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生前贈与

相続に備えて生前贈与を行うメリット・デメリット

110万円までの生前贈与なら、基礎控除により贈与税が非課税となることをご存知の方は多いと思います。
しかし、生前贈与を正しく理解して、効果的に生前贈与を行っている方は少ないのではないでしょうか?

そこで、この記事では「生前贈与」に焦点を当てて、生前贈与と相続の違いや生前贈与のメリットとデメリットなどについて説明します。

1.生前贈与とは|生前贈与と相続の違い

生前贈与を理解するには、「相続」と比較するのが近道です。
生前贈与も相続も、財産を無償で他人に譲り渡す方法ですが、両者には大きな違いがあります。

ここでは、生前贈与と相続を比較しながら生前贈与について考えてみましょう。

(1) 生前贈与とは

生前贈与」とは、「贈与契約」を結んで、贈与者が生存している間に財産を譲り渡す(贈与する)ことです。

贈与契約とは、「贈与する側(贈与者)が、財産を無償で譲り渡すことを伝え、贈与される側(受贈者)が、財産をもらうことを承諾する」ことで成立する契約です。

(2) 相続とは

相続」とは、財産(及び負債)を有する人(被相続人)が亡くなったことにより、被相続人の財産(及び負債)を、相続人が譲り受けることを言います。

(3) 生前贈与と相続の違い

発生のタイミング

生前贈与は、文字通り、贈与者の生前に財産の譲り渡しを行います。

一方、相続は、被相続人の死亡により、相続人が負債も含む財産を承継します。

双方の合意の要否

生前贈与には、贈与者と受贈者の双方の合意が必要です。
この合意は、文書による合意でも、口頭でも有効です。

一方、相続には、合意の必要はありません。被相続人、相続人双方の意思に関係なく発生します。

財産を譲り渡す相手

生前贈与は、受贈者を自由に選ぶことができます。

一方、相続は、財産を譲り渡す相手を自由に選ぶことはできず、法律により相続人(法定相続人)が決まっています。被相続人は、遺言等による被相続人の意思がない限り、法定相続人以外の者に、財産を承継させることはできません。

税金の課税対象者

贈与は、受贈者が「贈与税」を受ける対象となります。
一方で、相続は、相続人が「相続税」を受ける対象になります。

2.相続と比較した生前贈与のメリット

ここでは、相続と比較したときの生前贈与のメリットについて見ていきます。

(1) 暦年贈与による相続税の節税効果

相続税の節税対策にはいろいろな方法がありますが、主として、相続税の「課税遺産総額を減らす」ことが目的となります。

暦年贈与の贈与税

暦年(1月1日~12月31日)ごとに贈与を行って贈与税を支払う制度を「暦年贈与」といいます。贈与税の申告期限は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までとなっています。暦年贈与によって、「課税遺産総額を減らす」ことが相続税の節税となります。

贈与税は、以下の額についてかかります。

1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額

贈与税は、誰から贈与を受けたかに関わらず、受贈者が受けた贈与の合計額により計算されます。受贈者が受け取った贈与財産の合計額が基礎控除額以内、つまり、年間110万円までであれば、贈与税は非課税となります。

贈与税率は、贈与額が多くなるほど税率が高くなり、税率は10〜55%です。

なお、贈与税の計算方法について詳しくは、次の記事を是非、ご一読ください。

[参考記事] 生前贈与と税金|贈与税の計算と控除を活用した節税対策

相続税

各種控除などを差し引いて算出した「課税遺産総額」をもとにして、相続税が課税されます。

相続税も、課税遺産総額が多くなればなるほど税率が高くなり、税率は10〜55%です。

なお、相続税の計算方法については、次の記事をご一読ください。

具体例で分かりやすい相続税の計算方法と税理士に相談するメリット

暦年贈与による相続税の節税効果

例えば、各種控除後の相続税の課税遺産総額が1憶2,000万円の場合、贈与者の子ども3人に10年間生前贈与を行えば、贈与総額3,300万円が課税遺産総額から減ることで、課税遺産総額は8,700万円となり、確実に課税遺産総額を抑えることができ、延いては相続税の節税となります。

(2) 財産を譲り渡すタイミングが自由

生前贈与では、贈与者と受贈者で贈与のタイミングを自由に決めることができます。この贈与のタイミングを利用することで、節税効果があります。

贈与税の評価のタイミングは、贈与時点の評価額です。これに対して、相続税の評価のタイミングは、被相続人が死亡した時点の評価です。

例えば、相続時に値上がりが見込める「株式・投資信託」や「不動産」などを、相続を待たずに生前贈与することで、節税効果が見込めるわけです。

一方、相続は、被相続人の死亡によって自動的に発生するため、こういった節税対策をすることはできません。

(3) 世代を飛ばして孫に財産を移転させることが可能

例えば、相続により配偶者とその子どもに被相続人の財産が移転すると、相続税の課税対象となります。その後、配偶者や子どもに相続が発生すると、配偶者・子どもに移転した財産には、配偶者・子どもの財産とともに、更に相続税が発生します。

