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相続法改正のポイントをわかりやすく解説|何がいつから変わる?

2019年1月13日以降、相続・遺言のルールを抜本的に見直す改正相続法が段階的に施行されました。

今後発生する相続については、基本的に改正相続法のルールが適用されるので、相続への対応を控えている方は、改正相続法の内容を正しく把握しましょう。

この記事では、2019年施行・改正相続法によるルール変更の内容について幅広く解説します。

1.改正ポイント①|配偶者居住権・配偶者短期居住権の新設

社会の高齢化が急速に進展したことに伴い、相続発生の段階で被相続人の配偶者が相当高齢となっているケースが増えました。

そのため、残された配偶者の生活に配慮し、住居を確保する観点から、「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」の各制度が新設されました。

(1) 配偶者居住権とは?

配偶者居住権は、相続開始時点で被相続人の配偶者が居住していた建物について、配偶者が原則として終身にわたって使用収益できる(住み続けられる)権利をいいます(民法1028条1項)。

配偶者居住権は、以下のいずれかの方法によって設定できます。

①遺産分割協議(同項1号)
②遺言(遺贈)(同項2号)
③家庭裁判所の審判(民法1029条)

配偶者居住権は、登記により第三者に対抗できる強力な権利であり(民法1031条1項、2項)、配偶者の住居を確保するため、遺産分割において大いに活用されることが期待されます。

[参考記事] 配偶者居住権とは?メリット・デメリットと使い方を解説

(2) 配偶者短期居住権とは?

配偶者短期居住権は、相続開始時点で配偶者が無償で居住していた被相続人所有の建物を、配偶者以外の者が相続または遺贈によって取得した場合に、自動的に認められる権利です(民法1037条1項)。

配偶者居住権とは異なり、配偶者短期居住権は期間限定の暫定的な権利ですが、相続開始後も一定期間、配偶者に住居を保障することにより、セーフティネットとしての機能が期待されています。

[参考記事] 配偶者短期居住権とは?配偶者居住権との違いや期間を解説

2.改正ポイント②|遺産分割に関するルールの改正

今回の相続法改正では、遺産分割についてこれまで問題になりやすかった点を改善するため、以下のルール変更が行われました。

(1) 特別受益の「持ち戻し免除の推定」

一部の法定相続人に対して、被相続人から遺贈や一定の贈与があった場合には、特別受益の「持ち戻し」計算を行い、相続人間の公平を図ることになっています(民法903条1項)。

この特別受益の「持ち戻し」は、被相続人の意思によって免除することができます(同条3項)。

今回の相続法改正では、20年以上婚姻関係にある配偶者に対する居住用建物・敷地の遺贈・贈与について、「持ち戻し免除」の意思表示が推定される旨の規定が新設されました(同条4項)。

「持ち戻し免除」の推定規定により、被相続人の明示的な意思表示がなくても、配偶者が取得した居住用建物・敷地について特別受益の「持ち戻し」が免除され、配偶者が居住用建物、敷地を確保できるだけではなく、配偶者が十分な遺産を取得できるようになります。

特別受益の「持ち戻し免除の推定」については、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

[参考記事] 相続法改正|配偶者間での遺贈・贈与に関する持ち戻し免除の推定

(2) 預貯金の仮払い制度(遺産分割前の払戻し制度)

被相続人が亡くなった直後は、残された家族の生活費や葬儀費用などで、何かと資金が入り用になります。

そこで、相続発生直後の当面の資金需要をカバーするため、「預貯金の仮払い制度(遺産分割前の払戻し制度)」が新設されて、相続人が被相続人の預貯金の一部を活用できるようになりました(民法909条の2)。

各相続人は、金融機関ごとに以下のいずれか低い金額を上限として、被相続人が保有していた預貯金の払い戻しを請求できます。

①債権額×3分の1×当該相続人の法定相続分
②150万円

預貯金の仮払い制度(遺産分割前の払戻し制度)については、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

[参考記事] 相続法改正|遺産分割前の預貯金の仮払い制度とは?

(3) 遺産の使い込みに関する対策

一部の相続人による遺産の「使い込み」は、長年にわたり、非常に多くの相続事案で問題となっています。

遺産分割前の相続財産は、全相続人の共有であるため(民法898条)、処分するには全相続人の同意が必要です(民法251条)。

しかし、一部の相続人が他の相続人の同意を得ることなく勝手に相続財産を処分し、結果として他の相続人が得られる遺産が減ってしまう事態が頻発していました。

そこで今回の相続法改正では、使い込みをした相続人以外の全相続人の同意があれば、使い込まれた遺産が存在するものとみなして、遺産分割を行うことができる旨が新たに定められました(民法906条の2)。

この改正により、使い込みに関する精算を遺産分割協議の中で完結できるようになり、手続きの簡略化および円滑な相続手続きの完了が期待できます。

遺産の「使い込み」対策に関する改正内容は、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

[参考記事] 相続法改正|遺産分割前の財産処分の扱いはどうなる?

