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遺産分割

遺産分割協議はやり直せる?やり直しの期限・税金との関係も解説

遺産分割の結果に不満がある場合や、何らかの手続き上の不備があった場合などには、遺産分割協議をやり直したいと考えるケースがあるかもしれません。

法律上、遺産分割のやり直しが認められる場合は限られていますが、事情によってはやり直しが認められる可能性もあります。
ご自身やご家族の状況に照らして、遺産分割のやり直しが可能かどうか、弁護士に相談して検討してみましょう。

この記事では、遺産分割のやり直しの可否について、期限や税金との関係と併せて解説します。

1.遺産分割協議のやり直しは可能?

遺産分割のやり直しは原則として認められませんが、一部の例外に該当する場合には、遺産分割のやり直しが認められる可能性があります。

(1) 原則やり直しは不可

遺産分割の合意内容は、遺産分割協議書にまとめられたうえで、当事者である相続人全員が署名・押印を行っています。
つまり遺産分割の結果は、相続人全員で決定した合意事項です。

そのため、一部の相続人が遺産分割のやり直しを希望したとしても、原則としてやり直しは認められません

(2) 例外的に遺産分割協議をやり直せるケース

ただし、以下に挙げる場合については、例外的に遺産分割のやり直しが認められます。

①相続人全員の合意がある場合

まず、相続人全員が遺産分割をやり直すことについて合意した場合には、遺産分割をやり直すことができます。

遺産分割の結果として取得した遺産をどのように処分するかは、遺産を取得した相続人の自由です。
そのため、相続人全員が任意にそれぞれ取得した遺産を持ち寄って、改めて分け直すことを禁止する理由はありません。

上記の理由から、相続人全員の合意がある場合には、遺産分割のやり直しが認められています。

②錯誤・詐欺・強迫があった場合

また、遺産分割に関する意思表示に錯誤(民法95条1項)・詐欺(民法96条1項)・強迫(同)のいずれかがあった場合には、遺産分割のやり直しが認められます。

・錯誤

遺産分割の内容の重要な部分(要素)について勘違いをしたままに、遺産分割の内容を承認したことをいいます。

遺産分割協議後に、相当額の相続財産の記載漏れが発覚し、かつ相続人の一部が相続財産の全体像を、遺産分割協議書記載のとおりであることを当然の前提としていた場合などが「錯誤」に該当します。

・詐欺

第三者に騙されたことにより、遺産分割の内容を承認したことをいいます。

相続財産の価値について、他の相続人からうその情報を提供され、その結果として価値の低い財産しか相続できなかった場合などが「詐欺」に該当します。

・強迫

第三者の暴行・脅迫などを通じて恐怖感を与えられたことにより、遺産分割の内容を承認したことをいいます。

他の相続人から「遺産分割の内容を承認しなければ、一生、実家はもちろん、兄弟の家の敷居も跨がせない」などと脅迫された場合などが「強迫」に該当します。

 

錯誤・詐欺・強迫に基づいて遺産分割の内容を承認した場合、その人は遺産分割に関する意思表示を取り消すことができます。なお、民法改正の施行日前に遺産分割協議が成立し、その協議に錯誤があった場合は、旧民法第95条が適用され、無効となります(附則第6条第1項)。

遺産分割に関する意思表示が取り消された場合、遺産分割について相続人全員で合意したという前提が崩れるため、遺産分割協議のやり直しが行われます。

③制限行為能力者・意思無能力者が直接遺産分割協議に参加していた場合

制限行為能力者は、遺産分割に関する意思決定について、以下の通り制限が加えられています。

未成年者 法定代理人の同意が必要
成年後見人 成年被後見人が代理で行うことが必要
被保佐人 保佐人の同意が必要
被補助人 補助人に同意権が付与されている場合には、補助人の同意が必要

これらの制限に違反して、制限行為能力者が直接遺産分割協議に参加していた場合には、遺産分割に関する意思表示を取り消すことができます(民法5条2項、7条、13条4項、17条4項)。

錯誤・詐欺・強迫の場合と同様に、遺産分割に関する意思表示が取り消された場合(または無効になった場合)には、やはり遺産分割協議のやり直しが必要です。

(3) 手続き違反があった場合はやり直し必須

さらに、以下に挙げる各ケースにおいては、遺産分割協議のやり直しが必須となります。

①相続人・包括受遺者の全員が参加していなかった場合

遺産分割協議は、共同相続人全員の協議によって行うものとされています(民法907条1項)。
これは、遺産分割前の遺産が共同相続人の共有であり(民法898条)、遺産の処分は共同相続人全員の同意によるべきとされているためです(民法251条)。

逆に言えば、共同相続人のうち一人でも遺産分割協議に参加していなかった場合には、その遺産分割は無効であり、遺産分割協議のやり直しが必要となります。

なお、包括受遺者(註)は相続人と同一の権利義務を有するとされています(民法990条)。

(註)包括受遺者:遺言によって割合的に相続分の指定を受けた人
(例)遺言書に「Aに遺産の3分の1を与える」と記載されていた場合のAが包括受遺者

したがって、包括受遺者がいる場合には、包括受遺者も遺産分割協議に参加させる必要があります。

包括受遺者が参加せずに行われた遺産分割は無効であり、やはり遺産分割のやり直しが必要となります。

[参考記事] 包括受遺者とは?相続人との違い・登記・相続税等をわかりやすく解説

②意思無能力者が直接遺産分割協議に参加していた場合

意思無能力者」とは、自己の法律行為の結果を判断するに足る精神能力を持たない人をいいます。
たとえば認知症が相当程度進行してしまった人は、意思無能力者に該当する可能性が高いです。

