除籍謄本とは?相続で必要になるケース
相続手続きが始まると、被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明、登記簿謄本、固定資産評価証明書など様々な書類を集めないといけません。
そこで、今回の記事では、あまり馴染みのない「除籍謄本」に焦点を当てて、除籍謄本とは何か?どこで取得できるのか?相続のどのような場合に必要なのか?などについて解説します。
1.除籍謄本とは?
あまり聞き慣れない「除籍謄本」という言葉ですが、相続手続きでは必要となる文書です。
まず、この章では、戸籍とは何か?除籍とは何か?除籍謄本とは何か?などについて解説します。
(1) 戸籍とは何か?
戸籍とは、わたしたち日本国籍を持っている者について、生まれてから死亡するまでの身分(出生、結婚、離婚、死亡、養子縁組など)について登録公証するシステムであり、その登録内容が記載された公文書(公簿)そのものを指すこともあります。
戸籍は、原則として1組の夫婦、および、その夫婦と同じ氏の未婚の子どもを単位として作られていて、本籍地の市役所、区役所、町村役場(以下「役所」)に、公簿として保管されています。
(2) 除籍謄本とは何か?
除籍とは
除籍とは、結婚や死亡などによって、その戸籍に記録されていた者が除かれることです。
また、戸籍に記録されている人が結婚や死亡などにより一人ずつ抜けていき、最終的に全員除籍された戸籍のことも、除籍(除籍簿)といいます。
謄本とは
文書には「原本」、「正本」、「謄本」などの区分があります。
「原本」とは、最初に作成されるオリジナルの文書のことです。
「正本」とは、謄本の一種ですが、公証権限のある者(公証人)が作成する原本の写しで、法令によって原本と同じ効力を与えられたものです。通常は1通しか作成されません。
「謄本」とは、原本の記載内容全部の写し、つまり、原本の内容全部をコピーしたものです。何通でもコピーすることができます。
除籍謄本とは
除籍謄本とは、結婚や死亡などによって誰もいなくなった状態の戸籍(除籍簿)の記載内容全部の「写し」(謄本)のことです。
現在の除籍簿の保存期間は、戸籍から最後の一人が除籍になってから150年です。
平成22年の戸籍法の一部改正により、保存期間が150年に変更されました。
それ以前は保存期間80年でしたので、古い除籍簿については保存されていない可能性があり、調査、請求の際には注意が必要です。
除籍謄本と戸籍謄本の違い
前述の通り、除籍謄本は、戸籍に誰もいなくなった状態の戸籍(除籍簿)の記載内容全部の写しです。
これに対して、被相続人が死亡しても、その戸籍に登録されている者、例えば配偶者や子どもが一人でも存命であれば、戸籍として残ります。したがって、被相続人が亡くなっても配偶者などが存命の場合は、戸籍が残っているので、被相続人の除籍謄本は存在しません。
一般に相続手続きで必要となる戸籍謄本は、被相続人が亡くなったことが記載されている現在有効な、このような戸籍の記載内容全部の写しのことです。
しかし、死亡届提出後、直ぐに被相続人の死亡が戸籍に反映されるわけではありません。被相続人の死亡が戸籍に記録されるまでには、数日から10日ほどかかります。
【抄本とは?】
間違いやすいのが「謄本」と「抄本」です。
戸籍の謄本、抄本どちらも戸籍簿の写しです。ただ、謄本は戸籍の記載の「全部」の写しであるのに対し、抄本は戸籍の記載の「一部」(戸籍に2人以上記載があるうちの1人分など)の写しです。「謄本」が必要なのか、「抄本」が必要なのか、紛らわしいので注意が必要です。
2.除籍謄本の取り方
除籍簿は、本籍地の役所に保管されています。
ここでは、除籍謄本の請求の仕方を説明します。
(1) 除籍謄本を取得できる人
原則、除籍謄本を請求できる者は、次のとおりです。
- 本人
- 配偶者
- 直系尊属(祖父母・父母等)・直系卑属(子・孫等)
子供や親、配偶者といったご家族以外に、弁護士、司法書士、行政書士といった士業の方が代理で職務上請求をすることもできます。
また例外として、上記の職務上請求ができる者以外の第三者でも、次の場合は除籍謄本を請求する事ができます。
この場合は、除籍謄本を必要とする具体的理由を示す必要があります。
- 自己の権利の行使、又は自己の義務の履行のために、除籍の記載事項を確認する必要がある場合
- 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合
- 上記のほか、除籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合
除籍となった本籍地を管轄する役所に申請して、取得します。
