特例贈与財産とは|一般贈与財産との違いなどを徹底解説
贈与税は、贈与者(贈与する側)と受贈者(贈与を受ける側)の関係によって税率が違うのをご存知でしょうか。
特例贈与財産に該当する贈与では、一般の場合より贈与税が軽減されるため、賢く利用することで相続税対策の幅も広がります。
今回は、特例贈与財産について解説します。
1.特例贈与財産とは
まずは、特例贈与財産とはどういうものかについて解説します。
(1) 特例贈与財産について
2015年の贈与税改正によって、贈与された財産を、「特例贈与財産」と「一般贈与財産」に分け、それぞれに異なる税率が制定されました。
特例贈与財産に該当するのは、直系尊属(父母や祖父母など)から18歳以上(※)の直系卑属(子や孫など)へ贈与された財産です。親から子、祖父母から孫といった家族内の贈与は、基本的に特例贈与財産に該当するということになります。
直系卑属が18歳以上か否かを判断するのは、贈与を受けた年の1月1日になります。
※ 2022年3月31日以前の贈与については「20歳」となります。
受贈者が養子の場合
養子は実子と同様に扱うため、直系卑属に該当し、養親から養子への贈与財産は特例贈与財産に該当します。
ただし、養親が養子の子(養親の孫)へ贈与する場合には、出生と養子縁組のタイミングで判断することになります。
子連れで養子にした場合には、義親と養子の子の間に血縁関係はないものとして、養子の子は直系卑属にはならず、次項で解説する一般贈与財産になります。
一方、養子にした後に出生した子については、義親の孫として直系卑属に該当し、18歳以上の養子の子に贈与すると、贈与した財産は、特例贈与財産に該当することになります。
(2) 一般贈与財産とは
一般贈与財産とは、特例贈与財産の要件を満たさない贈与財産のことをいいます。したがって、特例贈与財産に該当しなかった贈与財産は、すべて一般贈与財産になります。
一般贈与財産に適用される一般税率は、特例税率よりも高く設定されています。
(3) 特定贈与財産との違いについて
特例贈与財産と混同されやすいものに、「特定贈与財産」があります。
特定贈与財産とは、贈与税の配偶者控除における控除額に相当する財産であり、生前贈与加算がなされないため、贈与税も相続税も課税されずに夫婦間で贈与できる財産となります。
したがって、特例贈与財産と特定贈与財産とは、まったく違うものです。
2.特例贈与財産と一般贈与財産の違い
特例贈与財産と一般贈与財産では、贈与税額にどこまで差があるものなのでしょうか。
具体例を用いて解説します。
(1) 特例贈与財産と一般贈与財産の税率の違い
特例贈与財産に適用される税率を「特例税率」、一般贈与財産に適用される税率を「一般税率」といいます。
税率を見ると、特例税率は、一般税率より贈与税額が少なくなるように設定されているのが分かります。
ただし、贈与した額から基礎控除110万円を控除した後の課税価格が300万円以下であれば、どちらの税率になろうと贈与税額は変わりません。
したがって、課税価格300万円超(贈与額410万円超)から、どちらの税率が課されるかによって、贈与税額に差が付きます。
基礎控除後の課税価格 (贈与額-110万円) |
特例税率 (特例贈与財産用) |
一般税率 (一般贈与財産用) |
||
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税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
~200万円以下 | 10% | – | 10% | – |
200万円超~300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
300万円超~400万円以下 | 20% | 25万円 | ||
400万円超~600万円以下 | 20% | 30万円 | 30% | 65万円 |
600万円超~1,000万円以下 | 30% | 90万円 | 40% | 125万円 |
1,000万円超~1,500万円以下 | 40% | 190万円 | 45% | 175万円 |
1,500万円超~3,000万円以下 | 45% | 265万円 | 50% | 250万円 |
3,000万円超~4,500万円以下 | 50% | 415万円 | 55% | 400万円 |
4,500万円超~ | 55% | 640万円 |
【参考サイト】No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
(2) 特例税率と一般税率の贈与税額を計算・比較してみる
特例税率と一般税率でどれほど贈与税額に差が出るのか計算してみましょう。贈与財産額は2,000万円とします。
