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家族信託

家族信託の契約書の内容と具体例

家族信託は、委託者に万一のことがあっても、長期間に渡って合意事項が守られなければなりません。

家族信託の契約書については、後々の予期せぬトラブルを防ぐためにしっかりと書面にしておくことが重要です。

今回は、家族信託契約書の書き方についてサンプルを挙げながら解説します。

1.家族信託の契約書について

家族信託契約書は、家族信託の目的を果たすために、将来に起こりうる事態を予測してしっかりと作りこむ必要があります。

どのような点に気を付けながら作成したら良いのでしょうか。まずはそのポイントを解説します。

(1) 家族信託契約書の作成のポイント

家族信託契約書のポイントは次の2つです。

  • 雛形は参考程度にする
  • 契約書をできだけ公正証書化する

家族信託が注目されるにつれて、書籍やインターネット上には多くの雛形が出回るようになっています。個人でも家族信託契約書を作成することができるため便利ではありますが、住所氏名や信託財産名を単に当てはめるだけでは、委託者の意思が十分に反映されない可能性があります。

家族信託の契約内容は1つとして同じものはありません。それぞれの目的に合わせて柔軟に作成する必要があります。

また、家族信託契約書は長期に渡る契約になるため、できるだけ公正証書で作成しましょう。

公正証書は法務局に所属する公証人が作成するもので、家族信託契約書についての解釈や適用について後からトラブルが起こることを防止することができます。

また、原本が公証人役場に保管されるため、偽造や改ざん、紛失の心配がありません。

[参考記事] 家族信託契約を公正証書化するメリット・デメリット

(2) 家族信託契約書の必須項目

家族信託契約書の内容は、それぞれどのような信託内容にしたいのかで大きく変わります。
しかし、次の項目については信託内容の根幹であるため、必ず記載します。

契約の趣旨

この契約書が信託契約であることが分かるように、信託スキームを大まかに記載します。

契約の目的

なぜこの信託契約を結ぶのか、委託者の目的を記載します。

また、委託者の氏名・受託者の氏名・受益者の氏名など、当事者が特定できるようにします。

信託の対象となる財産

受託者に信託する財産を列記します。その財産が特定できるように、例えば不動産の場合には登記情報通りに記載します。

(3) 家族信託の任意項目

家族信託は信託内容に常に従うため、信託期間中に問題が起こったとしても、その対応について記載があれば当事者はそれに従うだけで済みます。

個々の状況に応じた契約書にするために、必須項目だけを記載するのではなく、次の項目も記載しましょう。

  • 受益者が亡くなったときに財産を承継する人
  • 受託者が辞任する際の手続き、次の受託者決定手続き
  • 受益者の判断能力が無くなった場合でも契約内容を変更できるように、受益者代理の指定や、受託者の独断での変更権限を与える など

2.家族信託の契約書の書き方

それでは家族信託契約書の書き方を、具体的な雛形を例にして解説します。

(1) 家族信託契約書の雛形

まず必須事項部分の雛形です。これ以降に個々の信託内容に合わせた任意事項が入ります。

信託契約書

委託者信託太郎及び受託者信託二郎は、本日、以下のとおり信託契約を締結する。(以下、「本契約」という。)

第1条 (契約の趣旨)
委託者信託太郎は、受託者信託二郎に対し、次条記載の信託の目的を達成するため、第3条記載の財産を本件信託財産として管理・運用・処分することを信託し、受託者信託二郎はこれを引き受けた。(以下、「本件信託」という。)

第2条 (契約の目的)
本契約の信託目的は、以下のとおりである。

受託者が本件信託財産を管理・運用・処分等することにより
(1) 受益者の生活・介護・療養・納税等に必要な資金給付などをして、受益者の安定した生活をはかること。
(2) 資産の円滑に承継すること。

第3条 (信託財産)
本件信託にかかる信託財産は、以下のものとする。

⑴ 別紙信託財産目録1記載の自宅不動産(以下「本件信託不動産」という。)
⑵ 現金1,000万円(以下、「本件信託金融資産」という。)

第4条(委託者)
本件信託の委託者は、次の者である。
住所    東京都品川区○○
氏名    信託太郎
生年月日  昭和20年6月13日

第5条(受託者)
本件信託の受託者は、次の者とする。
住所    千葉県浦安市○○
氏名    信託二郎(信託太郎の長男)
生年月日  昭和45年9月10日

第6条(受益者)
本件信託の当初受益者は、委託者である信託太郎とする。

(2) 認知症対策の契約書文例

契約書に、委託者の自宅の処分まで受託者が行えるように記載しておくことや、信託内容の変更が委託者なしでもできるように記載しておくことで、委託者が認知症になったときなどに対応することができ、安心です。

第7条(信託の内容)
受託者は、本件信託財産の管理運用を行う。
本件信託不動産について、受託者が必要であると認めるときは、これを第三者に賃貸し、あるいは売却等の換価処分するものとする。

第8条(信託の変更)
受託者および受益者両者の合意により、本件信託の内容の変更をすることができる。
ただし、受益者が認知症等により意思判断能力が低下している場合には、受託者のみの判断により変更することができる。

