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遺産分割

内縁の妻・夫がパートナーの財産を受け継ぐ方法

内縁の妻 相続

相続法の改正により、2020年からは配偶者居住権などが認められるようになりましたが、何年連れ添ったとしても、内縁の妻・夫には相続権は認められません。

もし内縁のパートナーの財産を受け継ぎたいと考えるのであれば、生前から話し合いを重ねて、相続を見据えた対策を講じておくことが大切です。

この記事では、内縁の妻・夫の遺産を承継する方法や、その他内縁と相続に関する法律上の注意点などについて解説します。

1.内縁の妻・夫には相続権が認められない

「内縁」とは、法律上の婚姻届出が行われていないものの、男女が協力して夫婦としての生活を営んでいる状態をいいます。

内縁と法律上の婚姻との違いは、単に婚姻届が提出されているかどうかの点にあり、実質的には夫婦であるという点では、両者に差はありません。

したがって、最高裁の判例上、内縁は法的に保護されるべき利益(生活関係)として、法律上の婚姻に準じた法的保護が与えられています(最高裁昭和33年4月11日判決。内縁の破棄に基づく損害賠償請求、および医療費負担について)。

しかし、相続においては上記の考え方が適用されず、内縁のパートナーには相続権を認めないのが判例・通説となっています(最高裁平成12年3月10日決定)。

そのため、法律に基づいて、内縁の妻・夫に相続権が自動的に与えられることはありません。

2.内縁の妻・夫が遺産を承継する方法

民法のルールでは、内縁のパートナーが亡くなった場合に、残されたパートナーには、財産を承継する権利が原則として認められませんが、内縁の妻・夫がパートナーの遺産を承継する方法がないわけではありません。

具体的には、以下の方法によって、内縁の妻・夫でも財産を承継することができる可能性があります。

なお、もちろん、婚姻届を提出し法律上も夫婦となれば、通常通り配偶者として相続人になりますが、様々な事情でそうされない方のために、ここでは内縁の妻・夫のまま財産を承継する方法をご紹介します。

(1) 遺言による贈与(遺贈)を受ける

被相続人は、民法上の法定相続分の規定にかかわらず、遺言によって自らの遺産を贈与することができます(民法964条)。これを「遺贈」といいます。

遺贈は誰に対しても行うことができるため、内縁の妻・夫を遺贈の相手方として指定することも可能です。

(2) 生前贈与を受ける

生前贈与を活用することも、内縁の妻・夫に財産を引き継ぐための有力な選択肢です。
生前贈与は、贈与者と受贈者の間の合意によって自由に行うことができます(民法549条)。

特に生前贈与については、毎年110万円までの非課税枠が設けられていることから、少しずつ内縁のパートナーに財産を贈与すれば、税負担の軽減にも繋がります。

ただし毎年継続して贈与を行った場合、連年贈与(定期贈与)として贈与税が課税される場合もあるのでご注意ください。

(3) 特別縁故者として遺産を相続する

遺贈や生前贈与以外にも、内縁の妻・夫が「特別縁故者」として遺産を相続するという道も考えられます。

内縁の妻・夫は、「被相続人と生計を同じくしていた者」として特別縁故者に該当する可能性があり、該当する場合は相続財産を受け取ることができます(民法958条の3第1項)。

ただし、特別縁故者が遺産を相続するためには、以下の厳しい要件・手続きをすべて満たさなければなりません。

  • ① ほかに相続人のあることが明らかでないこと(民法951条)
  • ② 相続財産の管理人が選任され、家庭裁判所により、その旨が公告されたこと(民法952条1項、2項)
  • ③ ②の公告から2か月が経過した後、相続財産管理人により、2か月以上の期間を定めて、すべての相続債権者・受遺者に対して弁済の請求をすべき旨の公告が行われたこと(民法957条2項)
  • ④ ③の公告期間満了後、家庭裁判所により、6か月以上の期間を定めて、相続人の捜索に関する公告が行われたこと(民法958条1項)
  • ⑤ ④の公告期間満了後3か月以内に、特別縁故者が家庭裁判所に対して、相続財産の分与の請求を行うこと(民法958条の3第1項、第2項)
  • ⑥ 家庭裁判所が、特別縁故者に対する相続財産の分与を相当と認めること