3.改正ポイント③|遺言制度に関するルールの改正

自筆証書遺言については、これまで使い勝手の悪さが指摘されていたところ、今回の相続法改正によって方式の緩和および「自筆証書遺言書保管制度」の新設が行われ、以前よりも活用可能性が広がりました。

また、遺言執行者に関するルールに不明確な点が多いことが指摘されていたところ、今回の相続法改正により、権限内容等が民法上具体化されました。

(1) 自筆証書遺言の方式を緩和

従来の自筆証書遺言は、全文を自書する必要があるとされていました。

全文の自書は、遺言者にとってかなり負担が重い場合があるうえ、方式不備により自筆証書遺言が無効とされてしまう可能性が高くなることから、方式要件の緩和が望まれていました。

そこで、今回の相続法改正では、自書によらない財産目録を、自筆証書遺言に添付することが認められました(民法968条2項)。

この改正により、財産目録をPCで作成できるようになったり、通帳のコピーを添付したりできるため、自筆証書遺言作成の手間が簡略化されます。

遺言書の書き方 [参考記事] 正しい遺言書の書き方|作成のポイントと自筆証書遺言の要件

(2) 法務局における自筆証書遺言書保管制度の新設

自筆証書遺言は、遺言者自身またはその親族などが保管するため、紛失や改ざん等のリスクが常に存在していました。

また、形式不備によって無効とされる例が多い点も、自筆証書遺言の大きなデメリットでした。

こうした自筆証書遺言の問題点を改善するため、法務局の遺言書保管所が、形式要件を満たしているかどうかチェックしたうえで自筆証書遺言書を保管する「自筆証書遺言書保管制度」が新設されました(法務局における遺言書保管等に関する法律)。

「自筆証書遺言書保管制度」を利用することにより、自筆証書遺言の紛失・改ざん等のリスクや、形式不備による無効リスクを最小限に抑えることができます。

自筆証書遺言書保管制度については、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

[参考記事] 法務局での自筆証書遺言書保管制度とは|メリット・デメリット

(3) 遺言執行者の権限を明確化

遺言執行者は、被相続人が残した遺言の内容を実現するために行動する責務を負っています。

しかし、従来の民法では、遺言執行者の権限内容は必ずしも明確でなく、解釈に委ねられる部分が多いのが実情でした。

そこで、今回の相続法改正では、遺言執行者の権限内容が明確化するための各種改正が行われました。

遺言執行者の権限内容が明確化されることにより、遺言執行者が安定的に職務を行い、相続手続きを円滑に完了させることが期待されます。

相続法改正による遺言執行者に関するルールの変更については、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

[参考記事] 相続法改正|遺言執行者の権限を強化するルール変更の内容は?

(4) 遺贈の担保責任

贈与に関する規定が改正され、特定物と不特定物という法律上の区別をなくしたことと合わせ、遺贈についても特定物・不特定物の区別がなくなりました。

遺贈義務者は遺贈の目的である物又は権利を相続開始時(または特定時)の状態で引き渡し又は移転する義務を負います。

不特定物の際に瑕疵のない物を引き渡す義務の規定がなくなり、相続開始時または特定した時の状態で引き渡せばよいため、実質的には遺贈義務者の担保責任を軽減するものと言えます。

[参考記事] 相続法改正|遺贈の担保責任とは?改正前後の違いや具体例も紹介

4.改正ポイント④|遺留分制度の見直し

遺留分制度の見直しは、今回の相続法改正においてもっとも大きなテーマの一つです。

(1) 「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求権」へ

まず、従来「遺留分減殺請求権」と呼ばれていた権利につき、「遺留分侵害額請求権」へと変更が行われました(民法1046条1項)。

「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた相続の最低保障額であり、遺言などで偏った相続分の指定が行われた場合に、相続人間の不公平を是正するために活用されます。

従来の「遺留分減殺請求」では、被相続人によって行われた遺贈・贈与を巻き戻し、遺留分権利者に対して現物を交付することによって精算を行うのが原則とされていました(現物返還)。

しかし、相続法改正によって新たに導入された「遺留分侵害額請求」では、被相続人によって行われた遺贈・贈与はそのままに、遺留分侵害者から遺留分権利者に対して金銭を交付することによって精算を行うものとされました(金銭精算)。

