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遺産分割

遺産相続で財産が家しかない場合、どうやって遺産分割する?

自宅の土地・建物は、多くの人にとって非常に重要かつ価値の高い財産です。
特にわが国では、相続が発生した際に、価値のある財産が自宅の土地・建物しかないというケースもしばしば見受けられます。

相続財産が自宅の土地・建物のみであり、複数の相続人が存在する場合には、どのように遺産分割をするかが悩ましいところでしょう。

この場合、適切な遺産分割の方法は、当事者である相続人のニーズや、配偶者の方の住居を確保する必要性などによって異なります。
そのため、弁護士に相談のうえで、適切な遺産分割の方法を比較・検討することをお勧めいたします。

この記事では、唯一の相続財産である自宅の土地・建物を遺産分割する方法を、それぞれのメリットやデメリットと併せて解説します。

1.相続財産の家を共有状態にしておくデメリット

遺産分割がされていない状態の相続財産は、相続人全員の共有となります(民法898条)。

自宅の土地・建物を遺産分割するのが難しければ、「共有のままでも良いのでは」と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、自宅の土地・建物を共有状態のままとしておくことは、以下の理由からお勧めできません。

(1) 売却や賃貸などがスムーズにできない

共有状態の自宅の土地・建物を売却するためには、基本的には、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。
また、自宅の土地・建物を賃貸に出したいと思った場合でも、共有持分割合の過半数を有する共有者の同意が必要となります(民法252条)。

売却や賃貸など、資産運用上重要な判断については、共有者間で意見が食い違うケースも多いところです。

共有者間で意見が異なれば、必然的に意見の調整や妥協が必要となり、売却や賃貸をスムーズに行うことができないデメリットがあります。

(2) 家の使用や運用などについて揉めやすい

共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用ができるとされています(民法249条)。

たとえば自宅の建物が共有の場合、ある共有者の方が実際にその建物に住んでいないとしても、共有持分を有していれば、他の共有者に対して建物全体の使用を請求できるのです。

そのため、自宅に住んでいる人と住んでいない人の間で、建物の使用に関してトラブルが発生する可能性が残ってしまいます。

また前述のとおり、自宅の土地・建物を売却・賃貸等する場合には、共有者間で意思決定の調整を行う必要があります。

その際、共有者間で激しい意見の対立が生じた場合には、親族関係を悪化させてしまう原因になりかねません。

このように、自宅の土地・建物が共有状態のままである場合、その使用や運用などに関するトラブルの火種になるケースが非常に多いのです。

(3) 共有物分割請求により紛争が深刻化するおそれ

共有物に関するトラブルの最たる例が「共有物分割請求」です。

各共有者は、原則としていつでも、共有状態を解消するため、他の共有者に対して共有物の分割を請求できます(民法256条1項本文)。

共有物分割請求が裁判で争われた場合、当事者にとっては不本意な形で自宅の土地・建物が競売されてしまう可能性もあります。

また、共有者同士が分割方法などを巡って強硬に主張を戦わせた場合、親族関係はますます悪化してしまうでしょう。

このような事態を防ぐためにも、自宅の土地・建物を相続人の共有状態のままとしておくことは避けた方がよいでしょう。

2.家を遺産分割する方法

相続財産が自宅の土地・建物のみである場合、遺産分割の方法としては、「代償分割」と「換価分割」の2つが考えられます。

【「現物分割」は通常不可】
一つの物を複数人で分割する原則的な方法は、物を物理的に分ける「現物分割」です。しかし、自宅の土地は(分筆できるので)ともかくとして、一つの建物を複数に分割することは不可能です。自宅が区分所有建物の場合は、現物分割を行う余地もありますが、そのようなケースは稀でしょう。
したがって、自宅の土地・建物の遺産分割時には、現物分割の方法は基本的に採用できないと考えておきましょう。

