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成年後見人の報告|初回報告・定期報告・臨時報告

障害や認知症などにより判断能力に欠けるご家族がいらっしゃる方は、成年後見人を選任するケースがあります。

選任された成年後見人は、就任時をはじめ、定期的に状況報告を行わなければなりません。

そこで、今回の記事では「成年後見人の報告(初回報告・定期報告・臨時報告)」に焦点を当てて、成年後見人の報告事項について説明します。

1.成年後見人の報告義務

最初に、成年後見人とは何か、および、報告義務の概要について説明します。

(1) 成年年見人とは

成年後見人とは、障害や認知症等のために判断能力が欠ける者(被後見人)に代り、財産管理や被後見人の生活・治療・介護等に関する法律行為である身上監護を行う人のことで、家庭裁判所が選任します。

(2) 成年後見人の報告義務

成年後見人となった場合は、下記の決まったタイミングで、成年被後見人の状況について報告を行わないといけません。

報告先

  • 家庭裁判所

報告すべきタイミング

  • 就任時:就任報告
  • 就任中:年一回定期報告
  • 終了時:終了報告

2.成年後見人の就任報告

では最初に、成年後見人の就任時の報告について説明します。

(1) 就任報告の提出書類

成年後見人の就任が決まったら、まず、成年被後見人の財産を調査・把握して財産目録を作ります。

次に、成年被後見人の年間や月間の収入、支出を調査・把握して、本人の生活プランを立てて年間収支予定表を作ります。

初回報告として、このように作成した財産目録や年間収支予定表に加えて、必要な添付書類を提出します。

就任時に報告する書類は、その後の定期報告においての基礎となるものです。

提出書類をまとめると、次のようになります。

就任報告の提出書類

  • 財産目録
  • 年間収支予定表

主な添付書類

  • 普通預金・貯金の通帳のコピー、または通帳に代わる書面のコピー
  • 定期預金・定期定額貯金の通帳や証書のコピー、残高証明書等のコピー

申立時に未提出、あるいは、内容に変化があった場合の添付書類

  • 有価証券の残高報告書等のコピー
  • 不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)のコピー
  • 保険証券のコピー
  • その他資産関係の資料のコピー

(2) 提出期限

提出期限は、事前に送付される書面に記載されています。
東京家庭裁判所では、原則、審判の日から2ヶ月以内となっています。

期限までに提出ができない事情があるときは、必ず期限前に、連絡表に、次の事項を記載して、家庭裁判所に送付する必要があります。

  •  提出が間に合わない理由
  • 提出が可能になる見込みの年月日

なお、提出期限までに書類の提出がない場合は、弁護士等の専門職を調査人に選任して、後見事務や財産状況の調査を命じたり、専門職を後見人等に追加選任したり、後見監督人に選任することがあります。

さらに、任務違反を理由に後見人を解任されることもありますので、注意が必要です。

3.成年後見人の定期報告

次に、成年後見人に就任した後、定期的に行なう報告について見ていきます。

(1) 報告時期

年1回、あらかじめ定められた報告時期に、家庭裁判所に定期的に報告します。
期限までに提出できない事情があるときは、事前に、裁判所に連絡をしないといけません。

なお、提出期限までに提出がない場合は、弁護士等の専門職を調査人に選任して、後見事務や財産状況の調査を命じたり、専門職を後見人等に追加選任したり、後見監督人に選任することがあります。

さらに、任務違反を理由に後見人を解任されることもありますので、注意しましょう。

(3) 定期報告の提出書類

定期報告では、前年の財産や収支計画との違い、変化の内容を報告します。
また、住所や健康状態・生活状況に変化があった場合も、合わせて報告します。

定期報告として、次の書類を作成して家庭裁判所に提出します。

定期報告の提出書類

  • 後見等事務報告書
  • 財産目録

主な添付書類

  • 普通預金・貯金の通帳のコピー、または通帳に代わる書面のコピー
  • 定期預金・定期定額貯金の通帳や証書のコピー、残高証明書等のコピー

前回の報告から変化があった場合の添付書類

  • 有価証券の残高報告等のコピー
  • 不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)のコピー
  • 保険証券のコピー
  • その他資産関係の資料のコピー
  • 本人の住居所が変わった場合は住民票等のコピー
  • 本人の定期的収入や支出が変わった場合は、その変化内容がわかる資料のコピー
  • 1回10万円を超える臨時収入・支出があった場合は、その内容がわかる資料のコピー

4.成年後見人の臨時報告

成年後見人に就任した後は、年1回の定期報告以外に、臨時で報告しないといけない事項や、事前に申立てを行う必要がある事項等があります。
臨時報告等の対象は、下記のようなケースです。

