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遺言書

作成した遺言を撤回することはできる?|撤回の方法や文例について

一度作成した遺言書であっても、遺言者の気持ちや状況の変化によって撤回することができます。

今回の記事では、この「遺言の撤回」に焦点を当てて解説していきます。

1.遺言書を撤回するには

前に記した遺言書のすべての内容や一部の内容は、遺言書の方式に則った遺言書を作成することで、いつでも撤回することができます(民法1022条)。

遺言書を作成する方式には、次の3つがあります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

遺言を撤回するには、必ずしも元の遺言と同じ方式で作成する必要はありません。ここに挙げたいずれの方式で作成しても構いません

例えば、自筆証書遺言を撤回するには、自筆証書遺言による撤回だけでなく、公正証書遺言による撤回・秘密証書遺言による撤回も可能です。

公正証書遺言であっても、自筆証書遺言や秘密証書遺言によって、撤回することもできます。

[参考記事] 遺言の種類について|各方式のメリット・デメリット

2.遺言を撤回するための文例

遺言は、「遺言を撤回する旨」を記した遺言を作成することで撤回します。

では、どのような文章を遺言に記載すれば遺言を撤回できるのでしょうか。
遺言書を撤回する時に記載すべき文例をご紹介します。

(1) 以前作成した遺言書すべてを撤回する文例

前の遺言書すべてを撤回したいときには、「遺言をすべて撤回する」という内容の条項を遺言書に記載します。

下記は自筆証書遺言の文例ですが、公正証書遺言や秘密証書遺言の場合も、基本的には同じです。

2021年5月1日付の自筆証書遺言をすべて撤回する。

(2) 以前作成した遺言書の一部を撤回する文例

遺言書の一部を撤回する場合は、次のように記載します。

  • 撤回する内容を明示し、撤回後の内容を記載する
  • それ以外の内容に関しては、従来の内容を維持する旨を記載する

下記は自筆証書遺言の文例ですが、公正証書遺言や秘密証書遺言の場合も、基本的には同じように記載することができます。

2021年5月1日付の自筆証書遺言の中の、第xx条の「別紙に記載の土地XをAに相続させる」とする部分を撤回し、「別紙に記載の土地XをBに相続させる」と改める。
その余の部分は、すべて上記自筆証書遺言に記載のとおりとする。

3.遺言の撤回が擬制されるケース

前節で見てきましたように「遺言書をすべて撤回する」や「遺言書の中の土地XをAに相続させる部分を撤回し、Bに相続させる」旨を記載することにより、遺言書を撤回することができます。

しかし、このように「遺言書を撤回する」と明記されていなくても、遺言書を撤回したものとみなすケースがあります(「遺言書が撤回されたものとみなされる」ことは、「撤回の擬制」と呼ばれています)。

(1) 前の遺言書と後の遺言書が抵触する

民法1023条1項は、前と後の遺言書に矛盾した箇所がある場合は、前の遺言書の該当部分は、後に作られた遺言書により撤回されたものとみなすとしています。

例えば、「自宅不動産XをAに相続させる」という遺言書を作成し、その後「自宅不動産XをBに相続させる」と記載した遺言書を作成したとします。

後から作成された遺言書には、「撤回」という文言すらありませんが、先に作った「自宅不動産XをAに相続させる」と書かれた箇所は撤回されたものとみなされます。
これは、遺言者の意思を尊重すれば、そのように解釈するのが自然であると考えられるからです。

(2) 遺言書と抵触する法律行為をした

遺言書作成後に、その遺言に抵触する法律行為を行った場合には、その抵触する部分が撤回されたものとみなされます(同法1023条2項)。

たとえば、「自宅不動産XをAに相続させる」という遺言書を作成していて、生前にその自宅不動産Xを第三者に売却したような場合です。
この場合は、「自宅不動産XをAに相続させる」という部分の遺言書は撤回されたものとみなされます。

一方、「自宅不動産Xを妻Cに相続させる」という遺言書を作成した後に、妻Cと離婚するという「法律行為」をした場合はどうなるのでしょうか?

