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寡婦年金とは?いくらもらえるの?

寡婦年金」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。

一家の生計を維持していた方が国民年金に加入していると、一定の条件の下にある専業主婦などには、遺族年金が支給されません。その救済として制度化されているのが、寡婦年金です。

ここでは、寡婦年金とは何か、対象者や受給要件、受給額や受給期間など、寡婦年金の基本的な事柄についてご紹介します。

1.寡婦年金について

まず、寡婦年金とはどういう年金なのか、その基本について解説します。

(1) 寡婦年金とは

国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなった場合には、その方によって生計を維持していた遺族に対して遺族年金が支給されます。

生計を維持していた方が国民年金に加入していた場合に、遺族年金が支払われるのは原則として18歳未満の子供がいる場合が前提となります。

したがって、子供がいない遺族や、子供が18歳以上の遺族には遺族年金は支給されないため、ご自分の老齢基礎年金受給年齢まで収入が途絶える可能性があります。

そこで、これらの方々の救済措置として設けられているのが寡婦年金です。

老齢年金は、老後の生活を支えるために支給される年金で、一般的に「年金」と呼ばれるものは老齢年金のことを指しています。
国民年金加入者は、老齢基礎年金を原則として65歳から受給します。

寡婦年金とは、夫が受給するはずであった老齢年金の一部が、妻へ支給される年金です。
夫が長年に渡って保険料を払い込んできたにも関わらず、老齢年金をもらう前に死亡してしまい、かつ、遺族年金まで貰えないとなると、それまでの保険料が掛け捨てになってしまうことになるため、妻が代わりに受け取ることができるように寡婦年金が設けられているのです。

なお、寡婦年金は妻にのみある制度です。
妻が自営業の大黒柱で、夫が専業主夫だった場合に、妻が先に死亡したとしても夫に寡婦年金は支給されません。男女平等社会の現代においても男女差が残る年金制度です。

(2) 寡婦年金の受給額

寡婦年金で受給できる金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の3/4相当です。

最新の令和4年度年金額改定後(令和4年4月分~)の老齢基礎年金は、満額で777,792円(令和4年新規裁定者【67歳以下】)となることから、保険料を全期間である40年納めた夫が死亡した場合の寡婦年金は、次の通り、年間583,344円ということになります。

777,792円×3/4=583,344円

【参考サイト】令和4年度の年金額改定について|厚生労働省

(3) 寡婦年金の受給期間

寡婦年金は、夫により生計を維持されていた妻が60歳から65歳になるまでの期間に支給されます。

例えば、50歳で夫が死亡した場合には、60歳まで待った後、5年間受給することができます。

また、62歳の時に夫が死亡した場合には65歳までの3年間のみ支給されます。

2.寡婦年金の受給要件

寡婦年金は、国民年金の被保険者の妻であれば誰でも受給できるわけではありません。

次の適用要件すべてに該当している場合に限られます。

妻の要件

  • 夫に生計を維持されている妻である(内縁の妻可)
  • 夫の死亡後5年以内の請求である
  • 妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受給していない

夫の要件

  • 国民年金の被保険者である
  • 国民年金保険料納付済期間が10年以上である
  • 死亡年齢が65歳未満である
  • 老齢基礎年金や障害基礎年金を受給したことがない

3.寡婦年金と死亡一時金との違い

死亡一時金とは、国民年金の被保険者によって生計を維持していた人に支給される年金であるという点は寡婦年金と同じです。しかし、受給要件と受給対象者に多少違いがあります。

受給要件

  • 死亡した人が国民年金の被保険者である
  • 死亡した人の国民年金保険料の納付済期間が36月以上である
  • 死亡した人が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給したことがない
  • 死亡後2年以内の請求である

受給対象者は妻だけではなく、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹も含まれ、その中から優先順位の高い人に支給されます。

したがって妻は、寡婦年金と死亡一時金のどちらの受給権も持っているということになります。
ただし、併給はできないため注意してください。「4.他の年金と一緒に受給できるのか?」で詳しく解説します。

寡婦年金 死亡一時金
受給対象者 配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
保険料納付済期間 10年以上 36月以上
請求期間 死亡後5年以内 死亡後2年以内

4.他の年金と一緒に受給できるのか?

