ゴルフ会員権の相続手続きと注意点
ゴルフ会員権は、バブル時代は高騰していましたが、現在は昔と比較するとかなり価格が下落しています。
とはいえ、相続税申告においては、相続財産として適切に評価して計上しないといけない場合があります。
一方で、ゴルフ会員権は相続財産かどうかの判断が難しく、また、その相続税評価方法が複雑な場合もありますので注意が必要です。
そこで今回は、「ゴルフ会員権の相続」に焦点をあてて、ゴルフ会員権の相続手続き、および評価方法等について説明します。
1.ゴルフ会員権は相続財産となる?
ゴルフ会員権を持っていた被相続人が死亡した場合、その相続人がゴルフ会員権を相続できるかどうかについては、そのゴルフ場の会員規約を確認する必要があります。
会員規約に、会員の死亡を「会員の資格喪失事由」と定めている場合
会員が死亡すると会員の資格を喪失すると定めた会員規約があるゴルフ場では、ゴルフ会員権を継承することができず、ゴルフ財産権は相続財産とはなりません。
ただし、被相続人の死亡によってゴルフ会員の資格はなくなりますが、支払い済の預託金がある場合は、その預託金の返還請求権が発生します。
この預託金返還請求権は、相続財産となります。
会員規約に、相続を認めると定めている場合
この場合は、当然に、ゴルフ会員権は相続財産となります。
会員規約に、相続について特に定めていない場合
この場合も、前記「会員規約に、相続を認めている場合」と同様に、相続財産となります。
なお、ゴルフ会員権を相続する場合は、ゴルフ会員権を共有名義で行使することが通常認められないため、ゴルフ会員権を行使するには、遺産分割協議等で、誰がゴルフ会員権を相続するかを決める必要があります。
2.相続人が引き続き会員権を利用する場合の手続き
相続人が引き続きゴルフ会員権を利用する場合は、下記の手続きを行なって、ゴルフ会員権の名義変更を行なう必要があります。
(1) 必要書類の提出
ゴルフ会員権を相続した相続人が、ゴルフ会員権の相続による名義変更請求を行なうためには、通常、次の書類を提出する必要があります。
- 戸籍謄本等一式(被相続人の相続人であることを証明するための書類)
- 遺言や遺産分割協議書など(ゴルフ会員権の相続人であることが分かる書類)
- 印鑑登録証明書(遺産分割協議書に押印した各相続人の印鑑登録証明書)
なお上記書類は、ゴルフ会員権に限らず、一般的な相続手続きで準備する書類ですので、ゴルフ会員権の相続に特化して準備する必要はありません。
ゴルフ場によっては、上記書類以外に必要な書類がある可能性もありますので、詳細は当該ゴルフ場にご確認ください。
(2) ゴルフ場の入会審査
ゴルフ場には、各ゴルフ場独自の入会条件があります。
上記の必要書類を提出した後、当該ゴルフ場では、その入会条件を満たしているかどうかの入会審査が行われます。
相続による名義変更の場合は、この入会審査が免除される場合がありますが、入会条件を満たさない場合には名義変更できないケースもあります。
(3) 名義書換料の振り込み
入会審査に通り名義変更が認められれば、ゴルフ場が定める「名義書換料」を支払います。
これにより、ゴルフ会員権の名義変更手続きは終了です。
3.会員権を売却する場合の手続き
ゴルフ会員権を相続したけれど、ゴルフ会員権の相続人がゴルフをしない、あるいは当該ゴルフ場を利用しない場合は、相続したゴルフ会員権を売却することになります。
ここでは、ゴルフ会員権を売却する場合の注意点を見ていきます。
(1) ゴルフ会員権売却前に確認する
相続したゴルフ会員権を売却する場合、「名義変更をせずに売却できるケース」「相続人に名義変更をしてからでないと売却できないケース」の2通りがあります。
各ゴルフ場によって規定が異なるため、売却する際には、当該ゴルフ場に「相続人への名義変更が必要かどうか」を確認しましょう。
名義変更が必要な場合は名義変更した後に、名義変更がいらない場合はそのまま売却することが可能です。
(2) 譲渡益に譲渡所得税が課税
ゴルフ会員権を売却した場合の譲渡益には、譲渡所得税が課税されます。
「課税される譲渡所得の金額」が、給与所得など他の所得と合算して所得税を課税する総合課税の対象になります。
被相続人の所有期間と相続人の所有期間を合わせて5年以内の譲渡については、以下で求めた「譲渡所得の金額」が「課税される譲渡所得の金額」となります。
ゴルフ会員権の譲渡益=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得の金額={[ゴルフ会員権の譲渡益]+[その年のゴルフ会員権以外の総合課税の譲渡益]}-譲渡所得の特別控除50万円
