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遺言書

包括受遺者とは?相続人との違い・登記・相続税等をわかりやすく解説

遺産分割協議には、相続人に加えて「包括受遺者」と呼ばれる人も参加します。

「包括受遺者」という言葉にはあまりなじみがない方が多いかと思いますが、遺言書があるケースでは包括受遺者の取り扱いがよく問題になるので、法律上の位置づけや相続人との違いを理解しておきましょう。

この記事では「包括受遺者」について、相続人との違い・登記・相続税などをわかりやすく解説します。

1.包括受遺者とは?

包括受遺者とは、被相続人から「割合的に」「遺贈」を受けた人を意味します。

(1) 遺贈とは

まず「遺贈」とは、遺言による贈与をいいます。

つまり、被相続人が誰かに対して遺産を譲り渡す旨を遺言書の中に記載していれば、それが「遺贈」ということになります。
そして、遺贈を受ける人のことを「受遺者」といいます。

(2) 割合的とは

次に「割合的」な遺贈とは、たとえば、「Aに対して、遺産の3分の1を与える」「Bに対して、すべての遺産を与える」などのように、遺産を特定せずに割合を指定して遺贈を行うことをいいます。

このような「割合的」な遺贈を「包括遺贈」といい、包括遺贈を受けた人を「包括受遺者」といいます。

なお、「Cに対して、不動産Xを遺贈する」などのように、遺産を特定して行われる遺贈を「特定遺贈」といい、特定遺贈を受けた人を「特定受遺者」といいます。

2.包括受遺者の種類について

包括受遺者には、包括遺贈の内容によって以下の4つのパターンがあるとされています。

(1) 全部包括受遺者

全部包括受遺者」とは、債務などの消極財産を含めて、すべての遺産について包括遺贈を受けた者をいいます。

(例)
「遺言者は、Aに対して遺言者の有するすべての遺産を遺贈する」
→Aが全部包括受遺者

(2) 割合的包括受遺者

割合的包括受遺者」とは、全財産の割合的な一部について包括遺贈を受けた者をいいます。

(例)
「遺言者は、遺言者の有するすべての遺産のうち、5分の3をAに、5分の2をBに遺贈する」
→AとBが割合的包括受遺者

(3) 特定財産を除いた財産についての包括受遺者

「特定財産を除いた財産についての包括受遺者」とは、特定遺贈の対象となっている一部の遺産を除いて、残りの遺産について包括遺贈を受けた者をいいます。

(例)
「遺言者は、遺言者の有するすべての遺産のうち、不動産XをAに、その余をBに遺贈する」
→Bが特定財産を除いた財産についての包括受遺者

(4) 清算型包括受遺者

「清算型包括受遺者」とは、遺産を処分した代金の分配を割合的に受ける者をいいます。

(例)
「遺言者は、遺言者が有する不動産Xの処分代金のうち、3分の2をAに、3分の1をBに遺贈する」
→AとBが清算型包括受遺者

3.包括受遺者が相続人と異なる点

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされています(民法990条)。

したがって包括受遺者は、相続人と同様に遺産分割協議に参加する必要があるほか、遺産分割の多くの場面において、相続人と同等な存在として扱われます。

ただし、以下の各点については、相続人に認められている権利が包括受遺者には認められないなどの違いがある点に注意が必要です。

(1) 法人も包括受遺者になることができる

相続人たる資格は、被相続人との親族関係に基づいて得られるものなので、相続人になることができるのは自然人(個人)に限られます。

これに対して遺贈は、個人・法人のいずれに対しても行うことができるので、法人も包括受遺者になることができます。

(2) 特別受益や寄与分が認められない

相続人については、生前の被相続人から優遇を受けた場合には、相続に対する期待に関して相続人間の公平を図るため、「特別受益」(民法903条1項)および「寄与分」(民法904条の2第1項)が認められています。

これに対して包括受遺者の場合、遺贈については被相続人の意思を尊重すべきであり、また、相続人間の公平を図るという趣旨が包括受遺者には妥当しません。

そのため、包括受遺者に対しては、特別受益および寄与分が適用されることはありません。

[参考記事] 特別受益とは?対象範囲・遺産分割時の対処法をわかりやすく解説 [参考記事] 寄与分とは|対象になる人や認められる要件を解説

(3) 遺留分が認められない

兄弟姉妹以外の法定相続人には、相続に対する期待を一定の限度で保護するため、相続できる遺産の最低保障額である「遺留分」が認められています(民法1042条1項)。

これに対して包括受遺者の場合、遺言によってはじめて遺産を相続できることがわかる立場にあるため、相続に対する期待を保護するという遺留分制度の趣旨が妥当しません。

そのため包括受遺者には、遺留分が認められていません。

遺留分とは [参考記事] 遺留分とは|概要と遺留分割合をわかりやすく解説

(4) 代襲相続は認められない

被相続人の子および兄弟姉妹については、被相続人の生前に死亡・欠格事由・廃除によって相続権を失った場合、さらにその子が代わりに相続権を獲得する「代襲相続」が認められています(民法887条2項、889条2項)。

