定資産税は無くなるため、一概に高くなるとはいえません。

(4) 空き家に相続人自身が住む

ご自分が住めないから空き家になっているということは理解したうえでの提案です。

新型コロナウイルスの影響によって、この数年で日本のリモートワークは一気に広がりました。さらにインターネットの普及によって働き方は多様化し、フリーランスや個人事業主も増加しています。

空き家が郊外にある場合には、仕事用や気軽な別荘として二拠点生活をしてみる方法もあります。

4.空き家の相続には譲渡所得の特例を検討

空き家の発生を抑制するため、平成28年度(2016年度)の税制改正において、「相続等により取得した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」(以降、「空き家の譲渡所得特例」とします)が創設されました。

相続した空き家を売却した場合には、譲渡利益から3,000万円を控除することができ、多くの場合で所得税がかかりません。相続によって空き家を取得した場合には、是非活用したい制度です。

(1) 空き家の譲渡所得特例の適用要件

空き家の譲渡所得特例の基本的な適用要件は次の通りです。

売却期間について

  • 相続開始日から3年を経過する日の属する年の1231日まで、かつ、2023年(令和5年)1231日までに売却すること

家屋について

  • 相続開始直前において被相続人が1人で居住していたこと
  • 1981年(昭和56年)531日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物登記がされている建物(マンションなど)でないこと
  • 相続してから売却時まで、事業、貸付、居住の用に供されていないこと
  • 相続により土地と家屋の両方を取得すること

売却について

  • 売却金額が1億円以下であること
  • 耐震リフォームなどによって、売却時において耐震基準に適合することが証明された家屋の売却であること

(2) 計算方法

まず譲渡所得は、次の通り空き家の売却収入から、かかった経費を差し引いて計算します。

譲渡価格-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得

譲渡所得に乗じる税率は不動産の所有期間によって変わります。(便宜上、復興特別所得税は除いて解説します。)

  • 長期譲渡所得(5年超):15
  • 短期譲渡所得(5年以下):30

空き家の譲渡所得特例では、この譲渡所得からさらに3,000万円控除することができます。

例えば、以下の事例では、譲渡所得は1,000万円になります。

  • 空き家の売却収入:1億円
  • 空き家を取得した時の金額:5,000万円
  • 譲渡するためにかかった費用:1,000万円

1億円-(5,000万円+1,000万円)-3,000万円=1,000万円

さらに、空き家の譲渡所得特例とは別に、売却した年の11日時点において、空き家の所有期間が10年超の場合には、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」(以下10年超所有軽減税率の特例とします)により、税率も軽減されます。

  • 6,000万円までの部分:10
  • 6,000万円超の部分:15

よって、所有期間が10年を超えていたとした場合の所得税額は、次の通り100万円ということになります。

1,000万円×10%=100万円

空き家の譲渡所得特例と10年超所有軽減税率の特例両方の特例の適用がない場合には次の通り600万円もの所得税が発生するため、大きく節税できることが分かります。

なお、10年超所有軽減税率の適用要件など詳しくは、次のサイトをご確認ください。
[参考サイト] No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

(3) 小規模宅地等の特例との適用関係

小規模宅地等の特例は相続税を計算する際に、空き家の財産評価を減額できる特例です。

一方で、譲渡所得を減額できる空き家の譲渡所得特例は、相続後に空き家を譲渡した際の所得税に関する特例です。

両特例の併用は禁じられていないため、適用要件に合いさえすれば両方適用することができます。

ただし、空き家の譲渡所得特例は、小規模宅地等の特例では、「家なき子特例に該当するケースにのみ併用できることになります。

[参考記事] 小規模宅地等の特例|土地の相続税評価額が最大8割引

(4) その他の特例との適用関係

空き家の譲渡所得特例は、小規模宅地等の特例以外にも、次の特例と併用することができます。

  1. 自己居住用財産の3,000万円特別控除(ただし併用した場合でも控除限度額は3,000万円まで)
  2. 特定居住用財産の買換え特例(1. との併用は不可)
  3. 住宅ローン控除

なお、相続財産を相続後に売却した場合に適用できる「取得費加算の特例」との併用はできません。空き家譲渡特例とどちらかのみ選択となります。

5.相続した空き家の問題を先送りしないために

相続人は相続開始からしばらくは、あらゆる相続手続きに奔走しなければなりません。どうしても期日がない手続きについては後回しにしがちで、空き家もその中に入ります。

(1) 相続登記を行う

相続登記は義務ではなく、相続人が行わなければそのままにできます(ただし、義務化が予定されています)。
しかし、相続登記を行っていなければ、売却ができない、他の相続人が勝手に自身の持分のみ売却してしまうなどのデメリットが生じます。

相続登記していない状態で相続人の誰かが死亡し、さらなる相続が重なると、空き家の所有者が複雑化してしまい、不要な相続問題が発生してしまう可能性もあります。

また、相続登記さえしなければ固定資産税がかからないと勘違いしている人がいますが、相続登記の有無にかかわらず、相続人には固定資産税の請求がきます

相続登記を行わないメリットはないので、早めに済ませてしまい、売却や賃貸などの活用方法を検討しましょう。

(2) 共有名義は避ける

相続人が複数いる場合、公平に分割することが難しい不動産は、共有名義で相続登記されることがあります。

しかし、共有名義の不動産は、売却などする際に、名義人全員の承認が必要になります。共有名義人の相続が発生し、その相続人達がまた共有名義で相続した場合には、空き家に対して十数人、数十人の名義人が並ぶことになり、どうにも動かせなくなる可能性が高くなります。

長期間にわたる放置の原因となるため、空き家の共有名義は避けた方が賢明です。

6.まとめ

空き家は放置される期間が長引くほど、様々な問題を誘発します。国も空き家問題については深刻に受け止めており、空き家譲渡特例など様々な対策を講じています。

空き家の放置は所有者にとっても社会にとってもリスクが大きいといえますので、問題が深刻化する前に売却・賃貸などの有効活用を検討し、早めの対策を行うことをおすすめいたします。

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