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遺産分割

特別受益の「持ち戻し」とは?計算方法や注意点、持ち戻し免除を解説

遺産分割において、一部の相続人に特別受益が認められる場合、法定相続分と遺留分を計算する際に、特別受益について相続財産への「持ち戻し」が行われます。

持ち戻し計算をする場合、一般的な法定相続分・遺留分の計算とは異なる計算方法をとる必要があります。

この記事は、特別受益の持ち戻し計算につき、法定相続分・遺留分の具体的な計算例を紹介しながら解説しますので、遺産分割や特別受益の計算の参考にしてください。

1.特別受益の「持ち戻し」とは?

特別受益の「持ち戻し」とは、特別受益が認められる相続人がいる場合に、特別受益の金額が相続財産に含まれているとみなしたうえで、法定相続分と遺留分を計算することを意味します。

特別受益に当たる遺贈・贈与を受けた相続人は、他の相続人よりも被相続人から財産上の優遇を受けているといえます。

この場合、相続人の間で不公平が生じるため、以下の方法による調整が行われます。

①特別受益に当たる遺贈・贈与の金額を、相続財産の金額に加算して、各相続人の相続分を計算する
②特別受益がある相続人については、①で計算された相続分から、特別受益の金額を差し引いた金額を実際の相続分とする

これが特別受益の「持ち戻し」の基本的な考え方です。

なお、特別受益の「持ち戻し」は、相続分の計算だけでなく、遺留分の計算においても行われます(民法1044条1項、3項)。

後に解説するように、相続分と遺留分では、特別受益の取り扱いに関するルールが若干異なることに注意が必要です。

特別受益があるケースにおける相続分・遺留分の「持ち戻し」計算の例については、後で詳しく解説します。

2.持ち戻しの対象期間は相続分と遺留分で異なる

生前贈与について特別受益の持ち戻しが問題となる場合、持ち戻しの対象となる生前贈与の時期について、相続分と遺留分では以下のとおり対象期間が異なります。

(1) 相続分計算における「持ち戻し」に期間制限はない

相続分の計算における特別受益の「持ち戻し」に、時効のような期間制限はなく、「持ち戻し」の対象期間は無制限とされています。

そのため、相続開始から30年前・40年前などのかなり昔に行われた生前贈与でも、特別受益として持ち戻し計算の対象になり得ます。

(2) 遺留分計算における「持ち戻し」の期間は10年

これに対して、遺留分計算における特別受益の「持ち戻し」については、2019年7月1日施行の改正相続法において、相続開始前10年間に限るという期間制限が新設されました(民法1044条1項、3項)。

昔の贈与について対象にすることで、その受贈者にとっては、遺留分侵害額請求に対する負担という不測の損害を生じることになります。
新法上では、かかる請求を認めることで、受贈者の法律上の地位の安定性を害するのは妥当ではない、と判断したからです。

したがって、同日以降に発生した相続については、相続分と遺留分では異なる対象期間のルールが適用されます。

なお、改正前の旧民法では、遺留分についても特別受益の持ち戻しは期間無制限とされていました。

よって、2019年6月30日以前に発生した相続については、遺留分計算においても、特別受益は期間無制限で持ち戻し計算が行われます。

3.特別受益の持ち戻し免除とは?相続分・遺留分の違い

特別受益がある場合には、原則として「持ち戻し」計算が行われますが、例外的に持ち戻し計算が免除されるケースがあります。

(1) 相続分計算における持ち戻しは被相続人の意思で免除可能

各相続人の相続分を計算する場合における特別受益の「持ち戻し」は、被相続人の意思表示によって、その全部または一部を免除することができます(民法903条3項)。

たとえば遺言書の中で、遺贈や生前贈与の時期・内容を特定して「持ち戻しを免除する」旨の記載が行われていれば、その遺贈・贈与については特別受益の持ち戻しが行われません。

相続分の計算においては、被相続人の意思を最大限尊重するという観点から、特別受益の持ち戻しの免除が認められているのです。

(2) 配偶者への居住用不動産の贈与は持ち戻し免除が推定される可能性

特別受益の持ち戻しの免除には、原則として被相続人の明示的な意思表示が必要です。

ただし、20年以上婚姻している配偶者に対して、被相続人が居住用不動産を遺贈・贈与した場合には、持ち戻しの免除の意思表示を行ったものと推定されます(民法903条4項)。

