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遺言書

遺言無効確認訴訟の流れ

被相続人が遺言書を残していた場合、被相続人の遺産は、当該遺言書の内容に従って分割することになります。

しかし、認知症と診断された被相続人が遺した遺言や、特定の相続人のみを有利に扱うような遺言には、その有効性に疑問を抱く相続人もいるかもしれません。

このような場合に遺言の有効性を争うことができる手段として「遺言無効確認訴訟」という裁判手続きがあります。

今回は、遺言書の有効性を争う手段である遺言無効確認訴訟について解説します。

1.遺言無効確認訴訟とは

遺言無効確認訴訟とは、裁判所に対して遺言書が無効であることの確認を求める訴訟手続きです。

遺言書の有効性に疑問を抱いている相続人が、当該遺言書の効力を否定するために提起します。遺言書の効力を否定しなければ、原則として当該遺言書の内容に従って遺産を分割することになるからです。

遺言無効確認訴訟は、遺言書の無効を判決によって確定させることによって、遺言書の内容に従った財産の帰属を防ぐ手続きであるといえます。

一般的に、単なる事実や過去の法律関係の確認を求める訴訟は迂遠であり、その後の法律関係の変動が考慮されておらず、現在の紛争がそれによって解決されるとは限らないため、有効適切な手段とはいえないと考えられています。

これに対して、遺言無効確認訴訟については、「遺言が有効であるとすれば、それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で、原告がかかる確認を求めるにつき法律上の利益を有するとき」には、適法であると解されています(最高裁昭和47年2月15日判決)。

2.遺言無効確認訴訟での主な無効原因

遺言無効確認訴訟を提起するのは、遺言書の有効性に疑問を抱いた場合です。
遺言が無効になる主な原因としては、以下の5つが挙げられます。

(1) 遺言の方式違反

遺言の方式違反とは、遺言書の方式が民法の定める要件(民法第960条以降)を満たしていない場合をいいます。

たとえば、自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付および氏名を自書し、これに印を押さなければならないとされています(民法968条1項)。
そのため、「令和3年1月」「令和3年1月吉日」という記載では、暦上の特定の日を表示するものとはいえず、方式違反により無効となります。

また、公正証書遺言は、2人以上の証人の立ち会いのもと公証役場の公証人が作成しますが(民法969条1号)、証人の人数が足りていなかったり、証人として不適格な人物が立ち会ったりした場合には、同じく方式違反により無効となります。

(2) 共同遺言

共同遺言とは、複数の遺言者が同じ遺言書で遺言をすることをいいます。

民法では、共同遺言では、遺言内容が遺言者の真意に基づかないものになってしまったり、遺言者による自由な撤回が妨げられたりするなどの理由から禁止されています(民法975条)。

そのため、共同遺言がなされていた場合には、遺言無効原因となります。

(3) 錯誤、詐欺

錯誤とは、表意者が意思表示の際に、内心と表示行為との間に不一致があることに気づいていない場合で、かつその不一致が重要なものであることを言います。

簡単にいえば、遺言者の勘違いによって、思っていた内容とは違う内容の遺言をした場合をいいます。ただし、勘違いであればどのような場合でも無効になるというわけではなく、法律行為の要素に錯誤があった場合に限り無効となります。

たとえば、AにX不動産を相続させると書こうとしたところ、誤ってAにY不動産を相続させるという内容を記載してしまった場合には、重要な事実についての錯誤になり、取消原因となります(旧法の規定が適用される場合は、無効原因になります)。

また、相続人などにだまされるなど、詐欺によって遺言書を作成した場合には、遺言者の意思表示には瑕疵があることになり、相続人による取消権行使によって当該遺言は無効となります。

(4) 公序良俗違反

遺言者は、原則として遺言によって自由に財産を処分することができますが、その内容が社会常識に反して是認することができないような内容である場合には、公序良俗違反として無効になります(民法90条)。

