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遺産分割

相続財産の名義変更の仕方を財産の種類別に解説

相続が発生した場合に、遺言書がなければ、相続人全員が話し合って被相続人の遺産を分割します。
遺産分割協議の結果、相続人が被相続人の遺産を取得することになったら、被相続人名義から相続人名義へと相続財産の名義変更を行うことになります。

名義変更は義務ではないため(土地の相続登記については義務化が予定されています)、ついつい先延ばしにしてしまいがちですが、きちんと名義変更を行っておかなければ、後々トラブルに発展するリスクもあります。

そのため、遺産分割手続きが終了したら、できる限り早めに相続財産の名義変更を行うようにしましょう。

今回は、相続財産の名義変更の仕方を相続財産の種類別に解説します

1.遺産相続と名義変更

遺産を相続することになった場合に、後々のトラブルを避けるには、そのまま放置するのではなく、名義変更が必要になります。

(1) 遺産を取得した場合には名義変更が必要

被相続人が死亡すると、相続が開始します。
被相続人の遺産は、相続開始から遺産分割が成立するまでの間、相続人全員の共有状態となります。その後、遺産分割が成立すると、その内容に従って各相続人が遺産を取得することになります。

遺産分割協議では、揉めることがないようにと、相続財産を相続人全員の共有名義にしたままにすることがあります。しかし、相続財産、特に不動産は、被相続人の名義から法定相続分による相続人全員の共有名義に変更することはトラブルの原因となるため、避けたほうが無難です。

[参考記事] 共同相続の登記|不動産を共同相続とするべきではない理由

一方、遺産分割協議によって遺産を取得する相続人が決まった場合は、相続財産の名義を被相続人から相続人名義へと変更することになります。

相続財産の名義変更には、基本的に、いつまでにしなければならないといった期限がなく、費用もかかることから、遺産分割が完了しても名義変更をせずに放置してしまう方もいます。
しかし、相続財産の名義変更を怠ると、以下のようなデメリットがあるので注意が必要です。

(2) 名義変更を放置した場合のデメリット

名義変更を放置した場合のデメリットには、以下のものが挙げられます。

①権利関係が複雑になる

名義変更をしないまま遺産を取得した相続人が死亡してしまうと、名義変更未了の遺産を含めて、亡くなった方の相続人が遺産分割の手続きを行わなければなりません。

しかし、長い間名義変更を放置していると、遺産分割協議によって当該遺産を取得したことを証明することが困難になるおそれがあります。このような場合には、当該遺産の本来の相続人との間で再度遺産分割協議を行わなければなりません。

もし、本来の相続人が亡くなっていれば、さらにその相続人と遺産分割協議を行わなければならず、権利関係が非常に複雑になるというデメリットがあります。

②遺産の処分ができない

名義変更未了の遺産は、被相続人名義のままとなっています。したがって、第三者には、遺産を取得した相続人が、本当に当該遺産に関する権利を有しているかがわかりません。
売却などで処分しようとしても、真の権利者かどうかがわからない状態では、なかなか買い手も現れないでしょう。

このように、名義変更未了の状態では、遺産を処分しようとしてもできないというデメリットがあります。

2.不動産の名義変更の手続き

遺産である不動産(土地、マンションなどを含む建物)を取得することになった場合には、以下のような相続登記の手続きを行います。

(1) 相続登記とは

相続登記とは、被相続人が死亡し、相続が開始したときに被相続人が所有していた不動産の登記名義を相続人に変更する手続きのことをいいます。2022年1月現在、相続登記は法律上の義務ではなく、特に期限もありません。そのため、遺産分割の完了後も、登記手続きを放置している人が少なくありません。

その結果、所有者不明の不動産が増えたために、さまざまな弊害が生じており、2024年度を目途に、土地の相続登記が義務化される見込みです。

まだ相続登記を行っていないという方は、早めに手続きを進めるようにしましょう。

(2) 相続登記の必要書類

相続登記をする際には、概ね以下の書類が必要になります。

①被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本 相続人が誰であるかを確定するために必要になります。
②被相続人の死亡時の住民票または戸籍の附票 戸籍上の被相続人と登記簿上の被相続人が同一人物であることを証明するために必要になります。
③相続人全員の戸籍謄本 相続開始時に相続人が生存していることを証明するために必要になります。
④相続人の住民票 不動産を相続することになる相続人の住民票が必要になります。
⑤不動産の固定資産評価証明書 相続登記の際には、登録免許税を納めなければなりません。登録免許税は、不動産の評価額によって異なるため、登録免許税を算出するために固定資産評価証明書が必要になります
⑥登記事項証明書(登記簿謄本)
登記申請書を記入する際に、対象不動産の所在地や地番などの基本情報が必要になります。全国どこの法務局でも取得することができますので、お近くの法務局で取得しましょう。
⑦遺産分割協議書または遺言書 法定相続分とは異なる内容で相続登記を行う場合には、遺産分割協議書または遺言書が必要になります。遺産分割協議書には、相続人全員が実印で押印をする必要があります。
⑧相続人全員の印鑑証明書 遺産分割協議書に基づいて相続登記を行う場合には、遺産分割協議書に押印をした実印の印鑑証明書が必要になります。