この持ち戻し免除の推定規定は、長年連れ添った配偶者の住居を保障するとともに、被相続人が通常想定しない形で配偶者の相続分が少なくなってしまう事態を防ぐ意味があります。

(3) 遺留分計算における持ち戻し免除は認められない

相続分とは異なり、遺留分の計算においては、特別受益の持ち戻しの免除は認められません。

遺留分は、被相続人の意思にかかわらず、法定相続人の相続に関する最低限の権利を保障する制度です。
したがって、特別受益の持ち戻しについても、被相続人の意思によって免除することはできないとされています。

4.特別受益の「持ち戻し」の計算例

実際の設例を用いて、特別受益の持ち戻し計算を行い、相続分と遺留分を計算してみましょう。

(1) 相続分の持ち戻し計算例

まずは、以下の設例を用いて、A,B,Cの相続分を計算します。

特別受益を持ち戻した場合

<設例①>
・相続人は配偶者A・長男B・次男Cの3人
・相続財産の総額は4,000万円
・長男Bは、被相続人から特別受益に当たる1,000万円の生前贈与を受けた

設例①では、相続財産の総額は4,000万円ですが、Bが特別受益に当たる1,000万円の生前贈与を受けています。

この場合、特別受益の1,000万円を相続財産の4,000万円に加算して(持ち戻し)、トータル5,000万円を基礎財産としてA・B・Cの相続分を以下のとおり計算します。

配偶者A:5,000万円×2分の1=2,500万円
長男B:5,000万円×4分の1=1,250万円
次男C:5,000万円×4分の1=1,250万円

しかし、長男Bはすでに1,000万円の特別受益に当たる生前贈与を受けていますので、上記の相続分から1,000万円を控除して、各相続人の最終的な相続分は以下のとおりです。

<設例①の相続分>
配偶者A:2,500万円
長男B:250万円
次男C:1,250万円

では、設例①のケースで、被相続人により持ち戻し免除の意思表示が行われた場合はどうなるでしょうか。

特別受益の持ち戻しを免除した場合

<設例②>
・相続人は配偶者A・長男B・次男Cの3人
・相続財産の総額は4,000万円
・長男Bは、被相続人から特別受益に当たる1,000万円の生前贈与を受けたが、被相続人は遺言において、当該生前贈与について持ち戻しを免除する意思表示をした

この場合、長男Bが受けた1,000万円の生前贈与について、特別受益の持ち戻しは行われません。

したがって、相続財産の総額である4,000万円をそのまま基礎財産として、A・B・Cの相続分を計算すると、以下のとおりとなります。

<設例②の相続分>
配偶者A:4,000万円×2分の1=2,000万円
長男B:4,000万円×4分の1=1,000万円
次男C:4,000万円×4分の1=1,000万円

このように、持ち戻し免除の意思表示があるかどうかで、各相続人の相続分に大きな差が出ます。

長男Bは、生前贈与1,000万円を受けていますので、総合的に見れば次男Cより優遇されていることが分かります。

(2) 遺留分の持ち戻し計算例

同じ設例を用いて、A・B・Cの遺留分を計算してみましょう。

<設例①・再掲>
・相続人は配偶者A・長男B・次男Cの3人
・相続財産の総額は4,000万円
・長男Bは、被相続人から特別受益に当たる1,000万円の生前贈与を受けた

配偶者と子が相続人の場合、各相続人の遺留分額は以下の式によって求められます(民法1042条1項2号)。

遺留分額=遺留分の基礎財産×2分の1×法定相続分

遺留分の場合、特別受益の持ち戻しの対象となる生前贈与の時期には、「相続開始前10年間」に限るという期間制限があります(民法1044条1項、3項)。

したがって、長男Bが受けた生前贈与が相続開始前10年以内の場合、特別受益が基礎財産に持ち戻されますが、それよりも前の場合には、原則として持ち戻しが行われません。

ただし、民法1044条第3項、同条第1項但書から、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与をしたときは、例外として持ち戻しの対象になります。

