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相続欠格とは|欠格事由になるケース、代襲相続との関係について解説

被相続人に対して殺人行為を働いて刑に処せられたり、遺言の作成に関して不当に関与したりした相続人は、「相続欠格」に該当して相続権を失います。

そのため相続人を確定するためには、相続欠格に該当するかどうかを確認し、もし相続欠格が問題になりそうな事情がある場合には、弁護士に相談のうえで法的な検討もする必要があります。

この記事では、相続欠格の概要・要件や、相続廃除との違い、代襲相続との関係などについて、わかりやすく解説します。

1.相続欠格とは?

「相続欠格」とは、民法で定められるきわめて悪質な行為を働いた相続人が、法律上当然に相続権を失うことをいいます(民法891条)

相続権は民法上、「配偶者」や「子」など、被相続人との続柄に基づいて発生します。
これらの者は、被相続人と生前に扶養関係が存在し、実際にも被相続人と親しい間柄にある可能性が高いため、相続権を認めることは通常合理的と考えられます。

しかし、相続人が被相続人に対してあまりにも悪質な行為を働いた場合や、自分に有利な相続を実現するために不当な働きかけを行った場合などには、その相続人に遺産を相続させることは不適切といえます。

そこで、このような相続にふさわしくない相続人については、「相続欠格」を理由として、法律上当然に相続権を失わせるルールが定められたのです。

【相続欠格者には遺留分も認められない】
相続欠格に該当した者は、もともと相続人として有していた「遺留分」も失うことになります。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、遺産相続の最低保障額を意味します(民法1042条1項)。
被相続人が遺言を作成すれば、遺言の定めにより、特定の相続人の相続分をゼロとすることは可能です。しかし、相続分をゼロとされた相続人が遺留分を有している場合には、他の相続人・受遺者に対する「遺留分侵害額請求」(民法1046条1項)により、遺留分相当額の金銭を受け取ることができてしまいます。
これに対して、相続欠格者には遺留分が認められないため、他の相続人・受遺者に対して遺留分侵害額請求を行うこともできません。したがって、相続欠格者は遺産相続から完全に排除され、遺産を全く相続できないのです。

2.相続権を失う相続欠格事由5つの場合

民法891条各号において、相続欠格となる要件は、以下の5つが定められています。

(1) 被相続人等に対する故意の殺人・殺人未遂により刑事罰を受けた

被相続人や、先順位・同順位の相続人を故意に死亡させ、または死亡させようとしたために刑事罰を受けた者は、相続欠格に該当します(民法891条1号)。

このような殺人・殺人未遂は、行為や結果自体が凶悪であることに加えて、以下のような意図が働いている可能性が高いのです。

①被相続人に対する殺人・殺人未遂
→「早く遺産を受け取りたい」

②先順位・同順位の相続人に対する殺人・殺人未遂
→「より多く遺産を受け取りたい」

上記のように、我田引水的に凶悪な殺人・殺人未遂を行った相続人については、相続欠格に該当すると定められています。

そのため、民法891条1号の相続欠格事由には「故意」(=殺意)の存在が要求されており、傷害致死(傷害についての故意はあったものの、殺意はなかった)で刑事罰に処された場合などには、相続欠格事由には該当しません。

(2) 被相続人の殺害を知りながら、告発または告訴をしなかった

被相続人が殺害されたことを知りながら、捜査機関に対する告発または告訴をしなかった者も、相続欠格に該当します(民法891条2号)。

相続権を有する近親者でありながら、被相続人の殺害を黙認する行為は、人道的な観点からも非常に悪質です。
また、このようなケースでは、相続人自身が被相続人の殺害に関する共犯者や、それに準ずる立場であった可能性も窺えます。

よって、被相続人の殺害を知りながら告発・告訴をしなかった相続人は、遺産を相続する資格がないとされたのです。

(3) 詐欺または強迫によって遺言等を妨害した

詐欺または強迫によって、被相続人による遺言の作成・撤回・取り消し・変更を妨害した者は、相続欠格に該当します(民法891条3号)。

遺言は本来、遺言者の自由な意思によって行われるべきものです。
相続人の立場で遺言者による遺言の作成等を不当に妨げる行為をした場合は、自分に都合の悪い遺言が行われることを避けたい意図があると疑われても仕方がありません。

「不当に利益を得る目的」がなければ相続欠格に該当しない可能性

ただし、民法891条3号の趣旨は、「遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対し相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとする」ことにあると解されています(最高裁昭和56年4月3日判決)。

したがって、遺言の作成等を妨げたことについて、不当に利益を得る目的がないと判断できるような特段の事情が存在する場合には、相続欠格事由への該当性が否定される可能性もあると考えられます。

「不当に利益を得る目的」があったかなかったかについては、作成等が予定されていた遺言の内容や、妨害に至るまでの経緯などを総合して判断されることになるでしょう。

(4) 詐欺または強迫によって遺言等をさせた

詐欺または強迫によって、被相続人に遺言の作成・撤回・取り消し・変更をさせた者は、相続欠格に該当します(民法891条4号)。

4号の相続欠格事由も、3号と同様に、遺言に関して著しく不当な干渉をした相続人を遺産相続から排除することを趣旨としています。

そのため、不当に利益を得る目的がなかった場合には、相続欠格事由への該当性が否定される可能性がある点も、3号と同様です。

(5) 遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した

被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者は、相続欠格に該当します(民法891条5号)。

遺言書の偽造等は、自分に都合のよい内容の相続を実現したり、都合の悪い内容の相続を回避したりする意図がある可能性が高く、相続欠格事由とされているのです。

ただし、3号・4号と同様に、遺言書の偽造等が不当な利益を目的とする者でなかった場合には、相続欠格事由には該当しないと解されています。

この点、最高裁昭和56年4月3日判決では、遺言の偽造・変造行為について、5号の相続欠格事由該当性に不当な利益を目的とすることが必要かなのかが問題となりました。
最高裁は、以下の事情を踏まえて、遺言の偽造・変造を行った相続人について、相続欠格事由該当性を否定しました。

