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事実婚の相手(内縁の夫や妻)に遺産を相続させたい!

夫婦の形には、婚姻届を市区町村役場に提出した法律婚の夫婦と、そうではない事実婚の夫婦の2種類があります。このような事実婚の夫婦のことを「内縁の夫婦」とも呼びます。

事実婚の状態にある人の中には、将来、内縁の配偶者に対して財産を残してあげることができるのかを心配する人もいるでしょう。

内縁の配偶者は、将来の遺産相続において相続人になることができるのでしょうか。また、相続人になれないとするとどのような方法で財産を残してあげれば良いのでしょうか。

今回は、事実婚の相手に財産を遺す方法について解説します。

1.「法定相続人」の範囲

相続が発生した場合には、誰が被相続人の遺産を相続することになるのでしょうか。
まずは、法定相続人の範囲と内縁の配偶者の相続権について説明します。

(1) 法定相続人とは

法定相続人とは、相続が発生したときに、法律上被相続人の財産を相続することができると定められている人のことをいいます。

法定相続人の範囲と順位については、民法が明確に規定していますので、相続が発生した場合には、民法のルールに従って法定相続人を決めることになります。

民法が定める法定相続人の範囲は、以下の表のとおりです。

法定相続人 順位
配偶者 常に相続人
被相続人の子ども 第1順位
被相続人の直系尊属 第2順位
被相続人の兄弟姉妹 第3順位
法定相続人 [参考記事] 法定相続人の範囲と法定相続分をわかりやすく解説

(2) 内縁の配偶者には相続権はない

民法は、法定相続人として「配偶者」に相続権を認めています。

しかし、ここでいう「配偶者」とは、婚姻届を提出して法律上の婚姻関係にある者のことを指し、事実上の婚姻関係にあるに過ぎない内縁の配偶者は含まれません。

そのため、法律上の婚姻関係にあれば、何十年も別居していたとしても相続権が認められる一方で、事実婚の場合には、何十年も夫婦同然に暮らして献身的に介護などを行っていたとしても、相続権は認められません。

なお、内縁の夫が死亡して内縁関係が解消したために、内縁の妻が内縁の夫の相続人に対し、財産分与を請求したという事案について、最高裁は、「死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである」として、民法768条の財産分与の規定を類推適用することも否定しています。

【内縁の配偶者との間の子どもの相続権】
内縁の配偶者との間に生まれた子どもがいる場合には、その子どもには相続権が認められるのでしょうか。
婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもは、「非嫡出子」といって、男性(父親)との関係では法律上の親子関係はありません。そのため、内縁の夫が死亡したとしても、その子どもには相続権が認められません。非嫡出子に相続権を与えるためには、内縁の夫がその子どもを「認知」する必要があります。内縁の夫から認知を受けることによって、その子どもは相続権が認められることになります。
なお、認知は生前に行うこともできますし、遺言によって認知をすることもできます。
一方で、女性(母親)との関係では、両者の間の親子関係は明確のため、当然に相続権が認められます。

2.事実婚の配偶者に遺産を相続させる方法

事実婚の配偶者は相続人になることができませんので、自分が亡くなった後に遺産を相続することはできません。
しかし、以下のような方法によって事実婚の配偶者に対して財産を残すことが可能になります。

(1) 遺言書による遺贈

遺贈とは、遺言により遺贈者の財産を無償で受遺者に譲渡することをいいます。

遺贈の相手については、法律上の制限はありませんので、法定相続人以外の第三者に対して遺贈をすることもできます。そのため、あらかじめ遺言書を作成しておき、その中で「○○(内縁の配偶者)に遺言者の有するすべての財産を遺贈する」といった内容を記載しておくことによって、内縁の配偶者に対して、遺産を渡すことが可能になります。

もっとも、遺言者に法定相続人がいる場合には、その人の遺留分にも配慮が必要になります。

遺留分とは、遺言などによっても奪うことができない最低限度の相続財産の取得割合のことをいいます。他の相続人の遺留分を侵害する内容の遺言書であった場合には、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求をされるなどして、内縁の配偶者が遺留分をめぐる争いに巻き込まれてしまいますので注意しましょう。

