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遺産分割

換価分割とは?分割の概要と進め方を解説

「換価分割」は、不動産や未公開株式を、相続人間で禍根を残すことなく遺産分割するための有力な方法です。

不動産や未公開株式に関する遺産分割協議の際には、現物分割や代償分割と比較して、どの方法により遺産分割を行うのが適切であるかをよく検討しましょう。

この記事では、換価分割の概要・メリット・デメリット・進め方などについて詳しく解説します。

1.換価分割とは?

まずは、換価分割とはどのような遺産分割方法であるかについて解説します。

(1) 遺産を処分し代金を分割すること

換価分割とは、不動産や未公開株式などを売却して、その代金を相続人間で分ける遺産分割の方法をいいます。

これらの遺産を相続人の共有とした場合、相続を重ねるごとに共有者の持分が複雑になるなどの理由から、相続人間のトラブルの火種になってしまいます。

こうしたトラブルを回避するため、売却によって共有関係を解消し、すっきりとした遺産分割を行うことを目的として選択されることが多いのが換価分割です。

(2) 不動産の換価分割の具体例

不動産を換価分割するケースについて、簡単な設例を用いて解説します。

<設例>
・相続人は配偶者A、子B・C・Dの4人
・土地を換価分割する
・土地は3000万円で売れた

換価分割では、実際に土地を売却した代金を、相続人間で分け合います
この設例の場合、3000万円で土地が売却されましたので、この3000万円をA・B・C・Dで分けます。

分け方は遺産分割協議で自由に決められますが、この設例では法定相続分に従って換価代金を取得すると仮定しましょう。
この場合、A・B・C・Dの法定相続分はそれぞれ2分の1・6分の1・6分の1・6分の1なので、Aの取り分は1500万円、B・C・Dの取り分は500万円ずつです。

(3) 他の遺産分割方法|現物分割と代償分割

不動産や未公開株式の共有関係を解消するための遺産分割方法としては、換価分割以外に「現物分割」と「代償分割」があります。

現物分割」は、遺産を物理的に複数の相続人で分ける遺産分割の方法です。
土地を分筆してそれぞれの筆を各相続人が単独で取得する、未公開株式を分割したうえで各相続人に配分するなどの方法が現物分割に当たります。

ただし、相続した不動産で現物分割を行うと、細分化により用途が限られるなどして価値が下がる可能性がある、各相続人の取得すべき相続分と分筆後の土地を一致させることが難しく、不公平になる可能性があるといったデメリットがあります。

代償分割」は、一部の相続人に遺産の現物を取得させ、それ以外の相続人は遺産を取得した相続人から代償金を受け取る遺産分割の方法です。
不動産や未公開株式については評価が難しく、代償金の金額は、専門的な評価を行って計算するのが一般的です。

したがって、代償分割については、評価方法を巡って争いになりやすく、また現物を取得した相続人の代償金の支払能力によっては、支払方法について争いになる可能性があるといったデメリットがあります。

[参考記事] 代償分割とは?概要と注意点をわかりやすく解説

2.換価分割のメリットは?

では、換価分割には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。まずは、メリットからご紹介します。

(1) 金銭による公平な遺産分割が実現できる

換価分割では、実際に売却によって得られた金銭を、相続人間において1円単位で分割することができます。

したがって、相続財産の配分を細かく指定することができるため、公平で共同相続人の希望を反映した遺産分割を実現しやすくなるメリットがあります。

(2) 共有状態から生じるトラブルを回避できる

換価分割をすることによって、遺産を相続人が共有している状態を解消することができます。

共有状態は、遺産の活用方法や処分方法について、相続人同士の紛争を誘発するリスクがあるため、換価分割によって早めに共有状態を解消することには多くのメリットがあります。

(3) 不動産であれば維持費や固定資産税を節約できる

不動産を所有していると、管理のための維持費がかかるほか、毎年固定資産税が課税されます。

換価分割によって不動産を手放せば、これらの費用を節約することができるので、長期的なコストを考えるとメリットが大きいといえるでしょう。

3.換価分割のデメリットは?

