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家族信託

家族信託と成年後見の違い|メリット・デメリットを比較

高齢者の方は、認知症などによって、財産の管理・処分を満足に行えなくなってしまうリスクがあります。

認知症が重症化した場合、成年後見の申立てを行うことで、成年後見人が代わりに財産管理を行えるようになることはご存知の方も多いでしょう。
それに加えて、近年では認知症が重症化する前の対策として「家族信託」が注目されています。

家族信託と成年後見は、いずれも認知症対策として有効になり得ますが、それぞれの制度内容には違いがあります。

ご自身やご家族の状況に合わせて、どちらを選択するか適切に判断してください。

この記事では、家族信託と成年後見の違いについて、両者のメリットやデメリットと併せて解説します。

1.家族信託とは?

家族信託とは、「受託者」が「受益者」のために財産を管理・運用・処分する「信託」という仕組みのうち、受託者が「受益者の家族・親族」であるものを総称していいます。

家族信託を設定する場合、「委託者」と「受託者」の間で信託契約を締結したうえで、「委託者」が「受託者」に対して財産を信託譲渡します。
「受託者」はそれ以降、信託譲渡を受けた財産について、「受益者」のために管理・運用・処分を行います。

認知症対策・相続対策として家族信託を用いる場合は、被相続人となる方が「委託者」となり、信頼できる親族を「受託者」として、財産の管理・運用・処分を任せることになります。

その際、「受益者」となるのは「委託者」本人でもよいですし、財産を譲り渡したい他の家族などでも構いません。

家族信託の詳しい内容については、以下をご参照ください。
家族信託

2.成年後見とは?

成年後見とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について、家庭裁判所の審判によって選任された「成年後見人」が、代わりに法律行為をする制度をいいます(民法7条)。

認知症などによって判断能力が低下した方(成年被後見人)は、財産の管理・運用・処分を適切に行うことができません。

そこで、合理的な財産上の判断ができる人が「成年後見人」となり、成年被後見人のために代わりに法律行為をすることを認めているのです。

3.家族信託と成年後見の主な違い

家族信託 成年後見
制度概要 信託契約に基づき、受託者が受益者のために、委託者財産の管理・運用・処分を行う 事理弁識能力を欠く常況にある成年被後見人のために、成年後見人が法律行為を代理する
財産管理者の選任方法 信託契約で定めるので、自由に選べる 家庭裁判所が選任する
財産管理者の権限内容 信託契約で定めることにより、自由に設計可能 民法で決まっている(代理権、被後見人の行為の取消権)
財産の所有者 受託者(ただし、受益者のために管理処分権を行使するを負う) 成年被後見人(本人)
開始時期 いつでも可(遺言により設定することも可) 本人が事理弁識能力を欠く常況となった後
身上監護権の有無 なし あり
ランニングコスト 信託契約で定める(無償も可) 裁判所が定める(月額2~6万円程度)
解消の可否 信託契約解除により可能 後見開始の審判の取消しが必要

家族信託と成年後見は、認知症対策・相続対策として活用できる点では共通していますが、その制度内容は様々な点で異なっています。

以下では上記の表に沿って、家族信託と成年後見の違いについて解説します。

(1) 財産管理者の選任方法

家族信託の財産管理者は「受託者」です。

受託者を誰にするかは、(受託者自身を含めた)信託契約の当事者の合意によって、自由に定めることができます。

一方、成年後見の財産管理者は「成年後見人」です。
成年後見人は、家庭裁判所の審判によって選任されるので、成年被後見人本人や家族などが自由に選ぶことはできません。

実際には、7~8割のケースで親族以外の第三者(弁護士など)が成年後見人として選任されています。

(2) 財産管理者の権限内容

家族信託の受託者が、財産の管理・運用・処分についてどのような権限を有するかは、信託契約の中で自由に定めることができます。

つまり、受託者の自由裁量を広く認めるか、それとも細かくルールを定めておくかは、信託契約の当事者の自由です。

これに対して、成年後見人の権限は、民法で画一的かつ詳細に定められています(民法853条以下)。

したがって、当事者が成年後見人の権限の範囲を広げたり、逆に狭くしたりすることはできません。

(3) 財産の所有者

家族信託では、財産が委託者から受託者へ「信託譲渡」され、財産の所有者は受託者となります。

ただし、受託者は信託財産を受益者のために管理・運用・処分する義務を負うので、実質的な信託財産の所有者は受益者といえるでしょう。

これに対して成年後見の場合、成年後見人はあくまでも代理権を有するにとどまり、財産の所有者は引き続き成年被後見人(本人)です。

(4) 開始時期

家族信託は、基本的に信託契約によって設定されます(信託法3条1号)。
契約自由の原則により、当事者は信託契約をいつ締結してもよいので、家族信託の開示時期は当事者の自由です。

また、家族信託は遺言によって設定することもできます(同条2号)。

一方、成年後見は、本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある」ことが開始要件とされています(民法7条)。