代襲相続が認められている趣旨は、代襲相続人の持つ将来の相続に対する期待を保護することにあると解されています。

しかし包括受遺者の場合、包括受遺者自身に相続に対する合理的な期待が認められないのですから、当然その子についても、将来の相続に対する合理的な期待は認められません。

したがって、包括受遺者の子が包括受遺者を代襲相続することはできず、受遺者が被相続人の死亡以前に死亡した場合には、遺贈は無効になります(民法994条1項)。

[参考記事] 代襲相続とは?相続人の範囲・相続分の割合などを解説

(5) 賃借権の承継時には賃貸人の承諾が必要

被相続人が賃貸借契約上の賃借人であった場合、賃借権も相続の対象となります。

民法上、賃借権を譲渡する際には、賃貸人の承諾が必要とされています(民法612条1項)。

しかし、相続人が賃借権を相続する場合には、取引行為ではなく「包括承継」によることから、賃借権の「譲渡」に該当せず、賃貸人の承諾は不要と解されています。

これに対して、包括受遺者が遺贈により賃借権を取得する場合には、取引行為に準じて賃借権の「譲渡」として取り扱い、賃貸人の承諾を必要と解するのが一般的です。

(6) 承継分を第三者に対抗するには登記などが必要

法定相続人の場合、法定相続分に対応する権利については、登記などの対抗要件を備えずとも、当然に第三者に対抗できるものとされています(民法899条の2第1項)。

これに対して包括受遺者の場合は、法定相続人とは異なり、遺贈の対象となっている権利の全体について、第三者に対抗するためには登記などの対抗要件が必要となります。

(7) 承継分の登記は共同申請が必要

相続人は、遺産分割協議によって不動産を単独で相続することが決まった場合、遺産分割協議書などの添付書類を持参すれば、単独で所有権移転登記を申請することができます。

これに対して包括受遺者の場合、不動産を単独で承継することが決まった場合でも、単独で所有権移転登記手続きを行うことは認められません。

包括受遺者が承継する不動産についての所有権移転登記の申請は、遺言執行者がいれば遺言執行者、いなければ法定相続人全員と共同で行う必要があります。

4.包括受遺者に課税される相続税について

包括受遺者が遺産を承継する場合にも、相続人と同様に、相続税を納付する義務を負います(相続税法1条の3第1項1号~4号)。

(1) 相続税計算の基本的な考え方

相続人が承継する遺産に対して課される相続税は、まず全相続人に対して課税される総額を計算した後、その総額を実際の承継割合に応じて各相続人に割り付けることになります。

これは、遺産の承継者に包括受遺者が含まれている場合も同様です。

(例)
・相続税の総額が1000万円
・相続人Aが7割、相続人Bが2割、包括受遺者Cが1割の遺産を取得

→相続税額はAが700万円、Bが200万円、Cが100万円

なお、相続税の総額は、遺産総額から各種控除(基礎控除など)を差し引いた後、控除後の金額を相続税の税率表に当てはめて計算します。
相続税計算

(2) 一親等の血族等・配偶者以外の場合、相続税が2割加算される

包括受遺者が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含む)および配偶者以外の者である場合には、上記の考え方に従って計算された金額に、さらに20%を加算した金額を相続税として納付しなければなりません(相続税法18条1項)。

一親等の血族(代襲相続人を含む)および配偶者以外の者に対して、相続税の課税が加重されている理由は、以下の2点と解されています。

  • 一親等の血族(代襲相続人を含む)および配偶者以外の者への遺産承継は、偶然性が高いと考えられること
  • 孫などに対する遺贈が行われるなど、相続税課税の回数が減る場合があること

前の項目で挙げた例では、包括受遺者Cに対して課税される相続税は100万円でした。

しかし、Cが被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含む)または配偶者のどちらでもない場合には、Cに対して課税される相続税は120万円となります。

5.まとめ

包括受遺者が関係する相続では、遺産分割協議に包括受遺者を必ず含めなければなりません。

包括受遺者は、原則として相続人と同一の権利義務を有しますが、特別受益・寄与分・遺留分・対抗要件・登記手続き・相続税など、さまざまな点で相続人と異なる取り扱いがなされます。

そのため、包括受遺者が関係する遺産相続の場合、包括受遺者と相続人の違いについて、遺産分割への対応時に正確に把握しておくことが大切です。

もしご自身が包括受遺者となった場合や、第三者が遺言によって包括受遺者として指定された場合で、遺産分割につきお悩みがございましたらお早めに泉総合法律事務所までご相談ください。

遺言書の内容や遺産の全体像を踏まえて、ご状況に合わせたアドバイスを差し上げます。

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