所有期間が5年を超えるものの譲渡については、次の「課税される譲渡所得の金額」となります。
課税される譲渡所得の金額 =「譲渡所得の金額」× 1/2
なお、相続で取得した場合、「取得費」についても「所有期間」と同様に、被相続人の取得費がそのまま相続人に引き継がれます。
また、相続開始のあった日の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合は、「取得費加算の特例」が適用できます。
「取得費加算の特例」とは、例えば、ゴルフ会員権の譲渡においては、当該のグルフ会員権を相続した時に納税した相続税のうち一定額(ゴルフ会員権に対応する相続税額)を取得費に加算できる特例です。
この「取得費加算の特例」を適用することにより、所得税の節税になります。
4.ゴルフ会員権の相続税評価
ゴルフ会員権が相続財産に含まれる場合は、ゴルフ会員権の相続税評価を行なう必要があります。
ここでは、ゴルフ会員権の相続税評価方法について説明します。
(1) 取引相場があり、預託金制度がないゴルフ会員権
ゴルフ会員権の場合、次の計算方法で求められる額が、相続税評価額になります。
相続が発生した日の取引価格×70%
なお、ゴルフ会員権の取引相場には「売価格」と「買価格」の2つの価格が存在します。
ゴルフ会員権の相続税評価で使う取引相場は、この「売価格」と「買価格」の平均値となります。
(2) 取引相場があり、かつ預託金制度もあるゴルフ会員権
この場合の相続税評価額は、次の計算式で求めた額となります。
「相続が発生した日の取引価格×70%」+「預託金等の金額×返還されるまでの期間に応じた基準年利率による複利現価率」
「基準年利率」や「複利現価率」については、下記の国税庁のWEBページをご参照ください。
「複利現価率」は、下記WEBページの〔参考2〕「複利表」で確認できます。
【参考】令和3年分の基準年利率について(法令解釈通達)|国税庁
(3) 取引相場がないゴルフ会員権
取引相場のないゴルフ会員権には、次の3つのケースが考えられます。
- 株主でなければゴルフ場の会員となれないゴルフ会員権
- 株主であり、かつ、預託金等を預託しなければ会員となれないゴルフ会員権
- 株主ではないが、預託金等を預託しなければ会員となれないゴルフ会員権
株主でなければゴルフ場の会員となれないゴルフ会員権の評価
この場合は、非上場株式を保有しているとみなされますので、ゴルフ場の株式の価格を評価して相続税評価額とします。
非上場株式の相続税評価については、是非次の記事を参考にご一読ください。
【参考】非公開株式の評価と相続手続きの流れ|相続税は?
ゴルフ会員権の評価を行わなければならない場合は、専門家にご相談いただくことをお勧めします。
株主であり、かつ、預託金等を預託しなければ会員となれないゴルフ会員権の評価
この場合のゴルフ会員権については、「株式」と「預託金等」に区分して、それぞれ評価した金額の合計額によって評価します。
- 株式の評価
前記の非上場株式評価方法により評価します。 - 預託金等の評価
「預託金等の金額×返還されるまでの期間に応じた基準年利率による複利現価率」により評価します。
株主ではないが、預託金等を預託しなければ会員となれないゴルフ会員権の評価
「預託金等の金額×返還されるまでの期間に応じた基準年利率による複利現価率」により評価します。
下記はゴルフ会員権の評価に関する国税庁のWEBページです。ご参考までにご覧ください。
5.まとめ
今回は、「ゴルフ会員権の相続」に焦点をあてて、ゴルフ会員権の評価方法、および相続手続き等についてご説明しました。
ゴルフを趣味としている方も多いと思いますので、相続財産にゴルフ会員権が含まれているケースも少なくないと思われます。
ゴルフ会員権の相続に関しては、相続財産かどうかの判断が難しく、相続税評価額の算出が複雑な場合もあり、自分で評価して相続手続きを行なうのはトラブルのもとになります。
被相続人がゴルフ会員権を持っていた場合は、信頼できる法律事務所にご相談することをお勧めします。
泉総合法律事務所には、相続に強い弁護士が揃っております。相続問題に注力している関係から、相続税に強い税理士をご紹介することができます。ゴルフ会員権の相続についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、是非一度、ご相談ください。