上記の手続きからわかるように、子・直系尊属・兄弟姉妹などの相続人がほかに存在する場合には、内縁のパートナーが特別縁故者として遺産を相続することはできません。

また、仮に他に相続人がいないとしても、上記のような複雑かつ長期にわたる手続を経る必要があります。

よって、特別縁故者としての相続に期待をかけるのではなく、生前であれば、できるだけ被相続人の意思が明確になる遺贈や生前贈与を活用した相続対策を検討するのが理想的でしょう。

[参考記事] 特別縁故者の申立|誰がなれる?相続財産分与の条件・裁判例

(4) 生命保険の活用

加入する生命保険の受取人に内縁の妻・夫を指定すると、死亡保険金を残されたパートナーに残すことができます。

この場合、死亡保険金は、受取人固有の財産となるため、後述する遺留分の請求対象とならず、心配する必要がありません。

ただし、内縁のパートナーが受け取った死亡保険金は、相続税の課税対象となってしまいます。

(5) 遺族年金を受け取れる可能性

遺産の承継以外にも、内縁のパートナーは、厚生年金の遺族基礎年金や国民年金の遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。

厚生年金法や国民年金法は、「被保険者の死亡当時、被保険者によって生計を維持していた」者であれば、「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」であっても、遺族年金の受給権者となることができるからです(国民年金法2条7項、37条1項、37条の2第1項、厚生年金法3条1項、第58条1項、59条1項)。

3.遺贈・生前贈与の場合には「遺留分」の侵害に注意

内縁の妻・夫が、遺贈または生前贈与によってパートナーの財産を承継した場合、他の相続人が有する「遺留分」との関係で生じるトラブルに注意が必要です。

(1) 「遺留分」とは?

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、相続できる遺産の最低保障割合を意味します(民法1042条1項)。

したがって、ほかに兄弟姉妹以外の法定相続人が存在する場合には、遺留分侵害の問題があり得ることに留意する必要があります。

各法定相続人の遺留分は、以下のルールによって決定されます。

  • 直系尊属のみが相続人の場合
    法定相続分の3分の1
  • それ以外の場合
    法定相続分の2分の1
遺留分とは [参考記事] 遺留分とは|概要と遺留分割合をわかりやすく解説

(2) 他の相続人から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性

ほかの相続人の中で、遺留分未満の割合による遺産しか相続できなかった人がいる場合には、その人の遺留分が侵害されている状態です。

この場合、遺留分侵害の対象となる遺贈・贈与を受けた人は、遺留分を侵害された人の請求に応じて金銭を支払わなければなりません(民法1046条1項)。
この請求を「遺留分侵害額請求」といいます。

内縁の妻・夫に対する遺贈は、そのすべてが遺留分侵害額請求の対象となります(民法1043条1項)。

また、内縁の妻・夫に対する生前贈与は、相続開始前の1年間に行われたものに限り、その全額が遺留分侵害額請求の対象です(民法1044条1項)。

もし内縁の妻・夫として、被相続人から多額の遺贈や生前贈与を受けた場合には、遺留分侵害額請求を受ける可能性があることを覚悟しておきましょう。

また、これから内縁の妻・夫に遺贈や贈与を検討されている方は、遺留分に配慮するとともに、場合によって推定相続人に理解を求めていくのも大切でしょう。

(3) 内縁の妻・夫には遺留分は認められない

なお、内縁の妻・夫には相続権が認められていないので、当然ながら遺留分も認められません。
したがって、内縁の妻・夫が全く遺産を相続できなかったとしても、ほかの相続人に対して遺留分侵害額請求を行うことはできません。

4.被相続人が所有する家に住んでいた内縁のパートナーは出ていくべき?

