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相続に関する税金

相続した土地の売却に伴う税金について

相続した土地を利用する予定がない場合には、売却を検討することも多くなるでしょう。
しかし、土地の売却には利益が入るだけではなく、税金や諸費用がかかることを忘れてはいけません。

相続により取得した土地の売却であれば、税金が軽減される特例が設けられているため、賢く利用したいところです。

今回は、相続した土地を売却する際にかかる費用について解説します。

1.相続した土地の売却時にかかる税金

まず、土地の売却にはどのような税金がかかるのか見ていきましょう。

(1) 印紙税

印紙税とは、契約書や領収書などの文書を作成した場合に、印紙税法に基づきその文書に課税される税金のことをいい、その文書に収入印紙を貼ることで納税したことになります。

土地の売買では「不動産売買契約書」を取り交わし、この不動産売買契約書に印紙を貼ることになります。印紙税は、通常、売主と買主の双方に負担義務があります。

印紙税の金額は、不動産売買契約書に記載される売買金額に応じた額になります。

不動産売買契約書に記載されている契約金額 本則 軽減措置※
10万円超~50万円以下 400円 200円
50万円超~100万円以下 1,000円 500円
100万円超~500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超~1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超~5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超~1億円以下 60,000円 30,000円
1億円超~5億円以下 100,000円 60,000円
5億円超~10億円以下 200,000円 160,000円
10億円超~50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超~ 600,000円 480,000円

※軽減措置は、2022年3月31日までに作成される契約書に対して適用されます。

【参考サイト】土地売買契約書|国税庁

(2) 登録免許税

土地の売買があった場合には、土地の名義変更を行います。その登記申請をする際には、法務局へ登録免許税を支払います。売買取引においては通常、買主側が負担します。

売買による所有権移転登記にかかる登録免許税の金額は、次の算式で計算されます。

固定資産税評価額 × 1.5%
※本則では2%ですが、2023年3月31まで土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減措置が設けられています。

(3)譲渡所得税(所得税・復興特別所得税・住民税)

売却金額がその土地の取得金額や譲渡費用などよりも高く、売却益が出た場合には、その利益については譲渡所得となり所得税、復興特別所得税※、住民税の課税対象になります。
一方、いわゆる赤字での売買となった場合には、発生しません。

ちなみに、譲渡所得税という税金はありません。正確には「譲渡所得に対する所得税」なのですが、便宜上そう呼ばれることが多いため、この呼称が使用されています。

※復興特別所得税とは、源泉所得を徴収する際にあわせて源泉徴収される税金で、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」の施行により始まりました。2013年1月1日から2037年12月31日までの間に生ずる所得に対して、源泉所得税額の2.1%相当額が復興特別所得税としてかかります。

2.相続した土地を売却する際の譲渡所得税

それでは次に、譲渡所得税の計算方法について詳しく解説します。

(1) 譲渡所得の計算

譲渡所得税を計算するためには、まず課税対象になる譲渡所得(売却益)の金額を求めることから始まります。

次の算式で計算した金額が0円以下であれば、譲渡所得税は発生しません

譲渡所得=譲渡価額(売却価額)―取得費(※1)―譲渡費用(※2)

※2 売却仲介手数料、印紙税、建物取り壊し費用など
※1 購入額から減価償却費を控除した価額、仲介手数料、印紙税など

算式をご覧いただくと分かるように、譲渡所得税を節税するためには、いかに売却金額から差し引ける「取得費」と「譲渡費用」を漏れなく計上するかにかかっています。

大昔に取得した土地などで、取得費が不明なケース(売買契約書等がなく、売買代金、仲介手数料等が判らない)では、取得費は売却価額の5%とすることができることになっていますが、その場合、控除できるのはわずかな金額になってしまいます。売買契約書等、資料探しには最大限の努力をしましょう。

(2) 譲渡所得税の税率

譲渡所得の金額が求められたら、次に税率を乗じて各税金の金額を計算します。
税率はその土地の保有期間によって変わります。

譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率

区分 被相続人がその不動産を取得した日から
売却した年の1月1日までの保有期間※
税率
短期譲渡所得 5年以下 所得税:30%
住民税:9%
長期譲渡所得 5年超 所得税:15%
住民税:5%