(3) 2世代以上先の財産承継を指定したい場合

遺言書では自身の財産承継しか指定することができませんが、家族信託では契約書に2世代、3世代以上先の相続まで指定することができます。

そのためには、その承継先を明記しておく必要があります。

第6条(受益者)
⑴ 本件信託の当初受益者は、委託者である信託太郎とする。
⑵ 当初受益者信託太郎が死亡した場合、信託二郎が第二次受益者として受益権を承継取得する。
⑶ 第二受益者信託二郎が死亡した場合、次の者が第三次受益者として受益権を承継取得する。
住所    千葉県浦安市○○
氏名    信託花子(信託太郎の孫、信託二郎の長女)
生年月日  平成元年1月5日

(4) 不動産共有対策の契約書文例

不動産を信託財産として家族信託を設定する場合、本来共有名義人となる共同相続人全員を受益者にすることで、共有名義で相続したのと同様な効果を得ることができるうえに、共有名義での相続特有の問題を解決することができます。

また、前項と同様に、第二受益者以降の指定も可能です。

受益者が複数名の場合は、契約書にそれぞれの受益者の受益権割合を定めておき、必要があれば、第二受益者以降を記載するようにしましょう。

第6条(受益者)
⑴ 本件信託の当初受益者は、委託者である信託太郎とする。
⑵ 当初受益者信託太郎が死亡した場合、次の3名が第二次受益者として受益権を承継取得する。

住所    千葉県浦安市○○
氏名    信託二郎(信託太郎の長男)
生年月日  昭和45年9月10日

住所    東京都品川区○○
氏名    信託三郎(信託太郎の次男)
生年月日  昭和47年10月31日

住所    埼玉県さいたま市○○
氏名    信託信子(信託太郎の長女)
生年月日  昭和50年6月5日

上記3名の受益権の割合は、3分の1ずつとする。

[参考記事] 家族信託で共有名義対策ができる

(5) 事業承継をスムーズにするための文例

自社株式を信託財産とする家族信託を行えば、後継者が確定するまでは受託者に自社株式を管理させることができ、段階的に事業承継を行うことができます。

家族信託契約書には、事業承継が目的であること、委託者死亡後も受託者が管理し、後継者を見定めてから自社株式を帰属させることなどを明記します。

第1条 (契約の趣旨)
委託者信託太郎と受託者信託二郎は、事業承継を目的とする信託契約を締結する。(以下、「本件信託」という。)

第2条 (契約の目的)
本契約の信託目的は、信託太郎が保有する自社株式について、将来認知症等によって意思判断能力を喪失した後も、信託二郎に適正に管理させ、信託太郎死亡後に確定した後継者に最終帰属させることで事業承継を全うすることとする。

第3条 (信託財産)
本件信託にかかる信託財産は、信託太郎が保有する別紙目録記載の自社株式500株とする。(以下、本件株式という。)

第7条 (議決権の行使)
信託二郎は信託太郎が意思判断能力を喪失するまでは、信託太郎の指示に従い、信託太郎が意思判断能力を喪失した後は、信託二郎の判断によって議決権を行使する。

第8条 (後継者の決定)
信託二郎は最も適当と判断した後継者を選定して信託株式を取得させる。

3.家族信託の契約書作成は誰がする?

ここまで読んで、家族信託契約書作成について「自分では難しそう」と思われた方も多いのではないでしょうか。

最後に、家族信託契約書は誰が作成すべきなのか解説します。

(1) 家族信託の契約書は自分で作成できる?

家族信託契約書はもちろん自分で作成することができます。インターネット上にある雛形を利用すれば、それなりのものは作成できるでしょう。

ただし、「(1) 家族信託契約書の作成のポイント」で「雛形は参考程度にする」と解説した通り、信託契約書は当事者の希望を反映させるための信託スキームを、法的表現へと適切に換言する必要があります。

それなりの家族信託契約書では、いざという時に役に立たず、トラブルになる可能性が高いです。

やはり家族信託契約書の作成は、民法・信託法に詳しく、税金や不動産実務までの知識がある弁護士が在籍している泉総合法律事務所にご相談して下さい。

専門家に依頼するメリットは、間違いのない家族信託契約書が作成できる点はもちろん、信託内容を設計する際にもアドバイスを受けられます。

実際に信託運用が始まってからも、その終了までサポートを受けることができるため、家族信託自体を円満に終えることができます。

[参考記事] 家族信託の手続き方法と流れ|自分でもできる?

家族信託は比較的新しい制度になるため、その経験が多い専門家はまだまだ少ないのが現状です。
依頼する専門家は、豊富な知識だけではなく、実績も重視して探しましょう。

(2) 専門家に依頼する際の費用

家族信託の内容によって異なりますが、30~100万円程度を見込んでおきましょう。
不動産がない場合には30~50万円程度、不動産がある場合には専門家の労力が増えるため、50~100万円程度となっています。

心配な場合には、見積もりを遠慮なく依頼しましょう。ただし前項で解説した通り、安ければよいというものでもないので注意しましょう。

4.まとめ

家族信託契約書は誰にでも手軽に作成できる反面、奥が深いものであることを解説しました。

トラブルの発生を未然に防ぐために、万が一トラブルが発生したとしても、すぐに適切な対処が取れるように、家族信託の利用にあたっては弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。

泉総合法律事務所では、家族信託について精通しておりますので是非一度ご相談ください。

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