したがって、実際に判断能力の低下が生じていない段階では、成年後見を開始することはできません。

(5) 身上監護権の有無

身上監護権とは、認知症などで判断能力が低下した方の心身や生活状況に配慮して、生活面での面倒を見たり、療養などに関する法律行為をしたりする権限をいいます。

この点、家族信託の対象となるのは、信託財産に関する管理・運用・処分行為のみです。
したがって、家族信託の受託者には、受益者に対する身上監護権はありません。

これに対して、成年後見人には、「成年被後見人の生活、療養看護および財産の管理に関する事務」を行うことが明文上認められています(民法858条)。

また成年後見人は、成年被後見人に届いた郵便物を開封する権限も有しています(民法860条の3第1項)。

このような身上監護権が認められていることは、成年後見制度の大きな特徴といえるでしょう。

(6) ランニングコスト

家族信託の受託者が受け取る報酬は、信託契約によって定めることになります。
受託者が委託者や受益者の親族であることを考慮して、信託報酬を無償とするケースも多いです。

一方、成年後見人は、家庭裁判所に対して報酬付与の申立てをすることで、事務の内容に対応する報酬を受け取ることができます。

【参考】報酬付与の申立て|裁判所

親族以外の第三者が成年後見人となるケースが多いため、基本的には成年後見人に対する報酬は発生すると考えておいた方がよいでしょう。

なお、報酬額は財産規模や事務の内容などによって、おおむね月額2万円から6万円程度の範囲で決定されることが多いです。

(7) 解消の可否

家族信託は、信託契約を解除することによって解消できます。
当事者が合意すればいつでも信託契約を解除できるほか、信託契約上の解除事由に基づいて、当事者の一部により解除される場合もあります。

これに対して、成年後見を解消するためには、家庭裁判所に対する請求により、後見開始の審判の取消しを受けることが必要です(民法10条)。

後見開始の審判が取り消されるためには、本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」から脱却しなければなりません。

そのため現実的には、一度開始された成年後見を取り消して解消することは難しいでしょう。

4.家族信託のメリット・デメリット

家族信託は柔軟な制度であり、幅広い活用可能性を有するメリットがあります。

その一方で、受託者に身上監護権が認められないため、受益者が認知症などの場合は、成年後見(または任意後見)との併用も検討しましょう。

(1) 家族信託の主なメリット

家族信託は、受託者を自由に選べるうえ、受託者の権限範囲も自由に設定できます。

そのため、委託者の意思を財産の管理・運用・処分方法に細かく反映できる点が大きなメリットです。

また、家族信託の設計の自由度を活かして、幼い子ども(孫など)への財産承継や、不動産の円滑な相続にも活用できる可能性があります。

(2) 家族信託の主なデメリット

家族信託の場合、成年後見と異なり、受託者には受益者に対する身上監護権が認められていません。

身上監護権がない受託者は、たとえば医療機関や介護施設との診療契約・入居契約を、本人(受益者)の代わりに締結することができません。

このように、認知症対策という観点から捉えた場合、家族信託の受託者の権限は不十分となる可能性があります。

5.成年後見のメリット・デメリット

成年後見では、成年後見人の権限が幅広く認められているため、認知症が進行した方のサポートという観点からはメリットが大きい制度といえます。

その一方で、家族信託のような制度の柔軟性はない点や、ランニングコストがかかる点がデメリットです。

(1) 成年後見の主なメリット

成年後見人には、成年被後見人による法律行為について、包括的な代理権が認められています。

そのため、成年被後見人の身上監護に関する事項も含めて、広い範囲で成年後見人が成年被後見人をサポートできるメリットがあります。

(2) 成年後見の主なデメリット

成年後見制度の内容は民法で画一的に定められていて、成年後見人は被後見人の財産を「維持管理」する義務を負っています。

その義務内容からは「判断能力が低下した本人をサポートする」という点以外の活用可能性を見出すことは困難です。例えば、もう居住していない被後見人の自宅不動産売却についても、本人保護のため、少なくとも裁判所の許可が必要となる等の制限があります。

また、成年後見人として親族以外の第三者が選任された場合には、成年後見人報酬として年間数十万円のランニングコストが掛かり続けてしまいます。

前述のとおり、成年後見を途中でやめることは難しいので、長い目で見ると大きな費用負担になってしまうでしょう。

6.家族信託と成年後見の併用も有効!生前対策は弁護士に相談を

制度設計の柔軟性という長所を持つ「家族信託」と、制度内容は硬直的であるものの身上監護を含めた幅広いサポート範囲を持つ「成年後見」は、互いに長所・短所を補い合える可能性があります。

したがって、まずは家族信託を活用して、元気なうちに財産の管理・運用・処分に関する道筋を付けておき、認知症が深刻化したら成年後見も併用するという方針が有力でしょう。

家族信託は制度設計の自由度が高い反面、仕組みを適切に検討しなければ、生前対策として適切な効果を得ることができません。
特に、信託契約の内容を作りこむことは、家族信託による生前対策を成功させるための重要なポイントといえます。

家族信託による生前対策にご関心をお持ちの場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

依頼者様のご希望や、ご家族のご状況などに合わせて、適切な家族信託の設計案をご提案いたします。

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