(1) 「代償分割」によって誰かの単独所有とする

「代償分割」とは、自宅の土地・建物を誰かが単独で承継し、承継者がそれ以外の相続人に対して代償金を支払う遺産分割方法です。

①代償分割のメリット

代償分割は、相続人の中で自宅の土地・建物を欲しているのが1人の場合に、効果的な遺産分割方法となります。

自宅の土地・建物を承継する相続人にとっては、単独所有となるため自由に管理・処分できるメリットがあります。

一方、他の相続人も、合理的な金額の代償金を得ることができれば、双方にとってwin-winの取引となるでしょう。

②代償分割のデメリット

代償分割の最大のデメリットは、自宅の土地・建物を承継する相続人が、他の相続人に対して支払う代償金を準備しなければならないという点です。

自宅の土地・建物を売却するわけにはいかないとすれば、別途代償金として支払う原資を準備する必要があります。

しかし、自宅の土地・建物は高額の価値を持つケースも多いため、代償金をすんなり支払えるという方は少ないでしょう。

もし代償金を支払える目処が立たない場合には、後述する換価分割を検討する必要があります。

[参考記事] 代償分割とは?概要と注意点をわかりやすく解説

(2) 「換価分割」によって売却代金を分割する

「換価分割」とは、自宅の土地・建物を第三者に売却してしまい、その売却代金を相続人間で分ける遺産分割方法です。

①換価分割のメリット

換価分割は、売却代金を1円単位で分割することができるため、相続人間の公平性に長けた遺産分割方法と言えるでしょう。

また、自宅の土地・建物を手放すことにはなりますが、同時に固定資産税やメンテナンス費用などの維持費がかからなくなる点は、メリットとして捉えることもできます。

②換価分割のデメリット

換価分割では、自宅の土地・建物を手放さなければならない点が最大のデメリットです。

特に、複数の相続人が自宅の土地・建物を欲しがった結果、話し合いがまとまらずに換価分割を選択するケースでは、相続人にとって不本意な遺産分割になってしまう可能性が高いでしょう。

さらに、換価分割は売却先が見つかることが大前提となりますが、不動産需要が乏しい地域の場合には売却先の選定に苦労する可能性があります。

好条件で売却できる相手が見つからない場合には、想定よりも低い条件で売却せざるを得ないケースもあるので注意が必要です。

[参考記事] 換価分割とは?分割の概要と進め方を解説

3.配偶者居住権を活用

自宅の土地・建物に、被相続人の配偶者が住み続ける必要がある場合には、「配偶者居住権」を活用して遺産分割を行うことも考えられます。

(1) 配偶者居住権とは?

配偶者居住権とは、相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた配偶者が、その建物全部について無償で使用収益できる権利をいいます(民法1028条1項)。

配偶者居住権を設定した場合、所有者に登記手続きへの協力が義務付けられており(民法1031条1項)、登記を備えた場合には、配偶者居住権は第三者への対抗力を持ちます。
したがって、配偶者の住居を確保するために、配偶者居住権は強力な権利として働くのです。

[参考記事] 配偶者居住権とは?メリット・デメリットと使い方を解説

(2) 代償分割と配偶者居住権を併用

配偶者居住権は、代償分割と組み合わせることで、自宅の土地・建物を、相続人の想定に沿った形で活用できるようになる可能性があります。

すなわち、代償分割によって、配偶者以外の相続人が自宅の土地・建物を単独所有し、配偶者は配偶者居住権によって建物に住み続けるという活用方法です。

このような方法をとることで、代償分割の取得者(配偶者以外の相続人)が得る土地・建物の価値が減少し、結果的に支払う代償金額が少なく済みます。

また、配偶者としても、自宅に住み続ける強力な権利を確保できるメリットがあります。

(3) 配偶者居住権付きの所有権の価値

前述のとおり、配偶者居住権は強力な権利であるため、それ自体に財産上の価値があると考えられています。

配偶者居住権の価値は地域などの要素によって変わりますが、おおむね土地・建物価格の合計の4割~7割程度になるケースが多いです。
その反面、配偶者居住権を負担する所有者が得る財産上の価値は、土地・建物価格の合計の3割~6割程度まで減少します。

つまり、単独所有とする自宅の土地・建物に配偶者居住権を設定することは、実質的に所有者と配偶者の間で、自宅の土地・建物の価値を分割することを意味するのです。

その結果、代償金額や相続税額の計算に影響が生じることになります。

配偶者居住権の価値評価については、弁護士にご相談いただければ、税理士や不動産業者との連携によって対応可能です。

4.相続財産が自宅のみの遺産分割は弁護士に相談を

相続財産が自宅のみである場合、当事者である相続人のニーズに合わせて、適切な遺産分割方法を模索する必要があります。

主な選択肢としては、①代償分割、②換価分割、③代償分割と配偶者居住権の併用が考えられます。
それぞれメリット・デメリットが存在するため、ケースバイケースでの比較検討を行い、ご自身の状況に適した遺産分割方法を選択することが大切です。

自宅の土地・建物に関する遺産分割については、弁護士にご相談いただければ、ご状況に合わせた方法選択のポイントや注意点などにつきアドバイスを差し上げます。
また、税理士や不動産業者と適宜連携を行い、物件の価値評価や売却先の選定などについてもサポートが可能です。

相続財産が家しかない状況で、どのように遺産分割をすれば良いか迷っている方は、ぜひお早めに弁護士までご相談ください。

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