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家族信託

家族信託の当事者にかかる税金は?遺贈・生前贈与との違い

相続対策を行う際には、相続税や贈与税などの課税について気を配ることも大切です。

特に家族信託の場合、遺贈や生前贈与よりも当事者が多く、さらに「信託」という特殊なスキームを用いるため、課税関係が複雑になる点に注意しなければなりません。

税金の観点を含めた効果的な相続対策を実施するために、家族信託の課税関係について正しく理解しておきましょう。

この記事では、家族信託の各当事者にかかる税金の種類や、家族信託による節税効果の実態などについて解説します。

1.家族信託にかかる税金の種類

家族信託には、主に「委託者」「受託者」「受益者」の3当事者が登場します。

  • 委託者:信託財産を受託者に譲渡する人
  • 受託者:信託財産の譲渡を受け、受益者のために管理・運用・処分する人
  • 受益者:信託財産から利益を得る人

家族信託 関係図

家族信託の課税関係を正しく理解するには、上記の3当事者について、それぞれどのような課税が行われるかを知っておかなければなりません。

以下では、各当事者に対して課される税金の種類を解説します。

(1) 受益者に課される税金

家族信託を設定する場合、「委託者から受益者に対して、信託財産が移転したものとみなして課税する」という考え方が採用されています(所得税法13条1項)。

相続税や贈与税などの税金は、課税対象者の担税力(税金を支払う能力)に応じて課税するため、経済的な実質に着目して金額が決定されます。

家族信託の場合は、信託財産の形式的な所有者は「受託者」となりますが、実際に信託財産から利益を受けるのは「受益者」です。
したがって税法上は、委託者から受益者に信託財産の移転があったものとして、税金が課されることになっています。

上記の考え方を踏まえ、家族信託の受益者には以下の税金が課されます。

①贈与税

委託者から受益者に対して、信託財産に係る経済的価値が移転したことに伴い、受益者に贈与税が課税されます。

贈与税の税率は、一般贈与と特例贈与の場合で、以下のとおり異なる定めがなされています。

  • 一般贈与:特例贈与以外の贈与
  • 特例贈与:直系尊属(祖父母・父母など)から、課税対象年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与
<一般税率>
基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1000万円以下 1500万円以下 3000万円以下 3000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円
<特例税率>
基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1000万円以下 1500万円以下 3000万円以下 4500万円以下 4500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

【参考】贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

贈与税の基礎控除額は110万円とされているため、信託財産が110万円以下であれば、贈与税は課税されません。

また、信託財産の使途によっては、後述する特例を活用することにより、贈与税を軽減・免除できる可能性があります。

なお、委託者が受益者を兼ねる家族信託(自益信託)の場合には、経済的価値の移転は発生しないため、贈与税の課税は行われません。

②相続税

委託者が受益者を兼ねているケースで、委託者兼受益者が死亡した場合に後継受益者へ信託受益権を引き継ぐ場合には、相続税の課税対象となります。

各相続人の相続税額は、まず全相続人・受遺者などが承継する相続財産の総額に対する税額を計算した後、それを実際の承継割合に応じて按分することによって求められます。

相続税の税率は以下のとおりです。

基礎控除後の課税価格 1000万円以下 3000万円以下 5000万円以下 1億円以下 2億円以下 3億円以下 6億円以下 6億円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 50万円 200万円 700万円 1700万円 2700万円 4200万円 7200万円

相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。

したがって、後継受益者が引き継ぐ信託受益権の価値を含めて、全相続財産の総額が上記の金額以下である場合には、相続税は課税されません。

なお、信託設定時の委託者から受益者への経済的価値の移転についても、受益者が「相続時精算課税」を選択した場合には、相続税の課税対象となります。

【参考】No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

③譲渡所得税・住民税

受益者が家族信託によって取得した受益権を、第三者に対して譲渡する場合、譲渡価額から取得費を差し引いた利益分について、譲渡所得税・住民税が課税されます。

取得費は、委託者が当該信託財産を取得した際に支払った代金や費用の総額です。

なお、譲渡所得税・住民税の金額は、原則通り給与所得などの他の所得と合算した金額をもとに計算されます(総合課税)。

④(信託配当に対する)所得税・住民税

家族信託の信託財産を運用することにより得られた利益の中から、受益者が信託配当を受け取った場合には、その金額に対して所得税・住民税が課税されます。

(2) 受託者に課される税金

家族信託に関係する税金の大半は受益者に課税されますが、信託登記時の「登録免許税」と、毎年の「固定資産税」だけは受託者が負担する必要があります。

なおこれらの税金は、信託に伴う必要経費として、信託財産の中から支出することが可能です。

①登録免許税

不動産に家族信託を設定する場合、当該不動産について、信託がなされた旨の登記(信託登記)を行う必要があります。
その際、法務局に登録免許税を納付することが必要です。

