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家族信託

家族信託のトラブルの原因と対策

近年、認知症対策として家族信託を行われる方が増えています。

家族信託が比較的新しい制度であるにも関わらずここまで話題となっているのは、やはりそのメリットの大きさ故ですが、反対にトラブルが発生する可能性にも目を向けなければなりません。

今回は、家族信託で起こる典型的なトラブルを紹介していきます。
可能性のあるトラブルを知ることで、それを避けるための家族信託計画を立てることができます。

1.家族信託でトラブルとなる主な原因

家族信託で多いトラブルの原因は、どれも事前に対策をしておくことで避けられます。

(1) 信託契約が公正証書化されていない

家族信託の信託契約は私文書でももちろん有効ですが、公証人が関与しておらず、法的有効性を追求された場合には、証明する術がないことが多いでしょう。

公正証書であれば、原本が公証役場で保管されますが、私文書にはそれがないため、後から第三者によって内容を改ざん、偽造されるリスクもあります。

また、次項で解説する信託口口座を開設するためには、公正証書の信託契約書の提出を必須条件としている金融機関がほとんどです。

(2) 信託口口座を開設していない

金融機関では、信託口口座という信託専用の口座を開設することができます。

信託専用の口座開設は法律で義務化されてはいませんが、受託者個人の財産と信託財産を完全に分けて管理することができるため、受託者の分別管理義務を徹底することができ、当事者間のトラブル防止に繋がるため、信託財産に預金がある場合には開設してもらいたい口座です。

一方で、信託口口座以外で信託運用をしていた場合には、受託者の破産や死亡で信託が機能しなくなる危険性があります。また、いつの間にか受託者の財産へ信託財産の一部が混入しているなど、トラブルになる可能性が高まります。

信託口口座は、まだ、どんな金融機関でも開設できるというほどメジャーなものではないため、在住の地域的に開設できなかった、信託口口座の審査に通らなかったなど、どうしても開設できない場合にはすぐに専門家に相談しましょう。

遠方の金融機関や、審査に通りやすい方法などのアドバイスを受けられます。

(3) 遺留分を侵害している

家族信託契約の内容は自由に定めることができますが、ここで注意しなければならないのは遺留分です。

例えば相続人が複数いる場合に、そのうちの特定の人を主な財産の受益者としてしまい、その他の相続人の遺留分が侵害されると、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

家族信託と遺留分について次の裁判例(東京地裁平成30年9月12日判決)をご紹介します。

妻に先立たれ末期癌の宣告を受けたため、父親は、亡くなる半年前に全財産の3分の2を次男へ、次女へ3分の1を死因贈与する契約を結びました。

その贈与締結直後、今度は、父を委託者兼受益者、次男を受託者として、父の死亡後は、長男と次女がそれぞれ6分の1、次男が6分の4の割合で受益権を取得するよう16筆の土地建物と金銭300万円を信託財産とした家族信託契約を締結ました。受益権の内容は、信託不動産から得られる賃貸料や売買代金などです。

しかし父の死亡後に、これを遺留分を侵害するものとして「信託契約は無効」、「不動産の所有権移転登記及び信託登記の抹消」を主張し、長男が訴訟を提起しました。

これに対して東京地方裁判所は、大きく次の2つを判示しました。

  • 遺留分制度から逃れるために行われた信託契約である部分については、公序良俗に反し無効となる
  • 信託財産も遺留分侵害額請求の対象となる

その理由は、まず信託財産とした16筆の不動産のうち12筆は経済的利益を生まないものであり、父はそれを知って上記のような信託契約を締結したと考えられるため、「遺留分制度から逃れる意図で信託制度を利用したものであって、公序良俗に反して無効というべきである」と判断されました。

また、それによって長男の受益権割合が増加したとしても、12筆の不動産は経済的利益を生まないものであるため、長男は増加分に応じた経済的利益を受けることが不可能であるとされ、「信託契約による信託財産の移転は、信託目的達成のための形式的な所有権移転にすぎないため、実質的に権利として移転される受益権を対象に遺留分減殺の対象とすべき」と判断されました。

信託契約に対する遺留分については、その対象は受益権なのか信託財産なのか以前からグレーゾーンとなっていたため、この判決は今後の家族信託の流れを変える大きなものとなりました。

(4) 雛形に落とし込んだだけの契約書

家族信託の普及に伴い、書籍やインターネットなどで信託契約書の雛形も容易に手に入るようになりました。

これらにご自分の情報を当てはめていけば、簡単に信託契約書を作成することができますが、それだけでは個別の事情が反映されておらず、実際の運用で支障を来す可能性もあります。