  • 遺言書自体は、遺言者本人の自筆によるものだった
  • 相続人は、自筆証書遺言としての方式を整えるために、必要な押印をしたに過ぎなかった

上記の事実関係の下では、形式上無効な自筆証書遺言について、被相続人の意思を実現するために法形式を整える趣旨で偽造・変造行為をしたに過ぎないので、相続人を責めることはできないと判断されたのです。

上記の最高裁判例の趣旨は、その後に出された最高裁平成9年1月28日判決において、以下のように一般化して判示されています。

相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法八九一条五号所定の相続欠格者には当たらないものと解するのが相当である。

3.相続欠格と相続廃除の違い

相続欠格と同様に、相続人の相続権を失わせる制度として「相続廃除」(民法892条)があります。

相続欠格と相続廃除の効果はほぼ同じですが、要件や手続きなどの面で以下の違いが存在します。

(1) 要件が異なる

相続欠格の要件は、すでに解説した5つで、極端に悪質な非違行為を類型化して要件を定めています。

これに対して、相続廃除の要件は、被相続人に対する虐待・侮辱など、推定相続人の「著しい非行」とされています。「著しい非行」という抽象的な要件を定めることで、相続権を失わせるかどうかの判断を個別に行う建付けとなっているのが特徴的といえるでしょう。

(2) 手続きが異なる

相続欠格の場合は、法律上当然に相続権喪失の効果が発生するため、被相続人による意思表示は不要です。

これに対して相続廃除の場合は、相続権を失わせるかどうかの個別の判断を行うため、被相続人の請求に基づく家庭裁判所の審判が必要となります。

したがって、被相続人が相続廃除の請求を行わない場合には、相続廃除の効果は発生せず、「著しい非行」を行った相続人の相続権は維持されます。

(3) 戸籍に記載されるか否かが異なる

相続欠格に該当したことは、戸籍上に記載されることはありません。

これに対して、相続廃除の審判が確定した場合には、戸籍にその旨が記載されます。

4.相続欠格と代襲相続について

相続欠格により相続人が相続権を失ったとしても、その子は「代襲相続」によって相続欠格者の代わりに相続権を取得します。

代襲相続とは、死亡・相続欠格・相続廃除のいずれかの事由によって相続権を失った者の代わりに、その子が相続権を取得する制度です(民法887条2項、3項、889条2項)。

たとえば、被相続人Aの遺言を偽造したことにより、Aの子であるBが相続欠格に該当した場合には、Bの子であるCが代襲相続人となります。

Cは本来、将来的にBを相続することにより、Aの遺産を間接的に承継できるという合理的な期待を有しています。
このようなCの相続に対する合理的な期待を保護するため、Bが相続欠格に該当して相続権を失った場合でも、代襲相続によってCに代わりに相続権が与えられるのです。

[参考記事] 代襲相続とは?相続人の範囲・相続分の割合などを解説

5.相続欠格についてのよくある質問(FAQ)

  • 相続欠格の確認方法は?

    相続欠格に該当しても、戸籍に記載されることはなく、裁判所や役所から証明書が発行されることもありません。

    したがって、第三者が相続欠格について確認する方法はありません。

  • 相続欠格事由を証明するための手続きはどうすればいい?

    相続欠格者は相続権を有しておらず、遺産分割協議への参加資格はないため、相続欠格者を除いた遺産分割協議は滞りなく成立したことになります。

    一方で、相続手続きでは、遺産分割協議書が必要書類となり、遺産分割協議に相続欠格者が参加していなくても成立する理由を証明しなければなりません。

    しかし前述した通り、相続欠格があっても戸籍には記載されず、戸籍謄本を添付しただけでは遺産分割協議が成立したことを証明したことにはなりません。

    そこで、相続欠格者が相続欠格に該当することを認めている場合には、欠格者自身が作成した「相続欠格証明書」に、署名し実印で押印して印鑑証明書を添付します。

    また、該当する民事や刑事事件の確定判決の謄本を添付することで証明することもできます。この場合には、確定証明書の添付も必要となります。

    さらに、相続欠格者が相続権を有しないことを裁判所に確認する相続権不存在確認の訴えを提起して、確定判決を得る方法もあります。

    訴訟を提起する場合には、弁護士にご相談ください。

  • 相続欠格を宥恕する(許す)ことはできる?

    相続欠格者に対して宥恕することができるとした裁判例が初めて示されました(広島家裁呉支部平成22年10月5日審判)。

    この裁判例では、刑事裁判において、生前被相続人が相続欠格者に対して寛大な刑が下されることを求め、服役後、何回か刑務所を訪ねて障害を持つ相続欠格者の出所後の生活を案じて「心配ないから」と話したことなどから、宥恕の意思表示をしたものと推認し、相続人としての資格を認めています。

    ただし、被相続人の宥恕については、最高裁判所の判断がまだ示されておらず、専門家の見解も分かれています。

    相続欠格に該当した方が、相続権の回復を検討するのであれば、相続に強い弁護士に相談することを強くお勧めします。

6.まとめ

被相続人に対する殺人等や、遺言書の偽造等を行った相続人は、「相続欠格」に該当する可能性があります。
また、相続欠格には該当しないとしても、相続廃除によって相続権を失わせることができるケースもあります。

もし一部の相続人について、遺産相続をさせることが適当でないと考えられる場合には、一度泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
相続欠格や相続廃除の可能性について検討し、アドバイスを致します。

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