よって、長男Bに対する生前贈与が相続開始前10年以内・相続開始よりも10年超前のそれぞれの場合について、遺留分は以下のとおり計算されます。なお上記例外の場合は、下記⑴の内容になります。

<設例①の遺留分>

(1)長男Bに対する生前贈与が相続開始前10年以内の場合
配偶者A:5,000万円×2分の1×2分の1=1,250万円
長男B:5,000万円×2分の1×4分の1=625万円
次男C:5,000万円×2分の1×4分の1=625万円

(2)長男Bに対する生前贈与が相続開始から10年より前の場合
配偶者A:4,000万円×2分の1×2分の1=1,000万円
長男B:4,000万円×2分の1×4分の1=500万円
次男C:4,000万円×2分の1×4分の1=500万円

なお、前述した通り、遺留分額の計算においては、被相続人の意思表示による特別受益の持ち戻しの免除は認められませんので、被相続人が遺言書などで持ち戻しの免除の意思表示をしていたとしても、上記の遺留分額に影響はありません。

5.特別受益の持ち戻しに関するよくある疑問

特別受益の持ち戻しについて、計算や法律上の取り扱いなどに関するよくある疑問について解説します。

(1) 過去の生前贈与(特別受益)についてはどの時点を価値評価の基準とする?

過去に行われた生前贈与については、相続開始時を評価基準時として特別受益の金額を計算するのが判例・通説となっています。

たとえば、贈与当時に3,000万円の価値がある土地を贈与されたケースで、相続開始時にはその土地の価値が5,000万円まで高騰した場合、5,000万円を特別受益として持ち戻し計算を行います。

(2) 特別受益の持ち戻しで相続分がマイナスになった相続人は財産を返すべき?

特別受益の持ち戻し計算を行った結果、相続分がマイナスになった特別受益者である相続人を「超過特別受益者」といいます。

超過特別受益者は、残っている遺産を相続することはできませんが(民法903条2項)、すでに受けた特別受益に当たる遺贈・贈与を返還する必要はありません

ただし、超過特別受益者が受けた遺贈・贈与が原因で遺留分の侵害が発生した場合には、他の相続人から遺留分侵害額請求を受け、金銭の支払い義務を負う可能性があります(民法1046条1項)。

また、超過特別受益者がいることによる、他の共同相続人の相続分の不足額の処理方法については裁判例でも判断が分かれており、非常に難しい問題ですので、弁護士にご相談ください。

(3) 特別受益を持ち戻したことを遺産分割協議書に記載すべき?

遺産分割協議において、特別受益の持ち戻しを考慮したうえで遺産の分割方法を決定した場合には、協議の経緯を明確化し、相続人間の納得感を形成するためにも、その旨を遺産分割協議書に記載しておくとよいでしょう。

遺産分割協議書における、特別受益に関する記載の条文例を紹介します。

<特別受益に関する遺産分割協議書の条文例>
・長男Aは、〇年〇月〇日、被相続人から生活費として2,000万円の贈与を受けた。当該贈与は特別受益に該当するので、Aは何らの遺産を相続しない。
・本書の当事者は、被相続人が次男Bに対して〇年〇月〇日に行った生活費1,500万円の贈与について、被相続人が特別受益の持ち戻し免除の意思表示を生前に行ったことを確認する。

6.特別受益の持ち戻しに関する対応は弁護士に相談を

特別受益の持ち戻し計算を正確に行うためには、法律上のルールを正しく適用する必要があります。

特に相続分と遺留分では、計算方法や適用されるルールにいくつか異なる点があるため、弁護士に相談して取り扱いを確認することをお勧めいたします。

また、特別受益者と他の共同相続人との間で争いになりやすく、なかなか遺産分割がまとまらないという例も少なくありません。

泉総合法律事務所では、第三者目線も含めながら冷静に交渉を行い、可能な限り円滑な特別受益問題の解消に努めています。
遺産分割や特別受益についてお困りの際は、ぜひ泉総合法律事務所へご相談ください。

 

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