本来、遺言により、第三者に遺贈することは有効です。しかし、例えば、不倫関係にある愛人に全財産を遺贈する内容の遺言書が、不倫関係の維持を目的として作成され、かつ「全財産を遺贈する」という点が相続人の生活基盤を脅かすことになれば、相続人には遺留分侵害額請求等による保護があっても、公序良俗違反として遺言が無効になる可能性が高いといえます。

(5) 遺言能力の不存在

遺言者が有効に遺言を作成するためには、遺言者に遺言能力があることが必要になります。遺言能力とは、遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識しうるに足る判断能力のことをいいます。

遺言能力の不存在については、主に、遺言者が認知症であった場合に問題となりますが、認知症であるからといって直ちに遺言能力が否定されるわけではありません。遺言者の生活状況や遺言書の内容などを踏まえて個別具体的に遺言能力は判断されることになります。

その結果、遺言能力が否定された場合には、当該遺言については無効となります。

[参考記事] 認知症の人が書いた遺言書は有効か|遺言能力と判断基準

3.遺言無効確認訴訟の流れ

遺言無効確認訴訟を提起する場合には、以下のような流れで進んでいきます。

(1) 遺言無効確認調停の申立

遺言無効確認請求は家庭に関する事件となり、遺言無効確認訴訟の提起に先立って、家庭裁判所の調停を経ることが必要になります。これを「調停前置主義」といいます。

そのため、いきなり遺言無効確認訴訟という民事訴訟を提起するのではなく、まずは家庭裁判所に遺言無効確認の調停を申し立てなければなりません。

しかし、遺言無効確認請求は、遺言が有効か無効かという二者択一の選択を当事者に迫るものであり、調停では解決することが難しいケースがあります。
そのような場合には、早期に調停を打ち切って、遺言無効確認訴訟に移行すると良いでしょう。

(2) 遺言無効確認訴訟の提起

遺言無効確認調停によって遺言の有効性について結論が得られなかった場合には、裁判所に訴状を提出して遺言無効確認訴訟を提起することになります。

①当事者

遺言無効確認の訴えは、遺言が有効であると主張する相続人や受遺者のみを被告として提起すれば足りることになります。

ただし、遺言無効確認訴訟の判決の効力は、訴訟当事者のみに及ぶことになります。他の相続人に対しても判決の効力を及ぼしたい場合には、遺言が有効であると主張する相続人や受遺者以外も当事者に加えると良いでしょう。

②管轄裁判所

遺言無効確認訴訟の管轄裁判所は、被告の住所地及び相続開始時における被相続人の住所地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所になります。

また、当事者が合意で定める地方裁判所又は簡易裁判所にも管轄が認められます。

(3) 遺言無効確認訴訟の審理

遺言無効訴訟では、主に遺言の無効原因の存否が争われることになります。

原告および被告から遺言の無効原因の存否をめぐる主張立証を行っていくことによって、遺言無効確認訴訟の審理は進んでいきます。

(4) 遺言無効確認訴訟の判決

審理の結果、遺言無効の判決を得た場合には、当該遺言は当事者間で無効となります。

しかし、遺言無効確認訴訟の判決は、単なる確認判決に過ぎません。したがって、遺言に基づいて既に登記手続きがなされており、登記名義人が任意に抹消登記手続きに応じそうにない場合には、併せて別訴によって抹消登記を求める給付判決を得る必要があります。そもそも最初から確認訴訟ではなく、給付請求訴訟を提起すべきケースもあります。

また、遺言無効の判決を得ただけでは、遺産の帰属は決まりません。そのため、遺言無効判決確定後に遺産分割手続きが必要になり、遺産分割協議や遺産分割調停を進めていくことになります。

さらに、自筆証書遺言の無効理由が相続人による偽造であると認定された場合には、相続人欠格事由(民法891条5号)に該当します。
ただ遺言無効確認訴訟の判決理由中の記載のみでは、当該相続人を欠格者とすることはできませんので、別途、相続権不存在確認訴訟の提起が必要になります。