信託登記の登録免許税率は、以下のとおりです。

  • 土地:固定資産税評価額の0.3%(租税特別措置法72条1項により軽減中。~2024年〔令和5年〕3月31日)
  • 建物:固定資産税評価額の0.4%

②固定資産税

家族信託の受託者は、信託財産の法的な所有者となります。
不動産などの固定資産については、毎年1月1日時点における所有者に対して課税されますので、家族信託の場合は受託者に対して課税されます。

固定資産税の税率は、居住する自治体によって若干異なりますが、固定資産税評価額の1.4%程度です。

(3) 委託者に課される税金

家族信託の委託者には、信託設定に伴い課される税金はありません。
また、これまで支払っていた不動産の固定資産税については、前述のとおり受託者へと支払い義務が移動します。

ただし、委託者が受益者を兼ねている場合(自益信託の場合)には、すでに解説した受益者としての納税義務が発生する点に注意しましょう。

(4) 不動産取得税は非課税

不動産を信託財産とする家族信託を設定すると、不動産の所有権が委託者から受託者へと移転します。

しかし、これは形式的な所有権移転に過ぎないため、不動産取得税は課税されないことになっています。

2.遺贈・生前贈与の課税関係について

相続対策としては、家族信託と並んで、遺贈(遺言による贈与)や生前贈与もよく活用されています。

遺贈と生前贈与については、家族信託とは課税関係が異なりますので、大まかな違いを理解しておきましょう。

(1) 遺贈の場合|相続税などが課税される

被相続人から遺贈を受けた者(受遺者)に対しては、相続税が課税されます(相続税法1条の3第1項)。

また、遺贈を受けて以降は受遺者が当該財産の所有者になるため、以下の税金が受遺者に課されます。

  • 譲渡所得税、住民税
  • (賃料収入などに係る)所得税、住民税
  • 登録免許税
  • 固定資産税
  • 不動産取得税

(2) 生前贈与の場合|贈与税などが課税される

生前贈与の場合、受贈者に対して贈与税が課税されます(相続税法1条の4)。

また、贈与を受けて以降は受贈者が当該財産の所有者となりますので、遺贈と同様、以下の税金が受贈者に課されます。

  • 譲渡所得税、住民税
  • (賃料収入などに係る)所得税、住民税
  • 登録免許税
  • 固定資産税
  • 不動産取得税
[参考記事] 生前贈与と税金|贈与税の計算と控除を活用した節税対策

3.家族信託は節税になる?遺贈や生前贈与との比較

「家族信託を利用すると節税になる」と言われることがあります。
しかし実際には、「家族信託」というスキームそのものに節税メリットがあるわけではありません。

家族信託の活用が節税に繋がり得るのは、贈与税を軽減・免除する特例をうまく活用した場合です。

前述の基礎控除(毎年110万円)以外に、たとえば以下の特例を活用すれば、贈与税が軽減・免除されます。

①障害者非課税信託

特定障害者が、特定障害者扶養信託契約に基づいて信託受益権を取得した場合には、信託受益権の価額のうち6000万円(特別障害者以外の者は3000万円)までの金額に相当する部分が非課税となります。

【参考】No.4405 贈与税がかからない場合 ※7番|国税庁

②教育資金贈与信託

30歳未満の者が、直系尊属を委託者とする家族信託に基づく信託受益権を取得した場合、信託受益権の価額のうち1500万円までの金額に相当する部分が非課税となります。

【参考】No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁

③結婚・子育て支援信託

20歳以上50歳未満の者が、直系尊属を委託者とする家族信託に基づく信託受益権を取得した場合、信託受益権の価額のうち1000万円までの金額に相当する部分が非課税となります。

【参考】No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁

 

これらの特例は生前贈与の場合も活用できるため、家族信託と生前贈与の間で節税効果に大きな違いはありません。

(前述のとおり、家族信託の場合は不動産取得税が課税されません。しかし、将来不動産自体を取得することになった場合にはその段階で課税されるので、家族信託を用いても課税の繰り延べ以上の効果はないといえます。)

家族信託と遺贈を比較すると、遺贈については上記の特例が活用できません。

しかし遺贈の場合、相続税特有の特例を活用できる場合があるほか、そもそも贈与税と相続税では、税率や計算方法が根本的に異なります。

上記のことを考慮すると、「節税」という観点からは、家族信託が生前贈与や遺贈よりもはっきり有利であるとは言えません。

実際に生前対策の方法を検討する際には、節税の観点だけにとらわれず、関係者がどのようなニーズを持っているかを的確に捉えたうえで、具体的な状況にマッチした方法を選択するという姿勢が大切です。

4.家族信託の税金シミュレーションは弁護士・税理士に相談を

相続対策を実施する際には、具体的な資産の運用計画を明確化しておく必要があります。
その際には、税金がいつどのくらいかかるのかを踏まえてシミュレーションを行うことが大切です。

弁護士にご相談いただければ、法的な観点からのアドバイスに加えて、税理士と連携したうえで各種税金に関するシミュレーションについてもサポートいたします。
相続対策をご検討中の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

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