※相続により取得した土地の売却については、被相続人の所有期間を引き継げる点が特徴です。

(3) 譲渡所得税の具体例

売却価格1億円、取得費8,000万円、譲渡費用1,000万円、長期譲渡所得の場合の譲渡所得税と住民税を計算してみましょう。

譲渡所得額:1億円―8,000万円―1,000万円=1,000万円

譲渡所得税:1,000万円×15%=150万円
復興特別所得税:150万円×2.1%=31,500円
住民税:1,000万円×5%=50万円

合計:2,031,500円

(4) 譲渡所得があれば確定申告が必要

譲渡所得税は固定資産税のように自動的にかかる税金ではなく、ご自分で申告して納税しなければなりません。売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。

次項で解説する特例を利用して譲渡所得税がかからない場合であっても、特例を適用する前の金額がプラスの場合には、確定申告が必要になるため注意しましょう。

また3月15日を過ぎての申告や、無申告を税務署から指摘された場合には、延滞税や加算税の対象になります。土地の売買は金額が大きく、さらに登記が絡む取引になるため、税務署は確実に把握しており脱税は不可能です。

3.相続した土地の節税に使える特例・控除

相続した土地の場合、住む予定のない実家の土地など、保有し続けても利用価値がない土地が多いため、売却したいと考えることが多くなります。

しかし、売却に通常通りの税金がかかるとなると、売却へのハードルが高くなり、そのまま放置されてしまう可能性が高くなります。そして結果的に所有者不明土地へ繋がってしまいます。

そこで、国は相続した土地の売却については税金が軽減されるよう特例や控除を設けています。相続した土地を賢く売却するチャンスなので、活用機会を逃さないようにしましょう。

相続発生から期限がある特例もあるため、土地を相続するときからここまで考えておけると理想的です。

(1) 相続から3年以内使える特例・控除

取得費加算の特例

「取得費加算の特例」は、相続開始から3年10ヶ月以内に土地を売却した場合には、その土地に対して支払った相続税を取得費に含めることができる特例です。その分、譲渡所得の金額を圧縮することができるため、譲渡所得税が節税できる特例です。

その土地の相続時に相続税が課税されていることが大前提になる特例であるため、相続税の納税義務がなかった場合には適用できません。

長くはありませんが3年という期間が設けられているため、急いで売却する必要はありません。

もしも税率が短期譲渡所得に該当する状況であり、長期譲渡所得になるまであと1年という場合であれば、1年後に売却することで長期譲渡所得と取得費加算の特例が適用できます。

相続等により取得した空き家を譲渡した場合の3,000万円の特別控除

実家を相続した場合には、そこに住む予定はないが売れる家でもないというケースが多くあります。そのような不動産は、とりあえず置いておこうとなってしまい、結果的に空き家の老朽化が進行して様々な問題を引き起こすようになります。

そこで設けられたのがこの特別控除です。

この特別控除は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、相続した空き家を取り壊して更地として売却する場合には、3,000万円の特別控除が利用できます。

譲渡所得=譲渡価額―取得費―譲渡費用-3,000万円

通常の譲渡所得の計算から、さらに3,000万円控除することができるため、適用できれば多くのケースで譲渡所得税がかからなくなるでしょう。

この特別控除は、本来居住している自宅に対して適用される制度でしたが、2016年から期間限定で相続した実家について認められています。2023年12月31日までの売却に限った期間限定の制度である点に注意しましょう。

(2) いつでも使える節税術

ふるさと納税の利用

ふるさと納税は、ご自分が選んだ自治体に寄付をすると、その寄付額の2,000円を超える部分全額を、所得税と住民税から控除できる制度です。

ふるさと納税は寄付額に応じた特産品などを返戻品として受け取ることができるため、捨て金である税金よりも断然メリットがあり、毎年多くの人が利用しています。

ふるさと納税には税金から控除できる上限額がありますが、これは所得が高くなるほど増える仕組みとなっているため、譲渡所得が発生する年はいつもより高い上限になり、より多くの自治体へ寄付できることになります。

なお、上限額を超えて寄付をした場合には、その超えた部分の金額については、節税効果はありません。払い損になるため注意してください。

収入に応じた上限額の目安はこちらより確認できます。
【参考サイト】ふるさと納税ポータルサイト|ふるさと納税のしくみ|税金の控除について|総務省

平成21年及び平成22年に取得した土地の1,000万円特別控除

この特別控除は、平成21年(2009年)1月1日から平成22年(2010年)12月31日までに取得した土地で、5年超保有して売却した場合には、譲渡所得から1,000万円を控除することができます。

