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相続放棄

相続放棄できないケースとは|単純承認・認められない事例を解説

亡くなった方に借金があった場合や、その方が連帯保証人になっていた場合など、被相続人に負の遺産があると、相続放棄を検討する相続人も多いでしょう。

相続放棄をするためには、決められた期限内に家庭裁判所に相続放棄の申述を行う必要があります。しかし、期限内に相続放棄の申述を行ったとしても却下されてしまい、家庭裁判所に受理されないことがあります。それはどのようなケースなのでしょうか。

相続放棄の申述が受理されずに、莫大な負の遺産を背負うことのないように、相続放棄ができない場合についてあらかじめ理解しておくことが重要です。

今回は、相続放棄ができないケースについてわかりやすく解説します。

1.相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人のプラスの財産(積極財産)とマイナスの財産(消極財産)を含めた一切の権利義務を受け継がないという相続方法のことをいいます。

相続放棄をすることにより、被相続人に借金があったとしても相続人がそれを返済する必要はなくなります。

しかし、相続放棄をすると、被相続人に土地や建物といった不動産や預貯金などのプラスの財産があったとしても一切相続することができません。
そのため、相続放棄は、被相続人のマイナスの財産がプラスの財産を上回っているようなときに主に利用される手続きです。

相続放棄 [参考記事] 相続放棄とは|メリット・デメリットから注意点、手続き方法を解説

2.相続放棄に失敗する事例

家庭裁判所に相続放棄の申述をしたとしても認められない事例があります。それはどのような場合なのでしょうか。

以下では、相続放棄をすることができない相続放棄の失敗例についてご説明します。

(1) 熟慮期間が経過している

相続放棄する場合には、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければなりません(民法915条1項)。

したがって、家庭裁判所に相続放棄の申述をする時点で既に3か月の熟慮期間が経過している場合には、相続放棄をすることができません。

相続放棄の熟慮期間は伸長可能

相続開始後に相続放棄をするかどうかを決めるためには、相続財産を調査して、プラスの財産とマイナスの財産を明らかにしなければ正確な判断をすることができません。
民法は、3か月の熟慮期間内に、相続財産の調査をしたうえで、相続放棄をするかどうかの判断を求めているのです。

しかし、相続財産の調査に手間取って、3か月の熟慮期間内に相続放棄をするかどうかの判断ができないこともあります。

その場合には、家庭裁判所に相続放棄の期間の伸長の申立てをすることによって、熟慮期間の伸長が認められます。

相続放棄 期間 [参考記事] 相続放棄の期間(熟慮期間)は原則3ヶ月以内|起算点はいつから?

(2) 法定単純承認事由に該当する行為をしている

相続放棄をする場合には、法定単純承認事由に該当する行為をしていないことが必要となります。
民法では、以下の行為を法定単純承認とみなしています(民法921条)。

  • 相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき
  • 相続人が熟慮期間中に限定承認または相続放棄をしなかったとき
  • 相続人が限定承認または相続放棄をした場合であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき

上記の法定単純承認事由のうち問題になることが多いのが、「相続財産の処分」です。

相続財産の処分とは、財産の現状や性質を変える行為のことをいい、遺産の一部でも処分してしまうと単純承認とみなされ、相続放棄をすることができなくなってしまいます。

処分には、遺産を売却するといった法律行為だけでなく、物を壊すなどの事実上の行為も含まれます。
相続放棄をする可能性が少しでもあるのであれば、熟慮期間の3か月が経過するまで遺産には、法的にも、物理的にも手を付けない方が安心です。

なお、相続財産から葬儀費用の支払いや墓石・仏具を購入することは、その額が社会的に不相当なものといえない限り相続財産の処分には該当しないと考えられています。

そのため、被相続人の葬儀などの費用を相続財産の中から支出することは可能だといえます。

[参考記事] 相続放棄できなくなる法定単純承認の具体例

(3) 手続き上の不備がある

法定単純承認事由に該当する行為もなく、熟慮期間内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすれば、原則として相続放棄は認められます。

