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家族信託

家族信託の信託管理人を変更したい!

家族信託の登場人物には、委託者・受託者・受益者の代表的な3者以外に、「信託管理人」という立場の人を設定することができます。

信託管理人はその性格上、利用する機会が少なくメジャーな制度ではないため、聞き慣れない方が多いのではないでしょうか。

今回は、信託管理人は何をするのか、変更したいときの方法について解説します。
今後利用されるかもしれない方、今現在設定している方は必見です。

1.家族信託の信託管理人とは?

(1) 信託管理人とは?

家族信託では、信託行為設定時に受益者が存在しない場合には、その受益者が本来受けるべき利益を損なわないようにするために、受益者に代わって受託者の管理・監督する権利を有する者として「信託管理人」を設定できると定められています(信託法第123条第1項)。

受益者が存在しない場合として挙げられるのが、受益者が胎児の場合や、信託行為で定められた受益者指定権を有する人がまだ受益者を指定していない場合(武道大会の主催者が、来年の武道大会優勝者を受益者として一定の財産を信託する場合)などです。

本来、信託は、受益者が受託者の信託事務が適切に行われているかを監督します。しかし、受益者がいない状態での信託運用は、受託者の好きにされてしまう可能性があります。

そこで信託管理人は、受益者が有する信託法上の一切の権利を行使することができるため、将来の受益者の代わりを務めることができます。

例えば、父を委託者、息子夫婦間の胎児を受益者、息子を受託者、第三者である弁護士を信託管理人にしたケースがあります。

本来、父から子へ、子から孫へと行われるのが受益者指定なのですが、息子の金遣いの荒さを知っている父親は、あえて息子を受益者ではなく受託者、その息子を飛ばして息子夫婦の「胎児」を受益者とし、更に受託者である息子がお金を浪費等しないよう監督するために、信託管理人(親族などではなく、第三者である弁護士)を信託行為で設定した、というわけです。

(2) 信託管理人になれない者

次に該当する人は信託管理人になれません(同法第124条)。

  • 未成年者
  • その家族信託の受託者

成人であれば受託者以外は信託管理人になれますが、信託管理人は受託者の一切の権利を有して行使する人になるため、実際は、ある程度の財産管理能力を有する適当な人物を選任することが重要です。

前述した例では、委託者である父親に、息子の他に未成年の娘がいたとしても、娘は未成年なので信託管理人にはなれません。

また、胎児の父を信託管理人にしようとしても、父である息子はすでに受託者に就任しており、自分で自分を管理することになってしまうため、信託管理人になれません。

(3) 信託管理人の選任方法

信託管理人は、信託行為に信託管理人となるべき者を指定する定めを設けることで選任することができます。

就任を依頼された人が承諾しなかった場合には、利害関係者が裁判所に管理人選任の申し立てをすることで、裁判所が選任します(同法123条第4項)。

先程の例では、弁護士が信託管理人に指定されました。
息子の妻という選択肢もありますが、夫である息子と共謀するということも十分あり得ます。また、近過ぎる関係ゆえに、金銭管理をめぐっての夫婦間の確執や喧嘩が起こり、結果、管理が十分に行われない恐れもあります。

もちろん、専門家でなければいけないということはありません。大切な財産を管理してもらうのですから、祖父の配偶者、息子の兄弟姉妹、友人など、委託者の信頼できる人にお願いすることも重要です。

ただ今回のケースの場合、父親が、親族や友人などでは息子を管理しきれないと判断して、第三者であり専門家である弁護士に信託管理(息子の管理)をお願いしたものと考えられます。

(4) 信託管理人の権限

信託管理人は、受益者の権利に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有します(同法第125条第1項)。要するに、完全に受益者の代わりになれるということになります。

ただし、信託行為に定めがある場合にはその定めが優先であるため、従わなければなりません(同法第125条第1項但書)。

例えば、受益者には裁判所に対する受託者解任の申立権がありますが(信託法第58条第4項)「信託管理人に受託者解任の申立権は与えない」と信託行為に定められている場合には、信託管理人である弁護士は、胎児に代わって受託者である息子の解任の申立をすることはできません。

委託者自ら受託者の息子を解任する(信託法第58条第1項)のは良いとして、少なくとも信託管理人や裁判所などの部外者には解任させないという選択肢も、信託行為の設定としてはありうることと思います。

(5) 信託管理人の義務

信託管理人は信託の管理者として、善良な注意をもって権限を行使しなければなりません(同法第126条第1項)。

また、受益者の権利を守るために誠実かつ公平に権限を行使しなければなりません(同法同条第2項)。

2.家族信託の信託管理人を変更する流れ

信託管理人の就任後、信託の当事者にとって、その信託管理人を変更したい事情が発生することもあります。

そこで信託管理人を変更するには、まず次の事由によって現在の信託管理人の任務を終了させ、新たな信託管理人を選任する流れになります。

(1) 信託管理人の任務の終了

信託管理人の任務は、次の事由によって終了します(同法128条第1項、同第56条第1項)。

  • 信託管理人の死亡
  • 信託管理人が後見開始または保佐開始の審判を受けたこと
  • 信託管理人が破産手続き開始決定を受けたこと
  • 信託管理人である法人が合併以外の理由で解散したこと
  • 信託管理人の辞任・解任
  • 信託行為で定めた事由が発生したこと

また信託管理人の事務処理は、次の事由により終了します(同法130条)。

  • 受益者が存するに至ったこと
  • 委託者が信託管理人に対し事務の処理を終了する旨の意思表示をしたこと
  • 信託行為で定めた事由が発生したこと

例えば、前述の例で信託管理人が弁護士ではなく受託者である息子の妻だったとして、その妻が息子とが結託して信託財産を着服していた場合、祖父はまだ見ぬ孫(受益者)のため、信託法の規定(信託法第第58条、同第128条第2項)にしたがって、妻を解任することができます。

信託法上は、委託者及び受益者は、「いつでも、その合意により、信託管理人(受託者)を解任できる」(信託法第58条第1項)。ゆえに、信託行為に特段の定めがなければ、委託者からの信頼を失った息子の妻が解任されるのは当然のことと言えます。

(2) 新信託管理人の選任

信託管理人の任務が終了した場合、信託行為に新信託管理人の選任についての定めがある場合にはそれに従います(同法第129条第1項)。

また、その他の事情で必要であると認めるときは、裁判所は利害関係者の申し立てにより新信託管理人を選任することができます(同法第129条第1項)。

信託行為の中で、信託管理人の選任についての定めがあれば、新たな信託管理人は信託行為の定めに従って選任されます。

もし、その新信託管理人候補に就任承諾を得られなかったなどの事情がある場合には、祖父は裁判所へ申し立てを行い、新信託管理人を選任してもらいます。

3.まとめ

胎児など現存していない受益者の権利を守るための方法として、信託管理人があります。
信託は信託行為にどう定められているかによって結論が左右されるため、信託管理人の選任を検討する時点から弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。

また、専門家自身を信託管理人に就任させることも可能であるため、トラブルの発生を懸念される場合には、それも検討しましょう。

家族信託は、家族の事情に合わせて柔軟に対応できる制度である一方で、日本においては比較的新しい制度であり、専門家も多いとは言えません。信用できる専門家を探すことが肝心です。

泉総合法律事務所では、相続問題に長年力を入れてまいりました。家族信託もその解決策の一つとして、様々なご相談を受けております。

「家族信託をやってみたいが、制度がよくわからない」「家族信託の契約書を作りたいが、どこに依頼すればいいかわからない」といった疑問やお悩みがある方は、是非一度、お気軽にご相談ください。

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