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遺産分割

遺産分割前に遺産の不動産を売却できる?

遺産に不動産が含まれている場合には、遺産分割協議を行って、当該不動産を相続する人を決めることになります。

しかし、誰も不動産の取得を希望しない場合や、納税資金を確保する必要性がある場合など、遺産分割前に不動産の売却をしなければならないという事情があることもあります。

このような場合に、遺産分割未了の不動産を売却することはできるのでしょうか?

今回は、遺産分割前の不動産売却方法などについてわかりやすく解説します。

1.遺産分割前に不動産の売却は可能

結論から言うと、遺産分割が終わっていない状態で遺産を売却するためには、共有者である相続人全員の同意を得て行うことになります。

被相続人が死亡して被相続人の遺言書が残されていなかった場合、被相続人の遺産は、遺産分割協議が成立するまでの間は各相続人の法定相続分に応じて共有状態となります(民法898条)。
そして、共有物を売却するためには、共有者全員の同意が必要になるのです(民法251条)。

また、相続人全員の同意のほかに、相続登記をすることが必要になります。
相続登記とは、不動産の名義を被相続人名義から相続人名義に変更することをいいます。

相続登記が未了の状態だと、売却しようとする不動産は、既に亡くなっている被相続人名義になっています。

当該不動産を売却した場合には売主から買主に不動産の名義を変更することになりますが、被相続人から買主に直接名義を移転することができないため、一旦相続登記を経る必要があるのです。

不動産を購入する側としても、売主の名義と登記名義が異なっている場合には、真の所有者かどうかがわからず購入を躊躇することもあります。また、ローンを組んで購入しようとしても金融機関の審査が通らないことが多いです。
そのため、相続登記を経ていなければ売却を進めることが困難です。

このように、遺産分割が成立する前であっても不動産を売却することはできますが、相続人全員の同意と相続登記をすることが必要になります。

2.遺産分割前の不動産売却の流れと手順

遺産分割前の不動産を売却する場合には、一般的には以下のような流れと手順を踏んで進めていくことになります。

(1) 相続登記の申請

相続登記の方法としては、相続人全員の共有名義にする方法と代表者の単独名義にする方法がありますが、それぞれメリットとデメリットがありますので、詳しくは後述します。

相続登記には、いつまでにしなければならないという期限はありませんが、相続登記をしなければ不動産の売却をすることができませんので、早めに手続きを行うようにしましょう。

なお、相続登記の申請の詳細については、以下の記事をご参照ください。

[参考記事] 相続登記の申請方法は?手続き・必要書類・登記申請書の書式・費用

(2) 売却手続きの依頼

個人間で不動産の売却を行うことも可能ですが、通常は、不動産業者と媒介契約を交わして不動産の売却を進めていきます。

相続登記において相続人全員の共有名義とした場合には、相続人全員が不動産業者との媒介契約書に署名捺印をしなければなりません。他方、代表者の単独名義にした場合には、代表者の署名捺印で足りることになります。

その後は、通常の不動産の売却手続きと同様で、買主が見つかれば買主と売買契約を締結し、決済日に不動産売却代金の支払いを受けて、不動産の所有権を移転します。

(3) 売却代金の分配

不動産を売却した場合には、不動産の売却代金が相続財産に含まれることになります。そのため、他の相続財産と併せて、相続人全員で遺産分割協議を行い、成立した遺産分割協議の内容に従って売却代金を含めて遺産を分配します。

相続登記において代表者の単独名義にした場合には、売却代金は一旦代表者となった相続人が受け取ることになります。

しかし、これは便宜上代表者名義にしたに過ぎませんので、代表者が取得した売却代金については、遺産分割協議の内容に従って他の相続人に分配する必要があります。

(4) 譲渡所得税の申告

不動産を売却したことによって利益が出る場合には、当該利益に対して譲渡所得税が課税されることになります。

譲渡所得税がかかる場合には、各相続人は、不動産を譲渡した年の翌年の3月15日までに所得税の確定申告および納税をする必要があります。

なお、相続財産を譲渡した場合には、短期間に相続税と所得税が課税されることになり不利益が大きいため、相続開始日から3年10か月以内に売却をした場合には、支払った相続税のうち売却資産に対応する相続税額を上記の取得価額に加算することができるという特例があります。

3.登記は共有名義?代表者単独名義?

不動産売却前の相続登記では、相続人全員の共有名義と代表者の単独名義のどちらにするのが良いのでしょうか。

最後に、それぞれのメリットとデメリットを説明します。

(1) 共有名義のメリットとデメリット

相続登記を相続人全員の共有名義にする場合には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

①メリット

相続財産である不動産を売却した場合には、上記の通り譲渡所得税がかかりますが、譲渡所得税の納税義務がある人は当該不動産の名義人であった人です。
そのため、相続人全員の共有名義であれば、各相続人が自分の法定相続分に応じて税金を負担することになりますので、相続人間の不公平を解消することができます。

また、相続人全員の共有名義であれば、各相続人は不動産全体を勝手に処分することはできません。そのため、相続人の一部が無断で不動産を処分するというトラブルを回避することができます。

②デメリット

まず、不動産業者との媒介契約や売買契約については、相続人全員が手続きに参加して行わなければなりません。相続人の数が多い場合や遠方に居住する相続人がいる場合には、手続きが煩雑になるというデメリットがあります。

また、不動産がすぐに売却することができれば良いですが、なかなか買い手がつかない不動産であれば、長期間共有状態のままになってしまいます。

共有状態のままでは、将来、共有者が死亡して相続が発生した場合に権利関係が複雑になるというデメリットもあります。

(2) 代表者単独名義のメリットとデメリット

相続登記を代表者単独名義にする場合には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

①メリット

代表者の単独名義にすることによって、名義人である代表者が不動産の売却手続きを行えば済みます。

相続人が複数人いる、遠方に相続人が居住しているなどで売却手続きに支障が生じる場合には、単独名義にすることによってスムーズな売却を行うことができるといえます。

②デメリット

相続登記を代表者単独名義にした場合、不動産を売却して譲渡利益が出たら、名義人である代表者が申告をして納税を行わなければなりません。
不動産の売却によって代表者の所得が一時的に上がることになりますので、代表者の住民税が上がるという負担も生じます。

代表者が負担した税金を相続人全員で公平に負担することができれば良いのですが、売却代金の分配時期と納税時期がずれるなどして正確に金額を計算して負担することが難しいという面もあります。

代表者が不動産を売却するために要した手間なども含めて代表者に多めに遺産を分配することに全員が同意できるのであれば問題ありませんが、それができない場合には、代表者の負担が大きくなるというデメリットがあります。

また、代表者単独名義の不動産を売却した後に、売却代金をその他の相続人に分配した場合には、相続人間の「贈与」であるとみなされて贈与税が課税されることがあります。

そのような事態にならないようにするためには、遺産分割協議書に「換価分割であること」や「分配割合」を明記しておくことが必要になるでしょう。

4.まとめ

遺産分割前に不動産を売却する場合、相続登記など、通常の不動産売却とは異なる手続きが必要になります。

遺産分割前に相続財産に含まれる不動産の売却を検討している方は、一度専門家である弁護士に相談をしてアドバイスをもらうと良いでしょう。

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