しかし、相続放棄の申述にあたっては、相続放棄の申述書の他、被相続人の戸籍謄本、申述人の戸籍謄本などを添付して申立てをしなければなりません。

申述書の記載や書類に不備があると、裁判所から補正や書類の追加提出を求められますが、裁判所からの指示を無視して補正に応じない場合には、相続放棄の申述は受理されません。

3.相続放棄できない場合の対処法

上記の相続放棄に失敗するケースに該当しても、例外的に相続放棄ができることもあります。
そのような例外的なケースに該当するときには、即時抗告によって争うことができます。

(1) 即時抗告

即時抗告とは、裁判所の決定に対する不服申し立ての一種で、高等裁判所で審理をしてもらうことができる制度です。

相続放棄では、相続放棄不受理決定の通知を受けた翌日から2週間以内に申し立てる必要があります。

相続放棄の申述が却下されたとしても、高等裁判所で家庭裁判所での判断が間違っていたと認定されれば、相続放棄が認められる可能性があります。

(2) 例外的に相続放棄が認められる事情とは

即時抗告をする際には、家庭裁判所が申述を却下した理由を精査して、家庭裁判所の判断が間違っていることを説得的に主張する必要があります。

相続放棄の申述を却下する事案の多くは、熟慮期間経過後の申立てであるか、法定単純承認事由に該当する行為があったとするものです。

そのため、即時抗告にあたっては、形式的には熟慮期間経過後の申立てや法定単純承認事由に該当する行為があったとしても、例外的に相続放棄が認められるべき事情があることを主張していかなければなりません。

どのような事情があると例外的に相続放棄が認められるかはケースバイケースですが、代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。

①相続財産が全くないと思っていたため熟慮期間が経過した場合

最高裁判所は、熟慮期間の起算点について、「熟慮期間に相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信じたことに相当な理由がある場合には、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識したときまたは通常これを認識できるときから熟慮期間を起算するのが相当である」と判断しています(最高裁昭和59年4月27日判決)。

そのため、プラスの財産もマイナスの財産も全く存在しないものと信じていたために熟慮期間を徒過してしまったという場合には、相続開始を知ってから3か月間が経過していたとしても相続放棄が認められる可能性があります。

②相続財産の処分が形見分けであった場合

被相続人が死亡して、被相続人の自宅内にあった物を形見分けの趣旨で相続人が取得した場合には、相続財産の処分にはあたらず、法定単純承認事由に該当する行為にはあたらない可能性があります。

もっとも、形見分けであれば常に問題がないというわけではなく、相続財産全体の額、被相続人や相続人の財産状態、形見分けの対象物の経済的価値などを総合して判断します。

一見遺産の処分と思えるような行為であっても、具体的な事情を主張することによって、家庭裁判所の判断が覆る可能性もあります。

4.相続放棄を検討している方は弁護士に相談を

「相続放棄を決めたときには熟慮期間を経過していた」ということがないように、相続放棄の検討をしている相続人の方は早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。

相続放棄をするかどうかを判断するにあたっては、被相続人の相続財産について正確な調査を行う必要がありますが、不慣れな個人では熟慮期間内に正確な調査を行うことは難しいでしょう。

一方で、弁護士であれば、正確な相続財産調査を行うことが可能になります。相続が開始したら早めに弁護士に相談すると良いでしょう。

また、何らかの理由によって相続放棄の申述が却下されてしまったとしても諦める必要はありません。

弁護士であれば、相続放棄の申述が却下になった理由を精査して、即時抗告によって結論が変わる可能性があるかを判断することができます。

もし、即時抗告が認められる可能性があるのであれば、説得的な即時抗告の理由を記載した申立書を作成して、代理人として即時抗告の手続きを進めていくことができます。

少しでも相続放棄の可能性があるのであれば、遺産の処分をする前に弁護士に相談するようにしましょう。

泉総合法律事務所では、相続問題についても長年取り組んでまいりした。
相続放棄でお悩みなら、是非一度、お気軽に泉総合法律事務所にご相談ください。

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