この場合は、「妻Cとの離婚」が必ずしも遺言に抵触するとは限らず、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言作成当時の遺言者の真意を探究していく必要があるとされています。

(3) 遺言者遺言書を故意に破棄した

民法1024条前段は、以下のように定められており、前段がこの「故意に破棄した」ケースに該当します。

「遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。」

遺言者が故意に遺言書自体を破棄した場合には、民法1024条により破棄した部分の遺言は撤回されたものとみなされます。したがって、遺言者が故意にすべての遺言書を破棄した場合は、すべての遺言について撤回したものとみなされます。

ただし、公正証書遺言は、遺言者の手元にある公正証書遺言を破棄しても遺言書を撤回したことにはならないとされています。

遺言者の手元にある公正証書遺言を破棄しても、公正証書遺言の原本が公証役場に保存されているためです。

(4) 遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した

遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、遺言書の破棄が擬制されます(同法1024条後段)。

たとえば、「車XをAに相続させる」という遺言書を作成していて、車Xを廃車にしたような場合です。この場合は、「車XをAに相続させる」という遺言の部分は撤回されたものとみなされます。考えてみれば、当然のことといえます。

【撤回が擬制された部分以外の条項は原則存続】
「遺言の撤回が擬制されるケース」に該当して遺言の一部が撤回されたとみなされても、原則、他の遺言の条項はそのまま存続します。

4.遺言を撤回する際のポイント

では、遺言を撤回する場合のポイントについてご紹介します。

(1) 公正証書遺言で遺言書の撤回を行う

前述した通り、遺言は3つの方式のいずれによっても撤回することができます。

しかし、それぞれの遺言には形式的な要件が定められており、それらの要件の一部でも満たされていないと遺言自体が無効になり、遺言の撤回ができないリスクがあります。

もっとも、公正証書遺言の場合は、公証人が遺言の形式的要件を確認しますので、形式的な不備で撤回が無効となることはまずありません。
そのため、遺言の撤回は公正証書遺言の方式によるのが確実です。

ただし、公証役場に行く余裕などがない場合には、その他の方式でもできますので、柔軟に考えていくのがいいでしょう。

公正証書遺言 [参考記事] 公正証書遺言とは|メリット・デメリットや作成の流れ、費用

(2) 遺言の撤回権の放棄はできない

遺言者が持っている「遺言を撤回することができる権利」は放棄することができないと定められています。

そのため、遺言者には、死亡する直前まで、いつ何時でも、自由に遺言を撤回する権利があります。

(3) 一度撤回した遺言は復活しない

遺言を一度撤回すると、原則、「撤回した遺言をさらに撤回する」ということはできません。したがって、撤回された元の遺言が効力を回復することはありません。(同法1025条本文)

例えば、次のような場合です。

最初の遺言で「自宅不動産XをAに相続させる」旨を記載し、第2の遺言で「第1遺言の全部を撤回し、自宅不動産XをBに相続させる」としたとします(最初の撤回)。
その後、第3の遺言で「第2の遺言の全部を撤回する」と記した場合でも(撤回の撤回)、原則として「自宅不動産XをAに相続させる」の部分を含め、最初の遺言は有効にならないということです。

ただし、最初の遺言書を復活させるという遺言者の意思が明確であれば、裁判所は最初の遺言書の効力を復活させるケースもあります。

遺言は、遺言者の意思によってつくられるものなので、やはりこの場面でも、遺言者の意思に重きが置かれることになります。

また、錯誤や詐欺、脅迫によって一度目の撤回をした場合は、撤回した遺言の効力が回復します。

(4) 遺言書の保管

公正証書遺言については、公正役場に原本が保管されますが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、遺言者が保管する必要があります。

前の遺言書全部を撤回した場合は、前の遺言書を破棄して最新の遺言のみを保管すべきですが、一部撤回した遺言の場合は、その前に記した遺言も有効な部分があり、両者を保管する必要があります。

自筆証書遺言の保管については、法務局での保管制度が新設されました。利用するには申請書を作成しなければなりませんが、有効な保管方法なので、お近くの法務局に問い合わせてみるといいでしょう。

[参考記事] 法務局での自筆証書遺言書保管制度とは|メリット・デメリット

また、遺言書の作成を弁護士に相談した場合は、遺言書をそのまま保管してもらう方法もあります。

5.まとめ

法的に有効な遺言を作成するためには専門的な知識が必要です。
ましてや、「遺言の撤回」については、一般の方では法的に有効な「遺言の撤回を記した遺言」を作成することが難しいことがあります。

法的に有効な遺言を作らなければ、遺言自体が無効になり、遺言者の意思の通りの遺産分割ができなくなってしまう可能性もあります。

「相続の撤回」はもとより、「通常の遺言の作成」をお考えの方も、相続の経験豊富な法律事務所にご相談されてことをお勧めします。

泉総合法律事務所では、相続問題について力を入れてまいりました。遺言書についても、これまでに多数の問題を解決してまいりました。
もし、遺言書の書き方や保管、さらには遺言の撤回についてお悩みをお持ちでしたら、是非一度、お気軽にご相談ください。

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