その一方で、換価分割には以下のデメリットがあります。
現物分割や代償分割の方法とメリット・デメリットを比較しつつ、ご家族の状況に合わせて適切な遺産分割方法を選択しましょう。

(1) 遺産を手放さなければならない

換価分割では、遺産を売却によって手放さなければなりません

たとえば、自宅の土地・建物に思い入れがあり、ぜひとも相続人の手元に残しておきたいという場合には、換価分割を行うことは不適当になります。
このような場合には、代償分割など、遺産を相続人の手元に残すことができる分割方法を検討しましょう。

(2) 売却に手間やコストがかかる

換価分割の場合、実際に不動産を売却するまでに時間がかかるうえ、売却に伴うコストも生じます。

たとえば不動産業者を仲介として利用する際に、仲介手数料が必要です。
また、売却先の選定や条件交渉が長期間に及ぶ場合には、その間の維持費や固定資産税がかかります。

換価分割を検討する場合には、見込まれる売却価格と、必要になるコストの両者を比較検討する必要があるでしょう。

(3) 相続財産が売れない可能性がある

換価分割では、売却先が見つけ難い可能性があります。

特に不動産の場合、都市部の物件であれば比較的容易に買い手が付くことが多いですが、たとえば山林部の空き家や荒廃地などの場合は、買い手が付かないことが十分考えられます。

もし買い手が付きにくい場合には、売却価格を下げたり、現物を手元に残したまま別の活用方法を模索したりする必要があるでしょう。

(4) 相続税に加えて譲渡所得税がかかる場合がある

遺産の取得費よりも売却価格の方が高い場合には、売却益に対して譲渡所得税が課税される可能性があります。

特に、被相続人が当初遺産を取得した時期が相当昔の場合には、物価・地価などの関係で取得費が非常に安く、多額の譲渡所得税が課税されるケースも考えられます。

しかし、相続財産を相続税の申告期限から3年以内に売却すると、納付した相続税を売却した財産の取得費に加算することができ、所得税の軽減を受けることができる「取得費加算の特例」があります。

この特例を受けるためには、売却した年に所得税の確定申告を行い、次の必要書類を添付します。

  • 相続税申告書の写し
  • 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  • 譲渡所得の内訳書

詳しくは、税理士などの専門家に相談してみると良いでしょう。

4.不動産の換価分割の手続きの流れ

次に、実際に換価分割を行う際には、どのような流れで手続きが進むのかについて、不動産の換価分割を例にとって解説します。

(1) 相続人全員で換価分割について合意する

換価分割を行うためには、不動産を第三者に対して売却しなければなりません。

遺産分割が未了の段階では、遺産に属する不動産は全相続人の共有です(民法898条)。
よって、換価分割のための不動産の処分は、全相続人の合意に基づいて行う必要があります(民法251条)。

(2) 遺産分割協議書の作成・締結

相続開始時点では、亡くなった被相続人が不動産の登記名義人になっています。
しかし、すでに亡くなった被相続人が不動産売買の当事者になることはできないため、売却の前提として、登記名義を相続人に変更しておく必要があります。

被相続人から相続人への所有権移転登記手続きを行うためには、添付書類として遺産分割協議書が必要です。

遺産分割協議書には、換価分割をする旨、及びそれに伴って不動産を取得する相続人を明記し(共同相続人全員の名義にする場合と代表者を定めてその代表者の名義にする場合があります)、相続人全員が署名・押印をする必要があります。

遺産分割協議書 [参考記事] 遺産分割協議書とは|作成の目的と条文の書き方を文例集付きで解説

「6.換価分割に関する遺産分割協議書の条項記載例」で、遺産分割協議書における換価分割条項の記載例をご紹介します。

(3) 登記名義を被相続人から相続人に変更

遺産分割協議書で換価分割について規定したら、その規定内容に従って、暫定的に被相続人から相続人へと所有権移転登記を行います。

所有権移転登記の手続きは、遺産分割について相談している弁護士を通じて、司法書士を紹介してもらうとスムーズに対応できます。

(4) 売却先の選定|弁護士を通じて不動産業者に相談

換価分割の方針が固まったら、遺産分割協議書の作成と並行して、不動産の売却先の選定を開始します。

遺産分割協議について弁護士に相談している場合には、提携先の不動産業者の紹介を受けられることもあるので、売却条件などの希望を伝えましょう。

(5) 不動産売買契約書の締結・実行・登記

不動産の売却先が決定し、売却条件についても合意ができたら、不動産売買契約書を締結します。

不動産売買契約書は、不動産業者が使用しているひな形を用いて締結することも多いですが、売主や買主の希望によって特約を追加するケースもあります。
契約内容に不安がある場合には、相続・遺産分割を依頼している弁護士に、契約書の内容をチェックしてもらいましょう。

