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後見・死後委任

後見制度支援信託・後見制度支援預金とは?

後見開始の申立てがあった場合、家庭裁判所は、後見を開始するかどうかを審理します。
更に、本人が一定の財産を有している場合には、専門職後見人を選任して財産管理を行わせるか、後見制度支援信託または後見制度支援預金の利用を検討すべきかを審理することになります。

その結果、後見制度支援信託または後見制度支援預金の利用が適していると判断した場合には、後見人候補者にこれらの制度の利用をすすめることがあります。

これらはあまり聞きなれない制度ですので、どのような内容の制度なのかを正確に理解している方は少ないかもしれません。

そこで、今回は、後見制度支援信託および後見制度支援信託とはどのような制度なのかについて、そのメリットとデメリットを踏まえて解説します。

1.後見制度支援信託

(1) 後見制度支援信託とは

後見制度支援信託とは、本人の財産のうち日常的な支払いをするために必要となる金銭については親族後見人が管理をし、通常使用しない金銭については信託銀行などに信託をする制度のことをいいます。

信託とは、委託者が自分の財産を信頼できる受託者に移転させ、受託者が一定の目的に従って、受益者のために引き渡された財産を管理・運用する仕組みのことをいいます。

①対象となる事件

後見制度支援信託は、成年後見と未成年後見の事案について利用することが可能であり、保佐、補助および任意後見の事案では利用することができません。

②対象となる財産

後見制度支援信託を利用して信託銀行などに信託することができる財産は、金銭に限られています。

また、株式、投資信託、国債などの金融商品については、それを売却・換金した場合には信託の対象財産とすることが可能ですが、本人の財産状況を大きく変更する可能性があるため、売却・換金をするかどうかは個別の事案ごとに検討することになります。

これに対して、不動産や動産については、そのまま信託することはできず、後見制度支援信託を利用する目的で売却するということもできません。

(2) 後見制度支援信託のメリット

後見制度支援信託のメリットとしては、以下のものが挙げられます。

①財産管理者の負担が軽減する

後見制度支援信託を利用して信託銀行などに本人の財産を信託した場合には、親族後見人が管理すべき財産は、日常的な支払いをするために必要となる金銭に限られます。

そのため、後見制度支援信託を利用することによって、財産管理を行う親族後見人としては、その負担が大きく軽減されるというメリットがあります。

②本人の財産を安全に管理することができる

後見制度支援信託を利用すると、信託銀行などに信託した信託財産を払い戻したり、信託契約を解約したりするために、家庭裁判所が発行する指示書が必要になります。

後見人が多額の金銭を管理していると、場合によっては横領などの不祥事が生じることもありますが、信託銀行などに信託して裁判所の監督下におかれることによって、そのような不祥事を防ぐことが可能になります。

本人の財産をより安全に管理することができるというのも後見制度支援信託のメリットです。

③親族後見人による後見業務が可能

本人が多額の資産を有している場合には、後見開始の申し立ての際に親族後見人を候補者として申立てをしたとしても、裁判所の判断で弁護士や司法書士などの専門職後見人が選任されることになります。

専門職後見人が選任された場合には、本人の財産から専門職後見人に対して報酬を支払わなければなりません。

しかし、後見制度支援信託の場合には、信託銀行などへの信託にあたって専門職後見人が選任されることはありますが、信託手続きが終了した後は専門職後見人は辞任することになります。

そのため、それ以降は親族後見人のみによる後見業務が可能になりますので、専門職後見人への継続的な報酬支払いの負担を免れることができます。

(3) 後見制度支援信託のデメリット

後見制度支援信託のメリットとしては、以下のものが挙げられます。

①信託財産の払い戻しに手間がかかる

信託契約締結後、親族後見人は、信託銀行から定期的に送金される金銭を管理して日常的な支出に充てることになります。しかし、本人のために多額の支出が必要になった場合など、後見人が手元で管理している金銭だけでは足りなくなることがあります。

このような場合には、後見人が自らの判断で信託銀行から信託財産の払い戻しを受けることはできず、家庭裁判所に対して、必要となる金額とその理由を記載した報告書を提出し、家庭裁判所から発行される指示書がなければ払い戻しを受けることができません。

