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後見・死後委任

任意後見契約の変更・解除は可能?

任意後見契約は、本人が死亡するまで続く長い契約になります。その間には状況が変わる可能性があり、契約内容の変更をしたい場合や、解除したい場合が出てくることは十分にあり得ます。

まず結論ですが、任意後見契約は自由な意思に基づいて行われるものであるため、任意後見契約の変更・解除は可能です。ただし、それぞれに条件があるため詳しくご説明します。

1. 任意後見の契約内容には変更できないものがある

任意後見契約は変更できると冒頭に記載しましたが、すべてが変更できるわけではない点に注意しなければなりません。変更できない内容もあります。

(1) 変更できない契約内容

後見登記法には、次の事項等について変更があった場合においては、変更の登記を申請しなければならないと定められています(後見登記等に関する法律第7条第1項)。

  • 成年被後見人、被保佐人又は被補助人の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
  • 成年後見人、保佐人又は補助人の氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)
  • 成年後見監督人、保佐監督人又は補助監督人が選任されたときは、その氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)
  • 任意後見契約の委任者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
  • 任意後見受任者又は任意後見人の氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)
  • 任意後見監督人が選任されたときは、その氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)並びにその選任の審判の確定の年月日

対して、これら以外の変更については変更登記を申請できないということであるため、任意後見契約は次の通り、当事者と代理権にかかわる内容については変更することはできず、既存の任意後見契約を解除したうえで、新たな任意後見契約を締結することになります。

  • 任意後見人・任意後見受任者(契約の発効前の受任者)の変更
  • 任意後見人・任意後見受任者の代理権の範囲の変更

(2) 変更できない場合は解除して新たに契約締結

任意後見人や任意後見受任者を変更したい場合には、現在の任意後見契約を解約して、新たに希望する任意後見受任者と新たな任意後見契約を締結し直します。

同様に、任意後見人や任意後見受任者が行うことができる代理権の範囲を変更したい場合にも、一旦解約した後、新たな任意後見契約に希望の代理権の範囲を定めます。

ただし、代理権の範囲を追加して拡張することに限っては、追加部分について新たな契約を締結することで変更可能です。任意後見契約は、公正証書にしなければ効力が発生しないため、この場合も、新たな任意後見契約書は、必ず公正証書化する必要があるので注意しましょう。

また、一旦解除して新たに任意後見契約を締結しようとしたときには、既に本人の判断能力が低下し、契約締結が難しい場合もあります。その場合には、成年後見制度に移行する方法も検討する必要があります。

2.任意後見契約の解除方法

任意後見契約の効力が発生するのは、本人の判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したところからです。

任意後見契約を解除する場合には、その効力が発生しているか否かによって手続きが異なります。

(1) 任意後見契約の効力発生前(任意後見監督人選任前)

任意後見契約は締結しているけれども、まだ本人に十分な判断能力があるため、任意後見契約の効力が発生していない段階で契約解除をする場合、本人または任意後見人は、公証人の認証を受けた書面によって、いつでも任意後見契約を解除することができます。(任意後見契約に関する法律第9条第1項)

合意解除の場合には、本人と任意後見人の合意を行い、両者が署名捺印した合意解除書に公証人の認証を受けることで、解除の効力が発生します。

本人または任意後見人のどちらか一方から解除する場合には、委任者が署名捺印した解除通知書に公証人の認証を受け、これを相手方に配達証明付き内容証明郵便で送付し、その旨を通告します。

(2) 任意後見契約の効力発生後(任意後見監督人選任後)

任意後見監督人が選任され、任意後見契約の効力が発生した後に解除する場合は、正当な事由がある場合に限り、かつ、家庭裁判所の許可を得て解除することができます。(任意後見に関する法律第9条第2項)

家庭裁判所の許可を得た後は、解除の申し立てを行った本人または任意後見人が、相手方に解除の意思表示をすることで、任意後見契約が終了になります。

正当な理由とは、次のように任意後見人による任意後見事務の遂行が困難であることが挙げられます。

  • 病気などで、職務を行うことが困難になった
  • 当事者一方が遠方に引っ越したことで困難になった
  • 本人・本人の家族と任意後見人の信頼関係が損なわれた
  • 任意後見人に職務を果たさないなどの債務不履行がある
  • 本人の意思能力や真意を確認した上で、当事者双方の真意に基づく合意解除
    など

ただし、任意後見契約の効力が発生しているということは、本人の判断能力が低下しているということであるため、解除と同時に成年後見制度の利用も検討しましょう。

(3) 任意後見契約を解除した際には終了登記が必要

任意後見契約の効力発生前、発生後を問わず、任意後見契約を解除した場合は、終了登記が必要となります。

前述したいずれの方法によって解除したかによって、申請書類が異なります。

任意後見契約の効力発生前:合意解除の場合

合意解除書の原本または認証のある謄本を添付書類として登記申請をします。

任意後見契約の効力発生前:一方からの解除の場合

郵便局から受領した内容証明郵便の謄本と、配達証明の葉書を添付書類として登記申請をします。

任意後見契約の効力発生後

解除の意思表示をした書面、書面が到達したことを証明する書面、家庭裁判所が許可した審判書、審判の確定証明書を添付書類として登記申請をします。

3.まとめ

任意後見契約の締結からその効力が発生するまでの期間は様々ですが、多くの場合で年単位の期間を要します。その間に契約内容を変更したくなるということは、当然に起こり得ることです。

任意後見人と任意後見受任者の変更、与える代理権の範囲の変更については、一旦、契約解除してから新たに契約を締結し直す必要がありますが、報酬の変更などこれら以外の変更については契約変更で対応することができます。

一般の方が独自に対応することは困難であるため、検討される際には弁護士に相談しましょう。

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