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遺言書

遺言執行者は辞任できますか?

被相続人が遺言書で遺言執行者を指定していた場合には、遺言執行者が遺言の内容実現のために働くことになります。

しかし、最初こそ故人の遺志を尊重して遺言執行者になることを承諾したものの、遺言の執行手続きを進めるにつれて「こんなに大変だとは思わなかった」などの理由で、途中で遺言執行者を辞任したいと考える方もいるかもしれません。

遺言執行者は途中で辞任することができるのでしょうか。また、辞任をすることができるとしてどのような手続きが必要になるのでしょうか。

今回は、遺言執行者の辞任理由と辞任手続きについて解説します。

1.遺言執行者とは

遺言執行者とは、被相続人の死後に遺言内容を実現するという目的を達成するために、遺言者によって指定され、または家庭裁判所によって選任された人のことをいいます。
遺言内容に沿って、相続登記や遺産の分配・換価などの手続きを行っていきます。

遺言執行者は、遺言内容に遺言認知や推定相続人の廃除が含まれている場合には必ず選任しなければなりませんが、それ以外のケースでは、遺言執行者を選任するかどうかについてはあくまでも任意です。

遺言執行者 [参考記事] 遺言執行者とは|役割と選任するメリット、誰を選べばいい?

2.遺言執行者の辞任

遺言執行者を辞任することができるかどうかについては、遺言執行者に就任する前か後かによって異なってきます。
以下では、遺言執行者の就任前後に分けて辞任の可否について説明します。

(1) 遺言執行者に就任する前の辞任

遺言書で遺言執行者に指定されていたとしても、必ず遺言執行者に就任しなければならないというわけではありません。遺言執行者に指定された人が遺言執行者に就任するか否かは、その人の自由な意思に委ねられています

そのため、遺言の内容を確認した後に、遺言執行者として業務を行っていくことが困難だと感じた場合には、遺言執行者への就職を拒絶することができます

遺言執行者に就任する前であれば、遺言執行者への就任を拒絶するのに特に理由は必要ありません。

しかし、遺言書によって指定された人が遺言執行者に就任するか否かは、相続人にとっては重大な関心事ですので、遺言執行者への就任を拒絶することに決めた場合には早めに相続人に連絡をするようにしましょう。

なお、相続人は、遺言によって遺言執行者に指定された人に対して、相当の期間を定めてその期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、指定された人が期間内に確答をしなかったときは、遺言執行者への就任に承諾したものとみなされますので注意が必要です(民法1008条)。

(2) 遺言執行者に就任した後の辞任

いったん就任を承諾した場合には、自由に辞任をすることはできません
遺言執行者に就任した後に辞任をするためには、「正当な事由」が必要になります(民法1019条2項)。

「正当な事由」とは、遺言執行者が、長期の病気、長期の出張、遠隔地への引っ越しなどによって遺言執行を継続することが客観的に困難であると認められる場合をいいます。
単に遺言執行業務が難しいとかやる気を失ったなどという理由では、遺言執行者を辞任することはできませんので注意が必要です。

遺言執行者に就任する前後で、遺言執行者を辞任することができるかどうかの難易度は大きく異なってきますので、安易に遺言執行者への就任を承諾するのではなく、慎重に判断してから決めるようにしましょう。

なお、「正当な事由」があったとしても遺言執行者の職務の「一部だけ」を辞任するということは認められていません。

3.遺言執行者が辞任する場合の手続き

遺言執行者に就任した後で遺言執行者を辞任するためには、家庭裁判所の許可を受ける必要があります。

(1) 家庭裁判所への申立て

遺言執行者の辞任の手続きは、家事審判事項であるため、相続開始地を管轄する家庭裁判所に申立てをする必要があります。
遺言書による指定ではなく家庭裁判所によって選任された場合には、選任をした家庭裁判所が管轄裁判所になります。

遺言執行者から遺言執行者辞任許可審判の申立てがあると、家庭裁判所は、遺言執行者の辞任に正当な事由があるかどうかを調査して、申立ての可否を判断します。

家庭裁判所が辞任に正当な事由があると判断して辞任を認める許可をした場合には、直ちに効力が生じ、遺言執行者はその地位を失うことになります。

家庭裁判所が辞任を認めない決定をした場合には即時抗告をすることができますが、遺言執行者はその間も引き続き職務を遂行する必要があります。

(2) 辞任後の手続き

家庭裁判所によって遺言執行者辞任の許可が出れば、遺言執行者としての地位は失われますが、それで終了というわけではありません。

家庭裁判所によって辞任の許可が出た後は、以下のような手続きをする必要があります。

①辞任の通知

遺言執行者は、辞任による任務の終了を相続人および受遺者が知っているか、または相続人および受遺者に通知したときでなければ、辞任したことを主張することはできません(民法1020条、655条)。
そのため、遺言執行者は、辞任した旨を遺言者の相続人および受遺者に通知することになります。

相続人および受遺者に対して通知をする際には、家庭裁判所の辞任許可審判謄本を添付するとよいでしょう。

②保管、管理物の引渡し

遺言執行者の辞任が認められると相続財産の管理処分権は、遺言執行者から相続人に移ることになります。

そのため、遺言執行にあたって、遺言執行者が保管、管理している物がある場合には、速やかに相続人に引き渡さなければなりません。

③遺言執行の顛末報告

遺言執行者は、辞任によって遺言執行の任務が終了した後は、遅滞なくその経過および結果を相続人に報告しなければなりません(民法1012条3項、645条)。

相続人および受遺者に対して辞任の通知をする際に一緒に顛末報告も記載すると良いでしょう。

4.遺言執行者が辞任した場合の報酬

遺言執行者の報酬は、遺言で定められたときにはそれに従い、遺言に定めがなければ家庭裁判所の審判で定めることができます(民法1018条1項)。
家庭裁判所では、相続財産の状況やその他の事情を踏まえて遺言執行者の報酬を決めることになります。

では、遺言執行者が辞任した場合には、その間の遺言執行業務に関する報酬を請求することができるのでしょうか。

遺言執行者の報酬については、民法648条3項の準用がありますので(民法1012条3項)、遺言執行者が辞任したとしても既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができます。

遺言執行者がある程度遺言執行を終えた時点で辞任することになり、遺言執行者の責めに帰することができない事由によって遺言執行者が辞任をすることになった場合には、その程度に応じた報酬を受領できる可能性があります。

報酬を請求する場合には、まずは、相続人に対して請求をして、話し合いを進めます。話し合いで解決することができない場合には、家庭裁判所に報酬請求をすると良いでしょう。

5.遺言執行者は弁護士がなることも可能!

遺言執行者への就任を承諾した場合には、その後は正当な事由がなければ遺言執行者を辞任することはできません

しかし、民法改正によって、遺言執行者としての職務を第三者に委任することが容易になりました。
辞任をする正当な事由がない場合であって、自ら遺言執行業務を行うことが難しくなったという場合には、弁護士などの専門家に依頼して遺言執行業務を行ってもらうというのも一つの方法です。

[参考記事] 遺言執行者は誰がなれるの?弁護士・弁護士法人ではどちらがいい?
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