相続人に連絡を取るための手紙|例文・ポイント・注意点

相続が開始した場合には、相続人全員による遺産分割協議を行わなければなりません。
相続人全員が普段から連絡を取り合っているような仲であれば、特に問題はありません。しかし、被相続人の前の配偶者との間の子どもや甥・姪など面識のない方が相続人になる場合には、遺産分割協議を始める前にその方と連絡を取らなければなりません。
疎遠になっている相続人や面識のない相続人と連絡を取る場合には、どのような方法があるのでしょうか。また、手紙で連絡を取る場合にはどのような内容の手紙を送ればよいのでしょうか。
今回は、疎遠または面識のない相続人と連絡をとるための手紙の作成方法などについて解説します。
1.相続人の範囲について
相続が開始した場合には、どの範囲の親族が相続人になるのでしょうか。
(1) 法定相続人について
相続が開始した場合の相続人の範囲については、民法で以下のように規定されています。
- 配偶者
- 子どもおよびその代襲相続人(第1順位)
- 両親などの直系尊属(第2順位)
- 兄弟姉妹およびその代襲相続人(第3順位)
被相続人に配偶者がいる場合には、常に相続人となることができますが、それ以外の人については、先順位の相続人がいない場合に限って相続人になることができます。
たとえば、被相続人の兄弟姉妹は、被相続人に子どもおよびその代襲相続人、両親などの直系尊属がいない場合に限って相続人になることができます。
(2) 遺産分割協議では相続人全員の同意が必要
被相続人が遺言書を作成することなく死亡した場合には、上記の法定相続人による遺産分割協議によって遺産の分割方法などを決めることになります。
そして、遺産分割協議を有効に成立させるためには、相続人全員が遺産の分け方について同意をすることが必要になります。
そのため、面識がないからという理由で、相続人のうち1人でも欠いた状態で遺産分割協議をしたとしても、その遺産分割協議は無効となります。
他の相続人全員が合意をしていたとしても遺産分割をやり直す必要がありますので注意が必要です。
このように、遺産分割協議には、面識がない相続人や疎遠となっている相続人も必ず含めなければなりませんので、まずはその相続人と連絡を取る必要があるのです。
2.面識がない相続人に連絡を取る手段
面識がない相続人や疎遠になっている相続人の連絡先は知らないのが通常です。
そのような場合には、以下のような手段で連絡を取ることになります。
(1) 相続人の調査
被相続人が亡くなった場合には、電話やメールなどを利用して親族に訃報を知らせるのが一般的です。
しかし、面識がない相続人の場合には、電話番号やメールアドレスを把握していませんので、それらの手段を利用することはできません。
面識がない相続人がSNSを利用している場合には、SNS経由でメッセージを送るという方法も考えられますが、別人であるという可能性もありますし、突然面識のない方からメッセージが来ても警戒される可能性もありますので控えた方がよいでしょう。
このようなケースでは、面識がない相続人の「住所」を調べるという方法が一般的な手段です。
「住所がわからない相手の住所をどうやって調べるの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、「戸籍の附票」を取得することによって、住所を確認することができます。
戸籍の附票とは、本籍地の市区町村において戸籍の原本とともに保管されている書類のことをいい、戸籍が作られてから現在までの住所が記録されている書類です。
まずは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを取得し、そこから派生して面識がない相続人の戸籍謄本も取得します。
戸籍謄本に記載されている本籍地がわかれば、本籍地の市区町村役場において戸籍の附票を請求することができます。
(2) 手紙を書く
戸籍の附票を取得することによって相手の住所を把握することができますが、いきなり相手の自宅を訪ねるということは控えるようにしましょう。
相手も当然面識がないわけですから、いきなり面識のない人が自宅に訪ねてくると相手も警戒してしまい、その後の遺産分割協議にも悪影響が及ぶ可能性もあります。
そのため、まずは、手紙を書く方法によって、相手と連絡を取るようにしましょう。
3.面識のない相続人への手紙の内容
面識のない相続人に手紙を送る場合、その内容を慎重に考える必要があります。
手紙の内容に問題があり、相手に不信感や警戒心を抱かれてしまうと、その後スムーズな話し合いが困難になりますので注意が必要です。
(1) 手紙に書くべき事項
面識のない相続人に送る手紙に書く事項としては、以下のようなものが挙げられます。
自分が誰であるのか
まずは、自分が誰であるのかを明らかにするために、名前や被相続人との続柄を記載します。
突然知らない人から手紙が届くと警戒されてしまいますので、自分の身分を明らかにすることが大切です。
被相続人が亡くなったことおよびその日時
被相続人が亡くなったということだけでなく、その日時についてもしっかりと記載します。相続放棄や相続税の申告をする際には、期限がありますので、それを相手に知らせるためにも重要な情報となります。
面識のない相続人であっても被相続人とは親しくしていた、ということもありますので、単に亡くなったということだけではなく、亡くなった経緯や状況などについても差し支えない範囲で記載するとよいでしょう。
手紙を出すことになった経緯
被相続人が亡くなり相続が開始したこと、相続の手続きを進めていくためには協力が必要になることなど面識のない相続人に手紙を出した経緯について詳しく説明をします。
最初の手紙でいきなり遺産分割の話を出してしまうと、警戒されてしまう可能性もありますので、最初の手紙では手紙を出すことになった経緯の説明に留めておくのがよいでしょう。
住所を知った経緯
面識のない人からいきなり手紙が届くと「どうやって住所を知ったのだろう?」と不安になる方もいます。
そのため、相続人調査のために戸籍を取得したこと、戸籍の附票によって住所を知ったということを説明すると相手も安心するはずです。
返信期限
手紙の内容で相手の返事を求める内容が含まれる場合には、いつまでに回答をして欲しいという期限を設けるようにしましょう。明確な期限が設けられていないと、面倒だからという理由で後回しにされてしまい、なかなか返事をもらうことができないこともあります。
相続放棄や相続税の申告期限が迫っているという場合には、そのことも伝えて早めに回答をしてもらえるようにお願いするとよいでしょう。
連絡先の記載
電話やメールでのやり取りを希望する場合には、差出人の電話番号やメールアドレスを記載します。
(2) 手紙の例文
面識のない相続人に送る手紙の例文を紹介します。
4.相続人の調査や遺産分割協議は弁護士へ相談を
面識のない相続人がいるという場合には、上記のように手紙を送ることによって連絡を取ることができる可能性がありますが、場合によっては手紙を送ったのに連絡がこない、連絡が来たものの遺産の分け方で揉めているということが生じる可能性もあります。
面識のない相続人が含まれている場合には、通常の相続手続きに比べてトラブルになる可能性が高くなりますので、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。
弁護士に相談をすることによって、相続人調査や面識のない相続人との協議をすべて任せることができます。
ご自身で手続きを進めていくことに少しでも不安がある場合には、どうぞ弁護士にご相談ください。