① 必ず連絡すべき事項
② 判断に迷ったときの連絡事項
③ 選任後の各種申立て

ここでは、具体的に、どのようなケースで臨時報告等が必要か見ていきます。

(1) 必ず連絡すべき事項

次の「必ず連絡すべき事項」が発生した場合は、「連絡表」に必要事項を記入し、添付書類を添えて、家庭裁判所に提出します。

後見人又は本人が転居したとき

住民票の異動のあるときには住民票、施設入所の場合は入所契約書の写しを提出します。

後見人又は本人が死亡したとき

除籍謄本又は死亡診断書の写しを提出します。

後見(保佐、補助)事務報告書の提出が遅れるとき

連絡表に遅れる理由等を記載して提出します。

(2) 判断に迷ったときの連絡事項

下記のような「判断に迷う事項」が生じた場合は、「連絡票」により、裁判所にお伺いを立てることができます。

保険金など多額の金銭を受領したとき

支払い通知書の写し、入金先の預貯金通帳の写し等を提出します。

遺産分割や相続放棄をするとき

遺産分割協議書案、遺産目録、不動産の全部事項証明書、預貯金通帳の写し等を提出します。

大きな財産(不動産等)を処分するとき

見積書、不動産評価証明書等を提出します。

高額商品(1件50万円以上の商品やサービス)を購入するとき

パンフレット、見積書等を提出します。

債務を返済するとき

借用書等を提出します。

立替金を精算するとき

立替金目録等を提出します。

(3) 選任後の各種申立て

成年後見人に就任中に、事前に申立てを行わないといけない事項がいくつかあります。

特別代理人の選任申立て

本人と後見人が共同相続人として遺産分割協議をする場合など、本人と後見人間の法律上の利害が衝突する利益相反行為については、後見人に代わって、裁判所が選任した特別代理人が本人を代理することになります。

申立てに必要な主な提出書類は、次のようなものです。

  • 申立書
  • 申立人及び本人の登記事項証明書または住民票(本籍の記載のあるもの)(※)
  • 特別代理人候補者の住民票
  • 利益相反行為やその事情を示す資料(遺産分割協議書等)

※ただし、今まで提出されている書類と身分事項に変動がない場合には,提出不要です。

居住用不動産処分許可の申立て

本人の居住用不動産を売却や、取り壊す、抵当権等を設定する、賃貸する、賃貸借契約の解除をするといった処分をする場合には、裁判所の許可が必要です。裁判所の許可を得ずに行った契約は無効となります。

申立てに必要な主な提出書類は、次のようなものです。

申立てに必要な主な提出書類

  • 申立書
  • 申立人及び本人の住民票(既に提出してあり、記載内容に変更がない場合には不要)

不動産を売却する場合に必要な主な提出書類

  • 処分する不動産の全部事項証明書(既に提出してあり、記載内容に変更がない場合は不要)
  • 不動産売買契約書の案
  • 処分する不動産の固定資産評価証明書
  • 不動産業者作成の査定書

不動産売却以外の申立てに必要な書類については、裁判所にご確認ください。

なお、ここで説明した2つの申立て以外にも、「成年後見人等辞任/成年後見人等選任の申立て」「報酬付与の申立て」などがあります。

5.成年後見人の終了報告

成年被後見人が亡くなった場合も、前述した臨時報告における「必ず連絡しなければならない事項」の1つです。

ここでは、成年後見終了の報告として、成年被後見人が死亡した場合の報告について見ていきます。

終了報告は、基本的には、成年被後見人が亡くなったこと、および、本人の財産を相続人等に引き継いだ旨を報告します。

(1) 成年被後見人の死亡報告

成年被後見人が死亡した日から2週間以内に、死亡診断書または除籍謄本や住民票除票のコピーを添えて、家庭裁判所に提出します。

(2) 管理の計算

成年被後見人が死亡した日から2ヶ月以内に、管理の計算(未精算の費用等を精算し、相続人に引継ぐ財産を確定する作業)を行い、収支計算書と財産目録を作成します。

(3) 財産の引き渡し、家庭裁判所への報告

管理計算が終了しましたら、成年被後見人が死亡した日から6ヶ月以内に、成年被後見人の財産を相続人等に引き継ぎます。

引き継ぎに際しては、引継書を作成して、受取人の署名・捺印を取得しておきます。

財産引き継ぎまで終了したら、家庭裁判所に下記の書類を提出して、成年後見事務が終了したことを報告します。

終了報告の提出書類

  • 終了報告書
  • 引継書
  • 財産目録
    など

6.まとめ

今回は、「成年後見人の報告」に焦点を当てて見てきました。

人生100年時代といわれる超高齢化社会の中、すでに認知症などにより成年被後見人となっているご家族がいらっしゃる方や、すでにご家族の後見人になっている方もいらっしゃることと思います。

今回の記事で、成年後見人に義務づけられている「報告」にはどのようなものがあるのか、おわかりいただけたことと思います。

とはいえ、成年後見制度は、私たちにとってはまだまた馴染みのない制度です。
成年後見制度をすでに利用している方をはじめ、成年後見制度の利用を考えている方についても、信頼できる法律事務所にご相談されてはいかがでしょうか

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