契約内容が固まったら、不動産の暫定的な所有者である相続人が売主となって、不動産売買契約を締結し、売買を実行に移します。
それに伴って、売主である相続人から買主へと所有権移転登記手続きを行い、不動産の売買は完了です。

(6) 売却代金の分配

最後に、不動産の売買によって得られた売却代金を、遺産分割協議書の規定に従い、相続人間で分配します。

 

5.換価分割を活用することが適したケース

換価分割を活用するメリットが大きいケースとしては、以下のパターンが考えられます。

(1) 遺産の中に相続人が誰も必要としていない不動産がある場合

相続人のいずれも使用する予定がない不動産は、換価分割により現金化してしまうのが、もっともすっきりした活用方法です。

もし、遺産に、相続人の誰もが必要としない不動産が含まれている場合には、換価分割による処分ができないか、弁護士や不動産業者と相談して検討してみましょう。

(2) 遺産評価額の大部分を不動産が占める場合

不動産は一般に高額の資産であることから、遺産評価額の大部分を不動産が占める相続事例も多いところです。

この場合、特定の相続人が不動産を取得してしまうと、他の相続人との間で不公平が生じてしまいます。
仮に代償分割の方法をとるにしても、代償金が多額になり、支払いのためのキャッシュが準備できないことも懸念されます。

換価分割の方法によれば、不動産を処分したうえで売却代金を公平に分けることができるため、上記のような問題は解決します。

(3) 誰が遺産を取得するかの話し合いがまとまらない場合

遺された遺産の価値にばらつきがある場合に、価値の高い遺産を自分が取得したいと複数の相続人が主張するなど、なかなか遺産分割協議がまとまらないことも考えられます。

その場合、やむを得ず換価分割の方法による金銭での精算という妥協案を選択するケースもあります。

(4) 相続税の納税資金を捻出できない場合

たとえば不動産を相続した場合には、相続時の不動産評価額に対して相続税が課税されます。
しかし、不動産を相続人の手元に残しておく場合には、売却によってキャッシュが入ってくるわけではないので、別途相続税の納税資金を準備しなければなりません。

不動産の価値が高いケースでは、課される相続税も高額になるので、納税資金が準備できないケースも多いでしょう。
その場合、不動産を相続人の手元に残すことを諦め、換価分割によって納税資金を捻出するという選択肢も考えられます。

6.換価分割に関する遺産分割協議書の条項記載例

換価分割を行う場合、遺産分割協議書において、その内容をあらかじめ記載しておく必要があります。
以下では、遺産分割協議書における換価分割の条項例を含んだ遺産分割協議書のひな形をご紹介します(代表者の名義にして売却する場合)。

第〇条

1. 相続人〇〇は、下記の不動産を換価分割のため取得する。

(1)土地
所在 〇〇県○○市・・・
地番 〇番〇
地目 ○○
地積 ○○平方メートル

(2)建物
所在 〇〇県○○市・・・
家屋番号 〇番〇
種類 〇〇
構造 〇〇
床面積 ○○平方メートル

2. 相続人〇〇は、上記1の不動産を令和○年○月○日までに〇〇万円以上の価格で売却し、その売却代金から仲介手数料、契約書作成費用、登記手続き費用など、当該売却に要する一切の費用を控除した残額を、相続人○○と相続人□□が各2分の1ずつの割合により取得する。令和〇年〇月〇日までに売却できない場合には、相続人〇〇と相続人□□の間で売却条件について別途協議を行う。

遺産分割協議書には、換価分割の内容として、遺産を十分に特定することと、売却代金の配分を明記しておくことがもっとも大切です。
また、相続人の一部が遺産の売却を担当する場合には、相続人同士の紛争防止のため、売却の最低条件や期限、再協議の方針などについても明記しておきましょう。

7.まとめ

換価分割は、遺産を手放す必要がある一方で、相続人間で公平な遺産分割を実現することができるなどの多くのメリットがある有力な遺産分割方法です。
特に、遺産の中に不動産が含まれている場合には、弁護士に相談して換価分割の可能性を検討してみましょう。

その他、遺産分割方法の比較検討や、遺産分割協議の調整は、弁護士にご依頼をいただくとスムーズに行うことができます。
相続人同士で遺産分割について揉めているケースでも、弁護士を通じて根気強くコミュニケーションをとることで、お互いに納得できる妥協点が見つかる可能性もあります。

換価分割をご検討中の方、遺産分割に関するトラブルでお悩みの方は、ぜひ泉総合法律事務所までご相談ください。

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