特例税率
(20,000,000円-1,100,000円)×45%-2,650,000円=5,855,000円一般税率
(20,000,000円-1,100,000円)×50%-2,500,000円=6,950,000円
同じ財産を贈与しても受贈者(贈与を受ける側)が異なるだけで、贈与税が1,095,000円も変わることになります。
贈与税率は贈与額が大きくなれば税率も上がる累進課税率となっているため、贈与財産額が増えれば増えるほど、この差は開いていくことになります。
大きな贈与を行う場合ほど、贈与先の考慮は重要になります。
3.特例贈与財産と相続税
特例贈与財産は、直系尊属から18歳以上の直系卑属への贈与財産であるため、贈与者に相続が発生した際には、受贈者が相続人になる可能性があり、相続税の生前贈与加算の対象となる可能性が高くなります。
生前贈与加算とは、相続開始前一定期間内に行われた贈与については、相続税計算に加算しなければならない仕組みのことで、加算対象となった贈与はなかったものなってしまいます。すなわち、贈与税の基礎控除に関係なく相続税の加算対象となるため注意が必要です(ただし、既に支払った贈与税分は控除することができます。)。現在は、この生前贈与加算の期間は3年となっていますが、この期間は7年に延長されることになっており、2024年の1月1日の贈与から適用になります。
生前贈与加算の対象になるのは、相続または遺贈により財産を取得した人です。
生前贈与加算の対象とならないケースには、受贈者が孫の場合が想定されますが、受贈者である孫が代襲相続すると、生前贈与加算の対象です。
生前贈与加算の対象とならないためにも、贈与はできるだけ早めに開始することをお勧めします。
[参考記事] 生前贈与加算とは?4.特例贈与財産についてのよくある質問(FAQ)
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特例贈与財産と一般贈与財産で贈与税申告の添付書類に違いはあるの?
贈与税申告の際に必要な本人確認書類
まず、贈与税の申告の際には、特例贈与財産・一般贈与財産を問わず、マイナンバーカードなど本人確認書類が必要となります。
特例贈与財産の贈与税申告をする際の添付書類
特例贈与財産の贈与税の課税価格が300万円を超える(贈与額-基礎控除額110万円>300万円)場合には、受贈者が18歳以上で、直系尊属から贈与を受けたことを証する添付書類として以下を提出する必要があります。
- 受贈者の戸籍謄本または抄本
- 受贈者の人の氏名、生年月日及びその人が贈与者の直系卑属に該当することを証する書類
したがって、親からの贈与には、受贈者の戸籍謄本を添付すれば足りますが、受贈者の祖父母からの贈与には、祖父母の子であるご両親いずれかの戸籍謄本も一緒に提出する必要があります。
一般贈与財産の贈与税申告をする際の添付書類
一般贈与財産の受贈者は、贈与税の申告をする際に、申告書以外には添付すべき書類はありません。
特例・控除を受ける場合など
以上はあくまで基本の添付書類となります。適用を受ける特例・控除によって添付書類が必要となります。
また財産評価が必要な土地などの贈与を受けた場合には、評価明細書などを添付しなければならないことがあります。詳しくは、税務署や税理士にお問い合わせください。
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相続時精算課税制度での特例贈与財産の扱いは?
相続時精算課税制度とは、贈与時には贈与税が非課税となり、贈与者である被相続人の死亡時に、相続財産に含めて相続税が課税される制度です。
この相続時精算課税制度を適用できるのは、60歳以上の父母や祖父母などの直系尊属から18歳以上の子・孫への生前贈与です。したがって、相続時精算課税制度は、特例贈与財産についてのみ利用可能ということになります。
また、相続時精算課税制度では、2,500万円までの贈与は非課税となり、2,500万円を超える部分については、一律20%の贈与税が課されることになります。
さらに2024年1月1日以降は、年110万円までの贈与について、贈与税も相続税も非課税となります。
5.まとめ
贈与が行われた際には、特例贈与財産と一般贈与財産のいずれに該当するかによって贈与税率が変わります。贈与額が大きくなればなるほど、贈与税の差額は大きくなるため、判断を間違わないように十分注意しなければなりません。
また、特例贈与財産に該当し、贈与税が少なく済んだと安心していたら、生前贈与加算の対象になってしまったというケースもあります。
生前贈与を使った相続税対策は、長い見通しの上で行わなければなりません。