こうして世代が下り相続が起きるたびに、被相続人の財産には、2重、3重に相続税がかかることになります。

なるべく下の代に直接財産を移転できれば、相続税の負担が少なくなることになります。

生前贈与であれば、世代を飛ばして、孫や、場合によっては、ひ孫に直接財産を移転させることができるため、相続税の節税効果があるのです。

(4) 相続税にはない様々な特例で節税可能

贈与には、相続税にはない様々な「特例」があり、その特例を活用することによっても節税が可能です。

主なものは、下記の通りです。

  • 贈与税の配偶者控除
  • 住宅取得等資金の贈与税の特例(適用期限2021年12月31日まで※)
  • 教育資金の一括贈与(適用期限2023年3月31日まで)
  • 結婚・子育て資金の一括贈与(適用期限2023年3月31日まで)
  • 相続時精算課税

それぞれの特例には適用要件がありますので、その要件をクリアしないと活用することはできません。また、特例には、適用に期限が設けられているものがあるので、注意が必要です。

特例の詳細については次の記事をご覧ください。

[参考記事] 生前贈与と税金|贈与税の計算と控除を活用した節税対策

※ただし、2022年度の「税制改正大綱」では、この制度が2023 年 12月31日まで2年延長されることになり、法案として取りまとめられた後、年明けの通常国会に提出されます。

(5) 賃貸物件の生前贈与は相続税対策に

被相続人が賃貸物件などを所有している場合は、相続時に、家賃収入も評価額に算入されるため、家賃収入分が上乗せされて課税対象となります。

一方で、賃貸物件を生前贈与しておけば、贈与後の家賃収入は、受遺者の財産となります。被相続人が亡くなるまでの家賃収入分を節税することが可能になり、その分が受益者の利益になるのです。

3.相続と比較した生前贈与のデメリット

ここでは、生前贈与のデメリットについて説明します。

(1) 生前贈与で不動産を取得すると税制面で不利

相続、生前贈与で不動産を取得すると、取得した者に対して次の税金がかかります。

税金の種類 相続 生前贈与
登録免許税 法定相続⼈ 0.4% 2.0%
不動産取得税 法定相続⼈ ⾮課税 ⼀律4.0%
(令和6年3月31日までは3.0%)

ご覧の通り、不動産に関する税金については、生前贈与より相続のほうが優遇されています。

(2) 取得費加算の特例の適用がない生前贈与

相続により取得した財産(土地、建物、株式など)を一定期間内に譲渡する場合、その相続で納税した相続税額のうち、一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。

これを「取得費加算の特例」といいます。

例えば、被相続人の実家を相続により取得し相続税を納めた相続人が、その土地・建物を相続税の申告期限から3年以内に売却して売却益が出た場合には、所得税の軽減が可能になります。

生前贈与で取得した財産については、この特例は適用できません。

(3) 相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税対象

相続が発生した場合、その前3年以内に行われた生前贈与については、相続税の対象になります。
この制度は、相続税回避対策のために、死亡直前に駆け込みで贈与を行うことを防止するために設けられています。

つまり、生前贈与を行った後に贈与者が3年以上生存しないと、「贈与時点の評価額」を相続財産に加算されて、相続税がかかってしまいます。

仮に、贈与額が控除金額110万円以内であっても、相続財産の加算対象になります。

4.生前贈与を行うためのポイント

生前贈与を効果的に行うためには、いくつか注意すべきポイントがあります。
ここでは、生前贈与を行う時のポイントについてご説明します。

(1) 計画的になるべく早く開始する

生前贈与はなるべく早めに開始したほうがいいでしょう。

贈与の基礎控除額は、110万円です。まとまった財産を子どもなどに移転したい場合は、計画的に、長期的に行う必要があるのです。

万が一にも、計画した生前贈与の途中で贈与者が死亡してしまうと、死亡前の3年間の生前贈与額が相続財産に含まれてしまい、相続税が課税されることになります。

生前贈与は、なるべく早く、計画的に開始しましょう。

(2) 税務調査対策をする

相続の際に、税務署が少しでも疑念を抱くと、税務調査が入ります。

税務調査の際に、特に念入りに調査されるのが「名義預金」です。

子どもや孫名義の口座であっても、被相続人がその通帳や印鑑を管理していた場合、その口座は被相続人の財産とみなされてしまいます
このような預金のことを「名義預金」いいます。

生前贈与がこのような名義預金と判断されないためには、次のような証拠を残しておくことが重要です。

  • 正しく贈与を行ったことが分かる「贈与契約書」を作成する
  • 子どもや孫が管理している銀行口座に振り込む

5.まとめ

今回は、相続に備えて生前贈与を行うメリットやデメリットについて見てきました。

平成27年施行の相続税法改正により、相続税の基礎控除額が引き下げになったために、相続税納付の対象になる方が増えています。
相続税納付の対象となる財産を持っている方は、節税対策について悩んでいらっしゃるのではないでしょうか?

「生前贈与の活用」は、相続税の節税対策の一つです。
贈与税の基礎控除を活用して生前贈与を行うことで、相続税の課税対象となる財産を減少させ、相続税の節税対策になります。

具体的にどのように生前贈与を行えばよいか、また、暦年贈与以外の節税対策を行うにはどうすればよいかなど、贈与や相続について相談したい場合は、信頼できる税理士に声をかけてみるのが一番です。

泉総合法律事務所では、相続税や贈与税に詳しい税理士をご紹介することもできます。是非、ご相談ください。

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