4.遺言無効確認訴訟で知っておくべきこと

次に、遺言無効確認訴訟の消滅時効や要する期間、遺言の方式による無効になる可能性の違いなどについてご紹介します。

(1) 遺言無効確認訴訟の提起に時効はない

遺言無効確認訴訟に消滅時効はなく、提起すべき期限は存在しません。しかし、訴訟まで期間が開くほど、証拠は散逸し、収集に手間がかかる可能性が大きくなります。

さらに、遺留分侵害額請求権には、遺留分権利者が、遺留分を侵害する贈与・遺贈を知ってから1年という消滅時効が存在します。

遺留分侵害額請求をすることで時効は中断しますが、遺言無効確認訴訟は、遺留分侵害額請求権の時効の中断事由とはなりません。遺言により取得する相続分に不服がある場合には、遺言を有効とする判決も想定して、遺留分侵害額請求訴訟を同時に提起する必要があるでしょう。

遺留分侵害額請求権の時効 [参考記事] 遺留分侵害額請求には時効がある!期限と時効の防ぎ方を解説

(2) 遺言無効確認訴訟にかかる期間

遺言無効確認訴訟は、時間がかかる訴訟手続きです。訴訟提起の準備に数カ月、第一審に1年から2年、控訴審に半年から1年、上告審に半年程度は見ておかなければなりません。また、前述した通り、遺言無効との判決を受けた後には、遺産分割協議をし、まとまらなければ、調停・審判へと移行します。

遺言無効確認訴訟自体に相当の時間がかかるほか、その後の手続きなどにも考慮して臨む必要があります。

(3) 遺言の方式により無効となる可能性に違いはあるか

遺言の方式には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3つがあります。では、この方式の違いによって、無効になる可能性に違いはあるのでしょうか。

前述した通り、自筆証書遺言は、方式が厳格に定められています。秘密証書遺言は、遺言書すべてを自書する必要はありませんが、遺言書自体は遺言者が自分で作成することに変わりありません。

そういう意味では、公証人が遺言の作成に関わる公正証書遺言は、方式違反で無効になる確率が他の方式に比べて低いとは言えるでしょう。

ただし、公正証書遺言であっても、遺言無効確認訴訟で無効になる可能性はゼロではありません。無効になった裁判例など、詳しくは、次の参考記事を是非ご一読ください。

[参考記事] 公正証書遺言も無効になることがある?効力と裁判例

5.相続に関する訴訟事件を弁護士依頼するメリット

相続に関する訴訟事件については、弁護士に依頼することをおすすめします。

遺言無効確認訴訟については、単に遺言が無効であると主張するだけでなく、どのような無効原因に基づくのかを具体的に主張して、それを証拠によって立証していかなければなりません。

たとえば、遺言者の遺言能力を争う場合には、診断書、診療記録などの客観的証拠から、遺言者が遺言書を作成した当時、遺言能力がなかったこと(被告側ならあったこと)を立証していかなければなりません。

訴訟手続きに不慣れな方にとっては、どのような証拠が必要になるのか、どのように証拠を収集すれば良いのかなどが分からず、裁判を有利に進めていくことが難しいのが現実です。

適切な主張立証ができなかったことによって、本来であれば勝てるはずの裁判で負けてしまうということもあります。相続に関する訴訟事件については、専門家である弁護士に依頼するようにしましょう。

また、遺言無効確認訴訟によって遺言の無効が認められたとしても、それによって遺産分割をめぐる争いが解決するわけではなく、その後も遺産分割協議などを経て被相続人の遺産を分割しなければなりません。

そのため、相続トラブルが発生した場合には、早期に弁護士に相談をして、遺言無効確認から遺産分割までの一連の相続にする手続きをサポートしてもらうと良いでしょう。

なお、遺言無効確認訴訟を依頼した場合の弁護士費用については、相談に行った先の弁護士にご確認ください。

当事務所における遺言無効確認の弁護士費用については、以下の費用ページ(8.遺言無効確認)でご確認いただけます。
なお遺言の無効を主張する場合(原告)、有効を主張する場合(被告)のどちらについてもご依頼を承っておりますので、安心してご相談ください。

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