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相続放棄

連帯保証人と相続の関係|相続放棄の判断ポイントは?

連帯保証人 相続放棄

被相続人が他人の債務の連帯保証人になっていた場合、そのまま相続をすると、思いがけず過大な債務を負ってしまう可能性があります。

連帯保証債務の相続によって不測の損失を被らないようにするためには、相続をするかどうかを判断する段階で、弁護士とともに法的な検討を行うことをお勧めいたします。
場合によっては、相続放棄という選択肢も視野に入れておきましょう。

この記事では、連帯保証債務の相続に関する法律上のルールと、連帯保証債務の相続放棄に関するポイントを中心に解説します。

1.連帯保証人とは?

連帯保証人とは、主たる債務者が負担している債務に不履行が生じた場合、代わりに債務を履行する義務を負っている人をいいます。
たとえば住宅ローンを組む場合、事業用の資金を借り入れる場合、入院費用を支払う場合などに、連帯保証人による保証を求められるケースが多いです。

債権者は、債務不履行が生じたことを条件として、直ちに連帯保証人に対して、不履行となった債務全額を支払うように請求することができます。
通常の保証人とは異なり、連帯保証人には「分別の利益」「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」が認められていないため、連帯保証人は債権者の請求を拒否することができません

このように連帯保証人は、他人の債務を肩代わりしなければならないおそれがある、きわめて危うい地位にあるということを理解しておきましょう。

2.連帯保証債務は相続の対象になる?

被相続人が他人の債務の連帯保証人になっていた場合、連帯保証債務は相続の対象となるのでしょうか。

(1) 原則として相続の対象になる|連帯保証人の地位も引き継がれる

連帯保証債務は、原則として相続の対象となります

相続の対象となるのは、相続開始時点で「被相続人の財産に属した一切の権利義務」とされています(民法896条本文)。

連帯保証債務は被相続人の義務に該当しますので、住宅ローン債務などと同様に、相続の対象となるのが原則です。

なお、すでに具体的に発生している連帯保証債務だけでなく、将来発生する債務不履行を保証しなければならないという、連帯保証人たる「地位」も相続されます
この点は、不動産などの賃貸人たる「地位」が相続されることと似ています。

(2) 例外的に相続の対象にならない連帯保証債務がある

ただし、以下の2つのケースでは、例外的に連帯保証債務が相続の対象になりません。

①極度額の定めがない根保証債務で、相続発生後に生じたもの

根保証とは、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約をいいます。

典型的には、
「特定の契約に基づきAがBに対して負担する一切の債務を保証する」
という内容の保証が、根保証に該当します。

現行民法では、個人が保証人となる根保証については極度額(保証の上限)が定めることが義務付けられています(民法465条の2第1項、2項)。
しかし、民法改正前の2020年3月31日以前に行われた個人根保証については、極度額の定めがないものも存在します。

極度額の定めがない根保証は、保証人が無制限に債務を負担する可能性があるため、そのすべてを相続の対象とするのは相続人にとって酷です。
したがって、極度額の定めがない根保証については、相続開始時点ですでに具体的に発生している保証債務のみを相続の対象とし、将来の債務不履行に係る債務は相続の対象外とされています(最高裁昭和37年11月9日判決)。

②身元保証

民法896条ただし書では、被相続人の一身に専属した義務については、例外的に相続の対象外とされています。
その典型例が「身元保証」です。

身元保証は、家族同士などの個人的な繋がりに基づいて行われることが多いので、一身専属的な義務として、相続の対象外となります(大審院昭和2年7月4日判決)。
ただし、身元保証に基づいて相続開始時点ですでに具体的に発生している債務は、例外の例外として相続の対象となります(大審院昭和10年11月29日判決)。

3.連帯保証債務の負担を回避するには「相続放棄」

連帯保証債務の負担が重いと判断される場合、相続人は相続放棄をすることによって、債務の負担を回避することができます。

(1) 相続放棄とは?

相続放棄とは、被相続人の権利義務を一切相続しないという意思表示をいいます。

相続放棄をした場合、その人は初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
これに伴い、相続放棄をした人が有していた相続分は、他の相続人に移ることになります。

相続放棄が選択されるのは、主に相続財産の中の債務が資産を上回っている場合など、相続をするとかえって損になってしまうケースです。
相続放棄をするかどうかの判断を適切に行うためには、相続財産の調査を行って、資産と債務の全体像を把握する必要があります。

(2) 資産も相続できなくなるので注意

相続放棄をした場合、債務だけでなく資産も一切相続できなくなるので注意が必要です。

たとえば思い入れのある実家の土地・建物が相続財産に含まれていても、相続放棄した場合には、それを相続することができません。
特に相続をしたい財産が存在する場合には、本当に相続放棄をしてよいか、慎重に検討する必要があります。

(3) 連帯保証債務を相続放棄するための手続き

相続放棄をするには、相続放棄をする旨を家庭裁判所に対して申述することが必要です(民法938条)。

申述先は、亡くなった被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

(4) 相続放棄の期間制限は原則3か月|早めの対応を

相続放棄の申述は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行わなければなりません(民法915条1項本文)。

この期間制限を過ぎたばかりに、相続放棄できないということになってしまうと、あまりにも重い債務を支払っていかなければならなくなるおそれがあります。
そのため、相続が開始したら速やかに財産調査を行い、相続放棄が必要かどうかの検討を行うことが大切です。

しかし、被相続人が連帯保証人になっていたことが、相続開始後だいぶ期間が経ってから判明した場合などには、3か月の期間制限に間に合わないケースがあり得ます。
この場合でも、相続放棄が遅れた事情によっては、家庭裁判所によって、相続放棄が例外的に認められる場合があります(同項ただし書)。