意思無能力者による法律行為は、絶対的に無効とされています(民法3条の2)。

そのため、意思無能力者が参加して行われた遺産分割は当然無効であり、遺産分割協議のやり直しが必須となります。

③利益相反時に特別代理人等が選任されていなかった場合

制限行為能力者(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)が相続人であるケースでは、遺産分割協議において代理権や同意権を行使する法定代理人・成年後見人・保佐人・補助人も同時に相続人である場合があります。

たとえば被相続人の子が未成年者のケースで、母親が被相続人の配偶者として同時に相続人であった場合、子と配偶者は相続財産を分け合う関係にあり、利益が相反しています。

この場合、親権者である母親は、子のために特別代理人の選任を家庭医裁判所に請求しなければなりません(民法826条1項)。

上記と同様に、成年被後見人については特別代理人(または後見監督人。民法860条)、被保佐人については臨時保佐人(民法876条の2第3項)、被補助人の場合は臨時補助人(民法876条の7第3項)の選任がそれぞれ必須とされています。

もし特別代理人等の選任が行われず、利益相反者が遺産分割協議において代理権・同意権を行使した場合、遺産分割は(無権代理)無効になると解されています。

この場合、改めて特別代理人等を選任したうえで、遺産分割協議をやり直すことが必要です。

2.遺産分割協議のやり直し期限

遺産分割協議のやり直しができる場合には、やり直しの期限自体は特に設けられていませんが、錯誤・詐欺・強迫を理由とする民法上の取消権(民法第126条)には時効又は除斥期間による権利消滅(5年ないし20年)の定めがあるので、注意が必要です。

そこで、遺産や遺産に関する情報の散逸や、相続人死亡による遺産分割協議の複雑化を防ぐためにも、やり直しの必要性が判明した時点で速やかに遺産分割協議を再開させるのが望ましいでしょう。

弁護士に相談すれば、遺産の保全に関する措置を講じたうえで、迅速に遺産分割協議のやり直しへと着手することができます。

3.遺産分割調停・審判のやり直し

遺産分割調停および審判については、遺産分割協議に比べて、やり直しが認められる理由がかなり制限されます。

遺産分割調停および審判は、公的な手続きによって遺産分割の内容を確定するものなので、簡単に覆すことを認めるのは妥当でないからです。

遺産分割調停・審判のやり直しが認められるのは、遺産分割に参加すべき相続人や包括受遺者が欠けていたなど、手続き上の重大な違反がある場合に限られます。

ただし、遺産分割調停・審判の内容を前提として、相続人・包括受遺者全員の合意によって改めて遺産を分け直すことは可能です。

4.遺産分割協議をやり直す際の税務上の注意点

遺産分割協議をやり直す場合、以下の理由から、税金の負担がかなり重くなってしまう可能性があります。

実際に遺産分割協議をやり直す際には、事前に税務上のシミュレーションを行っておくとよいでしょう。

(1) 相続税の課税は維持される

遺産分割協議のやり直しによって、遺産の配分は当初から変更されることになります。

しかし、既に相続税申告をしている場合、相続税は当初の遺産分割の内容に応じて課税され、遺産分割協議のやり直しによっても課税内容が変更されることはありません。

したがって、遺産分割協議のやり直しによって、当初よりもらえる遺産が少なくなった場合でも、当初の課税内容に従って相続税を納付しなければならない点に注意しましょう。

(2) 新たに贈与税や所得税が課税される

さらに、遺産分割協議をやり直して遺産を分け直した場合、やり直しによる遺産の移転は、相続人間で行われた新たな贈与・譲渡と評価され、贈与税または所得税が課税されます。

当初の相続税と併せると、遺産分割協議のやり直しが行われた場合、遺産の一部について二重課税が行われることになってしまうのです。

遺産分割協議のやり直しを検討する際には、このような税務上のデメリットを踏まえたうえで、十分な事前検討を行うことが大切です。

5.まとめ

遺産分割協議のやり直しは、一部の相続人の意思だけでは原則として認められません。

しかし、相続人・包括受遺者全員の合意がある場合のほか、錯誤・詐欺・強迫があった場合、及び遺産分割協議手続に違反があった場合には、遺産分割のやり直しが認められる可能性があります。

遺産分割協議のやり直し自体に期限はないものの、錯誤・詐欺・強迫があった場合の取消権には期間制限があること、遺産や遺産に関する情報の散逸などを防ぐため、できる限り迅速な対応をお勧めいたします。

弁護士にご相談いただければ、遺産分割協議のやり直しに関する手続きや相続人同士の調整を全面的に代行し、迅速な遺産分割のやり直しをサポートいたします。

遺産分割のやり直しが必要になった場合は、お早めに泉総合法律事務所までご相談ください。

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