内縁の妻・夫が、被相続人の所有する家に同居しているというケースはよくあります。

内縁の妻・夫に家の土地・建物が遺贈された場合には問題ありませんが、そうでなければ、家の土地・建物は別の相続人が承継することになります。
この場合、内縁のパートナーは家から出ていかなければならないのでしょうか。

(1) 一定期間は出ていく必要がないケースが多い

この点、内縁のパートナーの居住権を保護する観点から、内縁のパートナーに対する建物明渡請求を棄却する裁判例が数多く存在します。

そのため、居住や夫婦生活の実態にもよりますが、少なくとも一定期間は、内縁のパートナーが家から出ていく必要はないと判断されるケースが多いと考えられます。

(2) 家に住むパートナーを保護する法律構成

裁判例上、内縁のパートナーの居住権を保護する法律構成としては、さまざまなパターンが採用されています。
以下ではその一例を紹介します。

①黙示の使用貸借を認定する

その家で長期間同居し、パートナーに尽くしていた等の事実を踏まえて、内縁配偶者(パートナー)が死亡するまでの間存続する、無償の「使用貸借」が黙示に成立していたと認定した裁判例があります(大阪高裁平成22年10月21日判決等)。

②明渡請求を権利濫用と評価する

家から強制的に追い出されることは、内縁配偶者にとっての不利益があまりにも大きいため、明渡請求を権利濫用(民法1条3項)として棄却した裁判例があります(最高裁昭和39年10月13日、東京地裁平成9年10月3日判決等)。

③建物賃貸借では相続人の賃借権を「援用」する

賃貸の建物に被相続人(賃借人)と居住していた内縁配偶者は、賃借人である被相続人が死亡した場合に、相続人が相続する賃借権を援用(自己の利益のために主張)して建物の居住権を主張できるとした裁判例があります(最高裁昭和42年2月21日)。

また、もし相続人が誰もいない場合には、同居していた内縁配偶者が賃借人としての権利義務を承継しますので(借地借家法36条1項)、やはり居住を続けることができます。

ただし、これらは居住者である内縁のパートナーを保護するには、非常に弱い法律構成であることが否めません。

たとえば、相続人が家の土地・建物を第三者に譲渡した場合、譲受人である第三者からの明渡請求は拒否できない可能性が高いでしょう。また、先程の裁判例(最高裁昭和42年2月21日)では、家屋の賃貸借契約自体が適法に解除されてしまっており、結果、内縁の妻は所有者からの明渡請求を拒めない、と結論付けられています。

そのため、あらかじめ遺言書を作成して、家の土地・建物を内縁のパートナーに遺贈するなど、使用貸借や賃貸借に基づく権利よりも強い権利である、所有権の付与等を準備しておくことをお勧めいたします。

5.内縁関係から生まれた子どもの遺産相続

被相続人と内縁のパートナーの間に生まれた子どもがいるケースでは、その子どもは相続権を有する場合があります。
内縁から生まれた子どもの相続権に関する、民法上のルールを見てみましょう。

(1) 【内縁の妻が死亡した場合】遺産を相続できる

内縁の妻が死亡して被相続人となった場合、その子どもは常に「子」としての相続権を有します(民法887条1項)。

この場合、特別の手続きを要することなく、子どもは被相続人である内縁の妻(母)の遺産を相続することが可能です。

(2) 【内縁の夫が死亡した場合】相続するには認知が必要

一方、内縁関係から生まれた子と父の間に法律上の親子関係を生じさせるには、「認知」の手続きが必要です(民法779条)。

したがって、内縁の夫が死亡した場合に、その子どもが父の遺産を相続するためには、内縁の夫からの認知を受けている必要があります。

なお、認知は遺言によっても行うことができるほか(民法781条2項)、内縁の夫(父)の死亡から3年以内であれば、子の方から認知の訴えを提起することも可能です(民法787条)。

【嫡出子と非嫡出子の相続分は同じ】
内縁関係から生まれた子どもは「非嫡出子(婚外子)」となりますが、現行法では、非嫡出子と「嫡出子(婚姻関係から生まれた子ども)」の相続分は同じとされています。
したがって、被相続人がほかに子どもを持っているケースでも、内縁から生まれた子どもは、ほかの子どもと同等の相続分を受けることができます。

6.まとめ

内縁の妻・夫は、民法上相続権を有しないものの、遺言や生前贈与を活用した生前対策により、パートナーの財産を承継することが可能になります。

内縁のパートナーの相続に関してご不安をお持ちの方は、ぜひ泉総合法律事務所までご相談ください。

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