このように、現物返還から金銭による精算へと原則を転換することにより、遺留分制度の使い勝手が改善されたといえるでしょう。

なお、遺留分侵害額請求が金銭による精算とされたことに伴い、精算金を準備するのが難しい遺留分侵害者に配慮して、家庭裁判所による「期限の許与」が認められています(民法1047条5項)。

(2) 特別受益の持ち戻しの対象期間を限定

遺留分計算においても、相続分の計算と同様に、法定相続人の特別受益に当たる遺贈・贈与については、「持ち戻し」の対象になる場合があります。

従来のルールでは、法定相続人に対する遺贈・贈与の「持ち戻し」が行われる対象期間に制限がなかったため、はるか昔に遡って持ち戻し計算を行わなければなりませんでした。

このような取り扱いは現実的でなく、また被相続人の意思に必ずしも沿っているとは言えません。

そのため、今回の相続法改正により、法定相続人に対する特別受益に当たる遺贈・贈与につき、遺留分計算における「持ち戻し」の対象期間が「相続開始前10年間」に限定されました(民法1044条3項、1項)。

特別受益の持ち戻しについては、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

[参考記事] 特別受益の「持ち戻し」とは?計算方法や注意点、持ち戻し免除を解説

5.改正ポイント⑤|権利や義務の承継に関する見直し

(1) 遺産承継の第三者対抗要件に関するルールの見直し

従来の判例法理では、相続による権利の承継は、登記などの対抗要件がなくても、一律第三者に対抗できるとされていました。

しかし、第三者の視点からは、登記とは異なる遺言や遺産分割が行われた場合、その内容を知る術は事実上存在せず、取引の安全が阻害されるという問題が指摘されていました。

そこで、相続法改正によって遺産承継の第三者対抗要件に関するルールが見直され、法定相続分を超える遺産の承継について第三者に対抗するには、対抗要件の具備が必要とされました(民法899条の2第1項)。

遺産承継の第三者対抗要件に関するルールの見直しについては、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

[参考記事] 相続法改正|法定相続分を超えて権利を承継する場合は対抗要件に注意

(2) 債務の承継と債権者の請求に関するルール見直し

被相続人の債務について、遺言書で誰にどれだけ相続させるといった指定があった場合等のルールに関しても整理されました。

従来から判例法理によって、相続債務に関する相続分の指定は、「相続債権者に対してはその効力が及ばない」とされていましたが(最高裁平成21年3月24日判決)、相続法改正によってそのルールが明文化されました(民法902条の2)。

[参考記事] 相続法改正|相続分の指定があるときの債権者に対する義務の承継

6.改正ポイント⑥|特別寄与料の制度の新設

被相続人が生前に要介護の状態になった場合などには、親族の誰かが介護を行うことが多いでしょう。

その際、介護に当たるのが法定相続人であれば、「寄与分」(民法904条の2第1項)の制度によって、ある程度生前の被相続人に対する貢献に報いることができます。

これに対して、法定相続人以外の親族(典型的には、息子の配偶者など)が被相続人の介護等に当たった場合、従前の民法では、その貢献に報いる制度が用意されていませんでした。

そこで、相続法改正により「特別寄与料」の制度が新設され、被相続人の生前に特別の寄与をした法定相続人以外の親族は、法定相続人に対して、寄与に応じた額の金銭の支払いを請求できるようになりました(民法1050条1項)。

[参考記事] 特別寄与料の請求とは?民法改正による新しいルール

7.改正相続法の施行日は?

今回の改正相続法の施行日は、原則として2019年7月1日です。

ただし、一部の変更については、以下のとおり前倒しまたは後倒しで施行されています。

自筆証書遺言の方式緩和:2019年1月13日施行
配偶者居住権・配偶者短期居住権:2020年4月1日施行
遺贈の担保責任:2020年4月1日施行
法務局による自筆証書遺言書保管制度:2020年7月10日施行

8.相続法に関する今後の展望

今回の相続法改正では、相続に関するさまざまな抜本的な改正が行われ、さらにいくつかの新制度が施行されるなど、従前のルールが大幅に刷新されました。

今後についても、国会で審議されている相続登記の義務化をはじめとして、社会情勢に合わせた相続ルールのアップデートが続けられるものと考えられます。

相続はいつ発生するかわからないので、そのタイミングで適用される相続法の規定を踏まえて適切に対応することが大切です。
相続法のルールについてわからないことがあれば、お気軽に泉総合法律事務所までご相談ください。

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