遺留分とは [参考記事] 遺留分とは|概要と遺留分割合をわかりやすく解説 遺言書の書き方 [参考記事] 正しい遺言書の書き方|作成のポイントと自筆証書遺言の要件

(2) 生前贈与

遺贈は遺言者の死後に財産を移転する方法ですが、生前に財産を移転する方法として「生前贈与」という方法もあります。

生前贈与をする場合には、贈与税が課税されることになりますので、一度に高額な財産を生前贈与してしまうと高額な贈与税が課税されるリスクがあります。そのため、生前贈与の方法を利用する場合には、贈与税の負担も考慮して計画的に財産の移転を行う必要があります。

たとえば、贈与税には「暦年贈与」といって毎年1月1日から12月31日までの1年間の贈与額が110万円以下であった場合には、贈与税が課税されないという制度があります。
この暦年贈与を利用して、長期間にわたって計画的に贈与を行うことによって、贈与税の負担なく内縁の配偶者に財産を渡すことが可能になります。

なお、生前贈与の場合も遺贈と同様に法定相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性がありますので、贈与する金額には注意が必要です。

[参考記事] 相続に備えて生前贈与を行うメリット・デメリット

(3) 特別縁故者に対する財産分与の申立て

亡くなった人に相続人が誰もいないか、すべての相続人が相続放棄をした場合には、内縁の配偶者は、家庭裁判所に特別縁故者に対する財産分与の申立てをすることによって、被相続人の相続財産を受け取ることができる可能性があります。

特別縁故者とは、被相続人の生前に介護や身の回りの世話をしていたなど、被相続人と特別親しい関係にあった人のことをいいます。

被相続人に相続人がいなければ、誰も被相続人の遺産を受け取ることができず、最終的に国庫に帰属するのが原則です。しかし、被相続人と特別な関係にあった人がいる場合には、その人に財産を帰属させた方が望ましいという配慮から、特別縁故者に対する財産分与の制度が設けられました。

特別縁故者と認められるためには、以下のいずれかに当てはまる必要があります(民法958条の3第1項)。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • その他被相続人と特別の縁故があった者

なお、特別縁故者に対して財産分与を行うかどうかについては、最終的には家庭裁判所の裁判官が判断することになりますので、申立てをすれば必ず認められるというわけではありません。

[参考記事] 特別縁故者の申立|誰がなれる?相続財産分与の条件・裁判例

3.事実婚相手がいる場合の生前対策は弁護士まで

事実婚の配偶者がいる場合には、事実婚の配偶者が自分の死後、生活に困ることのないように生前に十分な対策を講じておくことが重要です。

そして、生前対策を講じる場合には、専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。

(1) 最適な生前対策をアドバイスしてくれる

事実婚の配偶者に財産を残す方法には、今回紹介した遺言による遺贈、生前贈与、特別縁故者に対する財産分与の申立てなどの代表的な方法以外にもさまざまなものがあります。
どのような方法が最適であるかは、法定相続人の有無、財産の内容、年齢など個別具体的な状況に応じて異なってきます。

最適な生前対策を講じるためには、専門家である弁護士のサポートが不可欠となります。弁護士であれば、相談者の具体的な状況に応じて最適な生前対策を提案してくれるでしょう。

(2) 法的に問題のない遺言書や契約書を作成してもらえる

最適な生前対策が決まったらその方法を実践していく必要があります。遺贈であれば遺言書の作成が必要になり、生前贈与であれば贈与契約書が必要になってきます。

たとえば、ご自身で遺言書を作成して生前対策は完璧だと思っていたとしても、遺言書の形式や内容に問題があった場合には、遺言書が無効となり、事実婚の配偶者には一切財産を残すことができなくなってしまいます。
そのため、法的に問題のない遺言書や契約書を作成することが非常に重要になります。

しかし、法律の知識がない方の場合、ご自身では有効なものであるかどうかを正確に判断することは難しいといえます。そのような場合には、弁護士に遺言書や契約書の作成を依頼することが安心です。

4.まとめ

事実婚の夫婦の場合には、法律婚の夫婦の場合と異なり、その配偶者には相続権が認められていません。そのため、事実婚を継続する場合には、将来のことも考えて早いうちから生前対策を講じることが必要になります。

どのような生前対策が最適であるかは、個別具体的な状況によって異なってきますので、生前対策をお考えの方は専門家である弁護士に相談をすることをお勧めします。

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