家族信託は契約の内容がすべてのベースになるため、信託開始から終了まで家族に起こりうるあらゆる事態を想定して、契約書に盛り込むことが重要です。

特にインターネットには専門家だけではなく、一般人が作成した雛形も混在しているため注意しましょう。

2.その他家族信託のトラブルとなり得る問題

前項ではトラブルとなる大きな要因を解説しましたが、その他にも、次のような思わぬ問題がトラブルになることがあります。

(1) 受託者への権限集中による相続人間の不公平感

家族信託は、父親が委託者兼受益者、子が受託者となるパターンがほとんどです
子が複数いる場合には、特定の兄弟姉妹だけが委託者の財産を信託され、運用を任されたとなると「私も運用したかった」、信託報酬が発生している場合には「私も欲しかった」など不公平感を抱く可能性があります。

特に相続人が兄弟姉妹の関係で、それぞれに配偶者がいる場合には、第三者が口を出しやすいためトラブルの可能性が高まります。

家族信託は相続ではないため、受託者に権利が集中したとしても、相続発生時には他の相続人は相続財産を得られる権利があります。

委託者の死亡後に受益者になる人と、他の相続人も含めた信託契約にするとトラブルを回避できるかもしれません。

(2) 信託財産にしたい不動産に抵当権が設定されている

抵当権が設定されている不動産であっても信託財産にすることは可能ですが、その際には、抵当権を設定した金融機関から承諾を得なければなりません。

通常、金融機関との抵当権設定契約は、金融機関の承諾なしに抵当物件の所有権を第三者に移転できないことになっており、これを無視して抵当不動産を信託財産に名義変更してしまった場合には契約違反行為になるため、場合によっては一括返済を求められる可能性があります。

(3) 税務申告の手間

収入があり所得が出る場合には確定申告をしなければなりませんが、家族信託についても同様です。

受託者は信託財産を預かって運用しているだけで、そこから得られる利益は受益者の者になっていますから、確定申告を行うのは受益者ということになります。

不動産の賃貸収入などがある場合には毎年のことになりますし、サラリーマンで元々確定申告の必要がない人にとっては余計な手間になります。

(4) 損益通算ができない

所得税の計算では、赤字の所得を他の所得から差し引くことができ、これを「損益通算」といいます。

しかし、家族信託による運用で出た赤字は、事業所得や給与所得などと通算することはできません。

(5) 30年ルールに縛られる

家族信託は遺言にはできないメリットとして、「財産は長男一族へ代々承継させる」というように先の先まで指定することが可能です。

しかし、50年100年先の子孫までもがその契約に縛られ、足枷となることを防ぐために、家族信託には通称「30年ルール」という制度があります。
家族信託開始から30年を経過した後に、新しく受益者になった人が死亡した時点で信託は終了します。

当初の契約通りに続けていきたい場合には、新たに信託契約を結び直さなければなりません。

(6) 身上監護権がない

家族信託とよく比較される制度に成年後見制度がありますが、その違いに身上監護権の有無があります。

本人を守ることが目的である成年後見制度に対して、家族信託の目的は委託者の財産を守ることです。家族信託の受託者が託されているのは信託財産のみであって、身上監護権はありません。

ただし、委託者と受託者が親子の場合には、意思判断能力を失った親の代わりに子が様々な手続きを行うことができますので、そこまで問題になることはありません。

それでも心配な場合には、任意後見契約をしておくと良いでしょう。

3.家族信託でトラブルを避ける方法

家族ために行う家族信託で、トラブルが発生するのは悲しいことです。

最後に、トラブルを未然に防ぐ方法を解説します。

(1) 遺言・後見制度との比較検討

家族が認知症などで意思判断能力を失った場合に、代わりに財産管理を行える方法としては、家族信託以外にも遺言成年後見制度があります。

それぞれのメリットとデメリットを比較し、ご自分に最適な方法を選択するようにしましょう。
「よく分からないけど、みんなやっているから家族信託にした。」というのが最も危険です。

[参考記事] 家族信託・遺言(遺贈)・生前贈与の違いをわかりやすく解説

(2) 家族による話し合い

家族信託のトラブルには、不公平感など家族の気持ちから発生するものがありました。

家族信託にかかわる人、将来、委託者の相続人になる人全員でしっかり話し合い、理解しあったうえで始めることが重要です。

(3) 専門家に相談する

これが最も重要です。

家族信託のトラブル要因は知識がなかったことによるものが多くなっています。専門家に相談することでその多くは未然に防ぐことができるでしょう。
また、万が一トラブルが起こってしまった場合にも、適切な対処を取ることができます。

ただし、家族信託はまだ歴史の浅い制度であるため、専門家選びは慎重に行ってください。

4.まとめ

遺言や成年後見制度よりも応用範囲が広く、使い勝手の良い家族信託ですが、トラブルの発生もゼロではありません。事前にトラブルの可能性を知り、対策しておくことが重要です。
既に家族信託を始められている方は、今一度、契約内容を見直してみましょう。

「家族信託を知りたい・検討したい」、「契約内容はこれで良かったのか」など、家族信託についてのお悩みは弁護士などの信託の専門家にご相談ください。

泉総合法律事務所では、家族信託についてもご相談を受けています。お気軽にお問い合わせください。

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