(3) 相続登記の流れ

相続登記は、司法書士に依頼して行うことが多いと思います。しかし、ご自分で手続きをすることも可能です。

ご自分で手続きをする場合には、必要事項を記入した登記申請書に上記の必要書類を添付して、法務局の窓口または郵送で申請を行います。登記申請書の記入方法や、添付書類に不安がある方は、直接窓口で申請する方が安心でしょう。

申請書類に不備がなければ、申請から1週間から10日程度で登記が完了します。登記が完了した後は、法務局で登記識別情報通知書と登記完了証を受け取って、相続登記の手続きは終了します。

3.預貯金口座の名義変更の手続き

遺産である預貯金を取得することになった場合には、以下のような預貯金口座の名義変更手続きを行います。

(1) 預貯金口座の相続の基礎知識

被相続人が死亡すると、被相続人が有していた預貯金口座は凍結されて使用することができなくなります。
この処置は、被相続人名義の預貯金が、遺産分割が完了するまで相続人全員の共有財産になるため、一部の相続人による勝手な出金がなされてトラブルになることを防ぐためです。

最高裁平成28年12月19日決定は、預金債権について以下のように述べています。

「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解する」

従来の最高裁判例では、預貯金債権は遺産分割の対象とならないとされていましたが、この決定によって判例変更がなされ、現在は、遺産分割手続きが完了するまでは、各相続人の法定相続分の限度であったとしても払い戻しを請求することができなくなりました。

もっとも、必要に応じて、仮払い制度を利用することはできます。

[参考記事] 相続法改正|遺産分割前の預貯金の仮払い制度とは?

(2) 預貯金口座の名義変更の必要書類

預貯金口座の名義変更の手続きに必要な書類は、各金融機関によって異なります。詳しくは、金融機関に問い合わせて確認するようにしましょう。

一般的には、以下の必要書類が必要になることが多いといえます。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人名義の通帳やキャッシュカード
  • 遺産分割協議書または遺言書

(3) 預貯金口座の名義変更の流れ

預貯金口座の名義変更を行うには、上記の必要書類を持参し、金融機関の窓口で金融機関所定の用紙に必要事項を記入し、被相続人の預貯金の払い戻し請求を行います。

書類に不備がなければ、後日、相続人が指定した口座に遺産である預貯金が振り込まれることになります。

4.有価証券の名義変更の手続き

株式の名義は、相続人へと変更をしない限り、売却したくても売却できない、配当金を受けられないといったデメリットがあります。

遺産である有価証券を取得することになった場合には、概ね以下のような有価証券の名義変更手続きを行います。有価証券には国債、社債、株式といったものがありますが、株式を例にご説明します。

(1) 株式の相続の基礎知識

通常、一般に売買されている上場株式は、証券会社で口座を開設して証券会社を窓口として管理されているため、証券会社に残高証明書の発行を依頼します。

この残高証明書によって株式の保有残高や保有銘柄を確認することができます。

(2) 株式の名義変更の必要書類

株式の名義変更の手続きに必要な書類は、各証券会社によって異なっています。詳しくは、各証券会社に問い合わせて確認するようにしましょう。

一般的には、以下の必要書類が必要になることが多いといえます。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 株券(株券が発行されていない場合は不要)
  • 遺産分割協議書または遺言書

(3) 株式の名義変更の流れ

株式の名義変更を行う場合には、上記の必要書類を持参し、証券会社の窓口で証券会社所定の用紙に必要事項を記入し、被相続人所有の株式の名義変更の手続きを行います。

相続人が当該証券会社に口座を持っていない場合には、口座を作り、株式をその口座に移します。これで名義変更の手続きは終了します。

5.自動車の名義変更の手続き

遺産である自動車を取得することになった場合には、概ね以下のような車の名義変更手続きを行います。

(1) 自動車の相続の基礎知識

自動車の名義変更についても、法律上の義務はなく、名義変更を行わなかったとしても罰則などはありません。

しかし、名義変更を怠っていると、自動車税納付書が届かない、車の売却や廃車の手続きができないなどのデメリットがあります。遺産分割が完了した後は、速やかに名義変更を行うようにしましょう。

(2) 自動車の名義変更の必要書類

自動車の名義変更をする際には、概ね以下の書類が必要になります。

  • 被相続人が死亡したことが確認できる戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 自動車検査証(車検証)
  • 車庫証明書
  • 遺産分割協議書または遺言書
  • 車を取得する相続人の印鑑証明書

(3) 自動車の名義変更の流れ

自動車の名義変更を行う場合には、上記の必要書類を持参して管轄する運輸支局に出向き、名義変更の申請を行います。

書類に不備がなければ、申請が受理され、名義変更後の新しい車検証の交付を受けることができます。
最後に、自動車税と自動車取得税などの申告を行うことで、名義変更の手続きは終了です。

6.まとめ

相続が開始した場合には、遺産分割の手続きだけでなく、遺産分割によって取得した相続財産の種類に応じた名義変更が必要になってきます。

名義変更を怠っているとさまざまなデメリットがあります。遺産分割が終わった後は、速やかに名義変更の手続きを行うようにしましょう。

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