すぐに金銭が必要になる場合であっても、一定の手続きを踏まなければならないというのが後見制度支援信託のデメリットといえます。

②対応できる金融機関が限られている

後見制度支援信託は、どの金融機関でも取り扱いができるというわけではなく、対応できる金融機関が限られています。自宅の周辺に対応可能な金融機関があれば良いですが、遠方の金融機関しか対応していないという場合には、後見人には大きな負担となります。

なお、令和2年4月1日現在で、後見制度支援信託に対応した信託商品を提供している金融機関は、以下のところになります。

  • 三井住友信託銀行
  • みずほ信託銀行
  • 三菱UFJ信託銀行
  • りそな銀行
  • 千葉銀行
  • 中国銀行
  • 京都銀行

2.後見制度支援預金

(1) 後見制度支援預金とは

後見制度支援預金とは、本人の財産のうち、日常的な支払いをするために必要となる金銭については親族後見人が管理をし、通常使用しない金銭については金融機関などに後見制度支援預金として預金をする制度のことをいいます。

対象となる財産が金銭であるということや、対象となる事件が成年後見と未成年後見に限られるという点でも後見制度支援信託と共通しています。

(2) 後見制度支援預金のメリット・デメリット

後見制度支援預金も、後見制度支援信託と同様に預金を払い戻したり預金契約を解約したりするために、裁判所が発行する指示書が必要となります。

そのため、制度の目的や基本的な仕組みは、後見制度支援信託と共通していますので、後見制度支援預金のメリット・デメリットは、後見制度支援信託のメリット・デメリットとほぼ共通しているといえます。

(後見制度支援預金に特有のメリット・デメリットもありますが、それについては、以下の両制度の相違点の説明において紹介します。)

3.後見制度支援信託と後見制度支援預金の相違点

後見制度支援信託と後見制度支援預金は、いずれも本人の財産を適切に管理するための制度であり、基本的な仕組みや手続きは共通します。

しかし、それぞれ別の制度として存在していますので、いくつか異なる点も存在しています。

以下では、後見制度支援信託と後見制度支援預金の相違点について説明します。

(1) 専門職後見人の選任

後見制度支援信託を利用する場合には、本人の生活状況や財産状況などを踏まえて、後見制度支援信託の利用に適した事案であるかどうかを検討するために、必ず専門職後見人が選任されることになります。
そして、家庭裁判所によって選任された専門職後見人が信託銀行などとの間で信託契約を締結します。

これに対して、後見制度支援預金は、専門職後見人を選任するかどうかは、家庭裁判所が判断することになりますので、専門職後見人が選任されないこともあります。

専門職後見人が選任されない場合には、後見制度支援預金の口座開設などの手続きを行わなければならないなどの負担はありますが、専門職後見人に支払わなければならない報酬が不要になるというメリットもあります。

(2) 後見制度支援預金は対応できる金融機関が多い

後見制度支援信託に対応することができる金融機関は、既に説明したとおり非常に少ないため、都市部に住んでいる方でなければ利用する際に不便なこともあります。

しかし、後見制度支援預金の取り扱いをしていている金融機関は、信用金庫、信用組合、農業協同組合(JA)、メガバンクや地方銀行など幅広い金融機関で取り扱いがなされています。
地方に在住の方には、後見制度支援預金の方が利用しやすいといえるでしょう。

(3) 特別な手数料の有無

後見制度支援信託を利用する場合には、信託銀行などに対して信託報酬(管理報酬、運用報酬)を支払わなければならないところが多いです。
また、最低受託額が1000万円以上に設定されていることが多いため、多額の金融資産を有している方でないと利用しづらい制度となっています。

しかし、後見制度支援預金は、後見制度支援信託を利用する場合よりも手数料が低額であるケースが多いです。
後見制度支援信託のような最低受託額の設定もありませんので、誰でも利用がしやすい制度であるといえます。

4.まとめ

後見制度支援信託および後見制度支援預金は、いずれも本人の財産を安全に管理することを目的とした制度です。

親族後見人としても、高額な金銭を管理するという負担から解放されるというメリットがありますので、利用に適した事案である場合には、裁判所と協議をしながら利用を進めていっても良いかもしれません。

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