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相続回復請求権とは?行使権者や時効、請求方法について

相続人が持っている相続権が侵害されている場合、「相続回復請求権」を行使して、相続財産を取り戻すことができる可能性があります。

「相続回復請求権」といっても、どのような場合に、どのように行使するのか、よくわからない部分が多いと思います。

そこで、今回の記事では、この「相続回復請求権」についてご説明します。

1.相続回復請求権とは?

まず、「相続回復請求権」とはどのような権利なのかについて説明します。

民法第884条は、「相続回復請求権」について、次のように定めています。

相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。

相続回復請求権とは、原則、本来の相続人(真正相続人)が、本来の相続人ではないにも関わらず遺産を占有・利用している者(表見相続人)に対して、相続財産を取り戻すために行使する請求権のことをいいます。

なお、後述する通り、相続回復請求権は、「本来の相続人ではない者」に対してだけではなく、「法定相続権を超えて他の相続人の権利を侵害している共同相続人」に対しても行使することが可能です。

2.相続回復請求権の行使権利者と相手方

ここでは、相続回復請求権の行使が認められている者とその相手方について、詳細に見ていきます。

(1) 相続回復請求権の行使権利者

相続回復請求権の行使が認められているのは、原則、本来の相続人(法的な相続権を持っている者)です。
この本来の相続人のことを「真正相続人」といいます。

なお、真正相続人が未成年者や成年被後見人(判断能力がない人)などの制限行為能力者である場合は、法定代理人が本人に代わって行使することができます。

原則、相続回復請求権が認められるのは「真正相続人」ですが、以下のような者も相続回復請求権の行使が可能です。

  • 真正相続人
  • 真正相続人から相続した人
  • 真正相続人から相続財産を譲渡された人
  • 包括受遺者(遺贈の対象となる財産を特定せずに、包括的に承継する遺贈を受けた人)

(2) 相続回復請求権行使の相手方

相続回復請求権を行使すべき相手方は次のような人のことを指します。

表見相続人

表見相続人とは、戸籍上は相続人として記載されていますが、相続権を持たない者のことをいいます。

具体的には次のようなケースです。
相続人としての権利を持っていませんので、不正に相続財産を占有・利用している場合は、相続回復請求権の行使を受ける対象となります。

  • 相続欠格・相続廃除の者
  • 事実と異なる出生届・認知届で子になった者
  • 婚姻届が無効となった配偶者
  • 無効な縁組の養子

共同相続人による相続財産侵害のケース

共同相続人の一人が、自らの相続分を超えて相続財産を使用・占有するケースの場合も相続回復請求の対象になるのですが、884条(消滅時効の援用)の適用はあると言われています。

ただし、後述する最高裁判所の判例によれば、相続回復請求を受ける相続人が、相続権の侵害について悪意(自分が、持分を持たないことを知っている)か又は(それを知らなかった(善意)としても)持分が自分にあると信じるにつき合理的な理由がない場合、884条の適用は排除されます。

「悪意、又は合理的な理由がない」とは、自分が他の相続人の相続権を侵害していることを知っていること、又は、知らないとしても、相続権を侵害していない(持分が自分に帰属している等)と信じるに足る合理的な理由がない、ということです。後述しますが、そのような認識を持つ相続人は、相続回復請求権による保護の埒外にあると考えられるので、同条の保護対象になりません。

(3) 相続回復請求権の放棄

相続回復請求権の放棄については、相続開始前は認められていませんが、相続開始後は認められています。

3.相続回復請求権の時効

相続回復請求権には時効があります。

ここでは、相続回復請求権の時効について見ていきます。

(1) 民法で定められた時効

表見相続人が相続権を侵害した場合の相続回復請求権の時効は、相続権の侵害を知ってから5年、または、相続権の侵害を知らない場合でも、相続発生から20年が経過すれば相続回復請求権は時効を迎えます(民法第884条)。

(2) 共同相続人が相続権を侵害したケース

前項でみましたように、他の相続人の権利を侵害している共同相続人が相続権の侵害について悪意、かつ当該相続財産が自己に帰属することを信じるについて合理的な理由がある場合は、相続回復請求権が認められています。したがって、この場合は5年または20年で時効が成立します。