(2) 除籍謄本の取得方法
除籍謄本の取得には、次の2つの方法があります。除籍謄本の取得に直接必要な金額は、いずれの方法においても手数料750円となります。
直接役所で取得する方法
次のものを本籍地の役所に持参して、除籍謄本を取得します。
- 請求書(役場に用紙がある)
- 印鑑(認印可)
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
- 手数料(1通750円を現金払い)
なお、代理人が請求する場合には、委任状の提出も必要です。
戸籍に記載されていない直系尊属・卑属が請求する場合は、以上のものに加えて、戸籍に記載されている人との続柄が確認できる資料(戸籍謄本等)が必要になります。
ただし、続柄が確認できる戸籍の本籍が、請求先の自治体にある場合は不要です。
郵送で取得する方法
次のものを本籍地の役所に郵送して、除籍謄本を取得します。
- 請求書(自治体のWEBサイトからダウンロードできる場合が多い)
- 本人確認および現住所確認書類のコピー(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 手数料分の定額小為替(1通750円)
- 返信用封筒(住所氏名を記入し切手を貼付)
なお、代理人が請求する場合には、委任状の提出も必要です。
郵送の場合にも、戸籍に記載されていない、直系尊属・卑属が請求する場合は、以上のものに加えて、戸籍に記載されている人との続柄が確認できる資料(戸籍謄本等)が必要です。
ただし、続柄が確認できる戸籍の本籍が、請求先の自治体にある場合は不要です。
士業が取得を代行する場合
除籍謄本を請求できる者(本人、配偶者、直系尊属・卑属)からの依頼で、弁護士、司法書士、行政書士といった士業の方に、代行して取得してもらうことができます。これを「職務上請求」という言い方をします。
士業の人は、業務に必要な範囲であれば職権で除籍謄本を取得することができますが、トラブル防止のために、委任状を作っておくと良いでしょう。
第三者が取得する場合
上記で説明しましたが、第三者も、正当な理由があれば除籍謄本を請求できます。
第三者からの請求の場合は、債権や相続など正当な利害関係の確認できる資料が必要となります(例えば債権であれば貸付契約書、相続であれば遺言などの写し)。
3.相続で除籍謄本が必要になるケース
ここでは、相続に焦点を当てて、どのようなケースに除籍謄本が必要か見ていきます。
相続において、次のケースに除籍謄本が必要になります。
- 税務署への相続税申告手続き
- 相続放棄の手続き
- 被相続人の保険金の受け取り
- 被相続人から相続した財産の名義変更
- 銀行、証券会社などの口座の名義変更
- 株式の名義変更
- 不動産の名義変更
- 自動車の名義変更 など
要約すると、相続手続きにおける除籍謄本の使い道は、
- 被相続人が亡くなっていること、いつ亡くなったかを確認する
- 法定相続人を確定する(関係者に知られていない兄弟や子供がいるかどうかを確認する)
- 相続した財産の名義変更をする際などで、被相続人と相続人の関係を確認する
といったケースです。
ただし、前述した通り、このような相続手続きで必要なのは、被相続人の除籍謄本ではなく、「被相続人が除籍されたという記録が載った『戸籍謄本』」ということになります。
なお、このようなケースで、仮に誤った内容で除籍謄本を役所に申請しても、役所の方で気づいて、申請の修正を提案してくれますので、過度の心配は不要です。
なお、相続手続きに利用する除籍謄本に特に有効期限はありません。ただし、金融機関によっては、期限を設定しているところもあるようですので、事前にご確認ください。
4.まとめ
今回は、「除籍謄本とは何か、相続ではどのようなケースで必要になるのか」について見てきました。
馴染みのある戸籍と違って、あまり聞き慣ない除籍ですが、「結婚や死亡などで誰もいなくなった戸籍が除籍(除籍簿)ですので、相続手続き上は、戸籍謄本と除籍謄本とはそれほど違いがありません。
除籍謄本は、戸籍謄本を取るのと同じ方法で取得することができるので、問題ないでしょう。
また、相続で必要な書類は、除籍謄本以外に、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明、登記簿謄本、固定資産評価証明書など多岐に渡り、全てを取得するのはけっこう大変です。
したがって、相続が発生したら、相続手続きに詳しく経験豊富な法律事務所などに相談されることをお勧めします。
泉総合法律事務所では、相続についての様々なトラブルやお悩みに対応しております。相続でお困りのことがあれば、是非一度、泉総合法律事務所にご相談ください。