したがって、期間制限を過ぎてしまった場合であっても、諦めずに弁護士に相談して、相続放棄できるかどうかを詳しく検討してみることをお勧めいたします。
相続放棄 [参考記事] 相続放棄とは|メリット・デメリットから注意点、手続き方法を解説

4.連帯保証債務を相続放棄するかどうかの判断ポイント

被相続人が他人の債務を連帯保証していた場合、相続放棄するかどうかは、以下の観点を考慮して判断するとよいでしょう。

(1) 保証の上限額が大き過ぎないか

連帯保証債務は、契約内容を確認すれば、以下のとおり相続の対象となる上限額を求めることができます。

  • 保証の対象となる債務が特定されている場合(特定保証)
    →その債務の総額
  • 極度額の定めがある根保証の場合
    →極度額
  • 極度額の定めがない根保証の場合
    →相続開始時点ですでに発生している債務の総額

上記のルールに従って、相続の対象となる連帯保証債務の上限額を求めたうえで、その金額がご自身にとって負担可能なものであるかを確認しましょう。

(2) 債務不履行の見込みがどの程度あるか

連帯保証人は、主たる債務者が債務を期限どおりにきちんと履行する限りは、債務を肩代わりする必要はありません
そのため、主たる債務者がどの程度信用できるか、債務不履行が発生する可能性はどの程度かという観点も、相続放棄をするかどうかの判断において重要になります。

ただし、主たる債務者を信用して、連帯保証債務を含めて相続を承認したとしても、その後の経済状況の変動などによって、突然債務不履行に陥ってしまうリスクは常に存在します。
よって、前述の保証の上限額などとの兼ね合いも考えて、複眼的な視点でリスク分析を行うべきでしょう。

(3) 相続財産中の資産と比較する

相続放棄をすると、被相続人が所有していた資産についても一切相続できなくなります。
よって、相続の対象となる資産と債務の金額を比較することも大切です。

適切に資産と債務の比較を行うためには、相続財産の評価を正しく行うことが必要となります。

評価に関する考え方はさまざまですが、相続放棄に関しては、「資産を売却したときに負債を支払いきれるか」という観点が重要です。
もし資産の価値を過大に評価したあまりに債務超過に陥ってしまうと、自己破産に追い込まれてしまうことにもなりかねません。

資産の評価には専門的な計算が必要ですので、詳しくは弁護士にご相談ください。

5.自分が被相続人の連帯保証人になっている場合はどうなる?

亡くなった親の借金を肩代わりしているケースなど、相続人自身が被相続人の連帯保証人である場合には、主債務者である被相続人の死亡による相続によってどのような影響が生じるのでしょうか。

(1) 相続放棄をしても連帯保証債務は残る

被相続人が主債務者、相続人が連帯保証人の場合、連帯保証債務はもともと相続人自身の債務です。
したがって、連帯保証債務自体が相続によって影響を受けることはありません

(2) 主債務者と連帯保証人の地位が併存することになる

一方、被相続人が負っていた主たる債務は相続の対象となり、相続分の決め方次第では、連帯保証人である相続人にもその全部または一部が承継されます。
この場合、相続人は「主債務者かつ連帯保証人」という立場になります。

相続人が主債務者になった以上、債務不履行が発生していなくても、自分の負担分を債権者に対して支払っていかなければなりません。

(3) 「主債務者かつ連帯保証人」の相続人が相続放棄をしたら?

「主債務者かつ連帯保証人」の相続人が相続放棄をした場合、その相続人は元々あった「連帯保証人」としての地位のみを引き続き有することになります。
この場合における実質的な影響は、他に主たる債務を相続する相続人がいるかどうかによってパターンが分かれます。

①他に主たる債務を相続する相続人がいる場合

他に主たる債務を相続する相続人がいる場合には、相続放棄によって主債務者の地位を失ったことにより、「連帯保証人」である相続人が一義的に債務を支払う必要はなくなります。

つまり、主たる債務を相続した相続人が債務不履行を起こした場合に限って、相続放棄をした相続人が債務を支払えばよいので、相続放棄をする意味があるといえるでしょう。

②他に主たる債務を相続する相続人がいない場合

これに対して、他に主たる債務を相続する相続人がいない場合には、相続放棄によって主債務者がいなくなってしまい、必然的に債務不履行が発生します。
この場合、結局連帯保証人である相続人が、債務の全額を支払う義務を負います。

したがってこのケースでは、もともと連帯保証人であった相続人が、主債務者の地位を手放すために相続放棄をする実益はありません
相続放棄をするかどうかは、自分による連帯保証の対象となっている債務を度外視して判断する必要があるでしょう。

6.まとめ

連帯保証債務も原則として相続の対象となるため、その負担があまりにも重い場合には、相続放棄を検討しましょう。

相続放棄をするかどうかの判断は、正確な相続財産の調査・評価に基づいて行う必要があります。
相続財産の調査・評価には専門的な検討が必要になりますので、実際に相続放棄をする前に弁護士にご相談ください。

また、相続放棄には3か月という短い期間制限が設定されているので、短期間のうちに必要十分な検討を行うことが求められます。

泉総合法律事務所にご相談いただければ、相続放棄の期限に間に合うように、スピーディに対応いたします。
また、万が一期間制限を過ぎてしまっている場合であっても、家庭裁判所とコミュニケーションを取って、できる限り相続放棄が認められるように尽力いたします。
被相続人が連帯保証人になっていることが分かった場合には、お早めにご相談ください。

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