しかし、共同相続人が、相続権の侵害について悪意、又は信じるについて合理的な理由がない場合は、相続回復請求権が求められていませんので、5年または20年で時効になることはありません

他の相続人の相続権を侵害していることを知り、または、知らなかったとしても、侵害していないとする合理的な理由もなしに、他の相続人の相続権を侵害しておいて、5年または20年で時効になってしまうことは、ただの不法行為者と変わらない者を不当に保護する点で不合理と考えられます。

むしろ、このような問題は、消滅時効制度のない、遺産分割手続などで解決すべきです。

昭和53年12月20日の最高裁判所の判決に次のものがあります。

最高裁判所は、この判決で、共同相続人(以下、甲といいます。)が自己の本来の相続持ち分を超えて占有管理して、他の相続人の相続権を侵害した場合、甲が他の相続人の相続権を侵害していると知っている時、あるいは、甲にその財産の相続権があると信ぜられるべき合理的な事由がない時は、民法884条は適用されない、つまり、相続回復請求を受けた方は、消滅時効を援用できないと判示しました。
【参考】最高裁判所判例集|裁判所

(3) 表見相続人から遺産を取得した第三者

消滅時効を主張できる者は、当該表見相続人に限られています。

表見相続人から遺産を取得した第三者には、消滅時効を援用することはできません。

4. 相続回復請求権と取得時効

「取得時効」とは、所有の意思をもって、一定期間他人の物を占有した者は、その所有権を取得することができるという制度です。(民法第162条)。表見相続人が、一定期間遺産を占有したことで、所有権を取得することができるかが問題となります。

表見相続人については、取得時効の援用を否定した判例と、表見相続人から遺産を取得した第三者については、表見相続人の占有期間を合わせて主張できるとした判例があります。

5.相続回復請求権の行使方法

最後に、相続回復請求権の行使方法について見ていきます。

(1) 裁判外での請求方法

相続回復請求権の行使方法は法律で定められていませんので、相手側に直接請求することも可能です。

したがって、直接話をしてもメールでもかまいませんが、現実的には、前述の時効の問題もあり、請求した日時が証明できる「内容証明郵便」を利用するのが一般的です。

このような裁判外での請求の場合も、催告として消滅時効中断事由となります。

(2) 訴訟の提起

任意の直接交渉で解決できない場合は、裁判を起こします。

相続に関する事案は「遺産分割調停・審判」といった家事裁判と思われがちですが、相続回復請求権は一般の民事裁判で争うことになります。

請求の内容は、一般的には、相続人を排除したいなら相続財産の共有権に基づく妨害排除請求、相続人の占有により金銭的損害を受けた場合は不法行為に基づく損害賠償請求、という内容になります。

ちなみに、「遺産分割調停・審判」では相続回復請求権の消滅時効の進行は止まらないこともあり、仮に調停などで話し合いがまとまらないようなら、早めに上記の請求訴訟を起こすことをお勧めします。

訴訟を起こすことにより、消滅時効の進行が止まります。

なお、裁判の管轄は、被告(相手方)の住所地の地方裁判所です。

6.まとめ

今回は、「相続回復請求権」に焦点を当てて説明しました。

他の相続人や第三者によって、相続人である自分の権利が侵害された場合は、「相続回復請求権」を行使することにより遺産を取り戻すことができる可能性があります。

しかし、相続回復請求権はそれほど頻繁に使われる権利ではなく、一般的にはあまり知られていません。

そのため、実際にこの権利を使う場合は、不慣れなこともあり、相手とトラブルが発生するケースが多くあります。

相続回復請求権をお考えの方は、トラブルなく、スムーズに手続きを進めるためにも、相続の経験豊富な法律事務所にご相談されることをお勧めします。

泉総合法律事務所では、積極的に相続問題に取り組んでまいりました。「被相続人から相続排除を受けた親族が、遺産を占有したまま話し合いに応じない」など相続問題でお困りのことがありましたら、是非一度、ご相談ください。

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