あまり知られていない特別控除であり、初めて聞いたという方や、なぜこの2年間だけなのかと思われる方も多いでしょう。

この特別控除は、2008年に起きたリーマンショックの影響で不動産取引の縮小に対する景気対策として導入されたものになります。

この十数年で購入した土地であれば該当しているかもしれません。売買契約書の購入日を確認してみましょう。

低未利用土地等の100万円特別控除

低未利用土地とは、居住用、業務用、その他の用途に利用されていない土地で、他の土地と比較しても著しく利用程度が劣っていると認められる土地のことをいいます。

この特別控除は、所有期間が5年を超える土地で売却価額が500万円以下であることなどの要件を満たした場合には、譲渡所得から100万円を控除することができます。

利用価値がない土地を相続し売却する場合には、利用できる可能性が高い特別控除になるため、必ず確認しましょう。

4.その他相続した土地の売却にかかる費用

土地を売却する際には、税金以外にもかかる費用があります。

いざ売却話が進んでいくときに知らなかったということがないように、事前に把握しておきましょう。

(1) 仲介手数料

土地を売買する際には通常、不動産会社に依頼して売買取引の仲介を依頼します。仲介手数料は、仲介が成約した際の報酬として不動産会社へ支払うものになります。

仲介手数料は不動産会社が設定していますが、法律で上限が設けられており、ほとんどはその上限額で請求されます。

1,000万円の取引であった場合には、1,000万円×3%+6万円=36万円が上限額です。

売買代金 限度額
200万円以下 売買代金×5%
200万円超~400万円以下 売買代金×4%+20,000円
400万円超~ 売買代金×3%+60,000円

(2) 土地の確定測量費

土地を売却する前には、隣接地との境界線を明確にしておかなければなりません。義務ではありませんが、古い土地などの場合には境界線があいまいになっているケースも多く、また過去に一度測量している土地であっても改めて確認すると違っていたということもあります。

後々のトラブルを防ぐために、売却前に土地の測量を依頼しましょう。

土地家屋調査士への報酬の相場は、40万円~50万円前後です(役所の立会いが必要などケースによってプラスアルファがある場合があります)。

抵当権抹消登記の費用

売却する土地に住宅ローンなどが残っており、抵当権が設定されている場合には、その抵当権を抹消するために、登録免許税と司法書士報酬がかかります。

  • 登録免許税:土地1件につき1,000円
  • 司法書士報酬:1.5万円~2万円程度

その他の費用

その他にも、その土地を売却するためにケースバイケースでかかる費用があります。
特殊な土地ほど、上記以外にかかる費用が多くなる点に注意しましょう。

  • 古家を解体:数百万円
  • 土壌汚染調査:数十万円 など

5.共有名義で相続した土地を売却する際の注意点

最後に、相続した土地にありがちな共有名義の土地の売却について解説します。

(1) 売却代金の分配によっては贈与税が課される

各共有者の持ち分と同じ割合で売却代金を分配しなかった場合に、ご自分の持分よりも多く売却代金を取得した人は、持分より少なく取得した人から贈与を受けたことになるため、持分より余分に貰った部分に対して贈与税が課されます

例えば、兄弟姉妹4人でそれぞれ4分の1ずつの持分となっている土地を1,000万円で売却し、その代金を兄2,500万円、弟2,500万円、姉1,500万円、妹3,500万円と分けたとします。

妹は姉から1,000万円の財産を贈与されたという認識になり、1,000万円に対して贈与税がかかります。

(2) 譲渡所得場ある場合には共有者各自で確定申告が必要

上述した通り、土地の売却で譲渡所得が出た場合には確定申告をする必要があります。

共有名義の土地の場合には、誰か1人が代表者になってまとめて確定申告をするということはできません。

譲渡価額、取得費、譲渡費用はそれぞれの持分に応じて分割し、各共有者の譲渡所得を計算します。そして各共有者が各自で確定申告をすることになります。兄弟姉妹4人の共有名義であれば、それぞれ4人分の確定申告書が提出されるということです。

6.まとめ

相続した土地の売却には、通常の売却よりも多くの特例や控除が設けられています。
それを見越した状態で遺産分割協議を進められれば、より有効な協議にすることができるでしょう。

色々ある特例の中から自身にあったものを選択するということは、一般の方ではまず難しいことです。弁護士にご相談いただき、一緒に検討されると安心でしょう。

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