寡婦年金は、遺族年金や死亡一時金と併給することはできるのでしょうか。

(1) 寡婦年金と遺族年金

寡婦年金と遺族年金を同時に受給することはできません

ただし、過去に18歳未満の子供を育てていることから遺族年金を受給しており、その後18歳に達したことで受給が終わっている場合には、60歳に到達した時点で寡婦年金を受給することができます。

よって、同時でなければどちらも受給することができるということになります。

(2) 寡婦年金と死亡一時金

寡婦年金との併給が可能な遺族に支給されるお金が死亡一時金ですが、前述した通り、寡婦年金との同時受給はできません。

妻で、どちらの受給権も持っている場合には、どちらを受け取るか選択する必要があります。受け取れる総額を判断材料にして、単純にどちらが多いかで選択すると良いでしょう。

(3) 寡婦年金と死亡一時金どちらを選択すべき?

それでは実際に、寡婦年金と死亡一時金どちらが多く受給できるかを計算してみましょう。

①寡婦年金の支給額

まず寡婦年金ですが、夫が満額の老齢基礎年金を受け取ることができたとした場合に、妻が60~65歳の5年間で受け取る寡婦年金の総額は、2,916,720円(583,344円×5年)です。

②死亡一時金の支給額

次に死亡一時金の支給額は、12~32万円で保険料の納付済期間によって変動し、支給されるのは1回のみとなっています。夫が全期間納付済とすると、32万円が1回支給されます。

③寡婦年金と死亡一時金との比較

5年間で最大300万円近く受給できる寡婦年金と、1回限り最大32万円の死亡一時金とでは、圧倒的に寡婦年金の方が大きくなります。

ただし、妻が受給可能年齢65歳の老齢基礎年金を繰り上げて受給していた場合、寡婦年金の受給要件である「妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受給していない」に該当しなくなるため、寡婦年金は受給できません。したがって、この場合は、死亡一時金一択ということになります。

また、夫が30、40代で死亡し、寡婦年金の受給まで何十年もある場合には、すぐに受け取ることができる死亡一時金の方が目先の生活の助けになります。

受給額だけを考えると、ほとんどの方は寡婦年金を選択した方が有利になるでしょう。しかし、寡婦年金と死亡一時金、どちらを選択すべきかについては、このようにその方が置かれたシチュエーションによって異なることがあるのです。

5.寡婦年金の受給手続き

寡婦年金に限らず、すべての年金は受給権があったとしても受給手続きを行わないと支給されません。

寡婦年金の受給要件に該当したら、速やかに手続きを行いましょう。

(1) 寡婦年金の受給に必要な書類

  • 年金請求書(国民年金寡婦年金)(様式第109号)
  • 夫の年金手帳(提出できないときは、その理由書が必要)
  • 寡婦年金を受け取る金融機関の口座の預貯金通帳など
    (カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号が記載されたもの)
  • 戸籍謄本
  • 世帯全員の住民票
  • 死亡者の住民票除票写し(世帯全員の住民票写しに含まれる場合は不要)
  • 死亡診断書
  • 妻の収入が確認できる書類(所得証明書、源泉徴収票など)
  • 年金証書(他の年金を受給している場合)

この他にも、妻が内縁関係の場合には、「内縁関係を証明する資料」など、別途必要な書類があります。

【出典サイト】寡婦年金を受けるとき|日本年金機構

(2) 請求窓口

寡婦年金の請求は、次のいずれかの窓口で行います。

  • 住所地の市区町村役場
  • 年金事務所
  • 街角の年金相談センター

最寄りの年金事務所と街角の年金相談センターについては、こちらから検索することができます。

【参考サイト】全国の相談・手続き窓口|日本年金機構

6.まとめ

寡婦年金は、国民年金に加入していた夫に先立たれた妻が、60代の生活を支えるための重要な資金になります。

ただし、受給要件に該当していても、夫の死亡後5年以内に受給手続きを行わなければ受け取ることができないため注意が必要です。もしかしてと思われた場合には、すぐに年金事務所などに相談してみましょう。

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