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遺留分

遺産分割協議成立後に遺留分侵害額請求はできる?

相続人の遺留分が侵害されるほどの内容の贈与や遺贈があった場合、遺留分侵害額請求を行うことができます。

これが遺産分割協議による遺産分割の場合にはどうなのでしょうか。

「遺産分割協議の内容に署名捺印はしたけれども、本当は納得していない、遺留分侵害額請求を行いたい。」という場合には、遺留分侵害額請求を行うことはできるのでしょうか。

1. 遺産分割協議と遺留分について

まず結論になりますが、遺産分割協議後に遺留分侵害額請求を行うことはできません。

大前提として、遺産分割協議と遺留分はまったく別物になるからです。

(1) 遺産分割協議とは

遺産分割協議は、遺言書がない場合や、遺言書で相続分の指定のみがされている場合に、相続人同士でどのように遺産を分割をするのかを話し合うために行われるものです。

よって、遺産分割協議の中では自身の相続分について主張し、納得できない場合は、遺産分割協議書に署名捺印しないことで不利益を被ることを防ぐことができます。

遺産分割協議が終わり、遺産分割協議書に相続人全員の署名捺印があるということは、相続人全員がその相続分に納得しているということになるため、遺留分侵害額請求の必要性はないということになります。

(2) 遺留分とは

遺留分とは、兄弟姉妹を除く相続人に設けられている最低限度の相続分をいい、遺言書によって他の人が遺産を独り占めすることになるなど、自身の遺留分が侵害されている場合に請求すべきものです。

よって、遺産を法定相続分で分ける場合や、遺産分割協議による場合には、被相続人の意思によって遺産が分配されるわけではないため、遺留分の侵害は発生しません。

遺留分とは [参考記事] 遺留分とは|概要と遺留分割合をわかりやすく解説

(3) 遺言書の無効を主張し遺産分割協議を申し入れた場合

ただし、遺言書がある場合に、その内容に不満がある相続人がその無効を主張し、他の共同相続人に対して遺産分割協議の申し入れをした場合には注意が必要です。

遺言書の内容に有利となる相続人が遺言書の無効を受け入れることは当然稀であり、争いが長期化することも少なくありません。しかし、遺留分侵害額請求権は、相続や贈与、遺贈が遺留分を侵害していることを知った日から1年間行使しなければ時効によって消滅してしまいます(民法第1048条)。

そこで、この遺産分割協議の申し入れに遺留分侵害額請求の意思表示が含まれているのかどうかが問題となります。

2.遺産分割協議に遺留分侵害額請求は包含されている?

遺産分割協議の申し入れに遺留分侵害額請求の意思表示が含まれているのかどうかについて、平成10年6月11日に最高裁判所は次の判決を下しています。

(1) 判決の要旨

「遺産分割と遺留分減殺とは、その要件、効果を異にするから、遺産分割協議の申入れに、当然、遺留分減殺の意思表示が含まれているということはできない。
しかし、被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合には、遺贈を受けなかった相続人が遺産の配分を求めるためには法律上、遺留分殺によるほかないのであるから、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解するのが相当である。」

遺産分割協議と遺留分はまったく別物であることから、遺産分割協議の申入れに、遺留分減殺請求の意思表示が必ず含まれるということはできません。

しかし、遺言によって遺産の全てが相続人の一部に偏って承継され、遺産をまったく取得できなかった相続人が遺産分割協議を申し入れた場合には、実質的に遺留分侵害額請求としての意味合いしかないと考えられるため、遺産分割協議の申入れに遺留分減殺請求の意思表示が含まれていると判断されました。

【出典サイト】裁判例結果詳細 | 裁判所

(2) 判決のポイント

原則:遺産分割協議の申し入れに遺留分侵害額請求の意思表示は含まれません。
例外:遺言書によって遺産全部を相続人の一部が相続する場合、かつ、遺留分行使権者がその遺言書の効力を争っていない場合には、遺留分侵害額請求の意思表示も含まれます。

遺言書の効力を争う場合には、遺産分割協議の申し入れに遺留分侵害額請求の意思表示は原則含まれないため注意しましょう。

3.遺産分割協議のやり直しは可能

遺産分割協議後に遺留分侵害額請求は原則としてできませんが、遺産分割協議自体をやり直すことはできます。

[参考記事] 遺産分割協議はやり直せる?やり直しの期限・税金との関係も解説

(1) 相続人全員による合意解除

遺産分割協議は当事者間のみの問題であるため、関与している相続人全員の合意が得られた場合には、以前の合意内容を破棄して新たな協議を始めることができます。

ただし、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者の合意も得なければならない点に注意しましょう。

(2) 遺産分割協議の取消

遺産分割協議が行われた際にある相続人に重大な錯誤があり、本人に過失がない場合には、その合意は無効となるため、その遺産分割協議も相続人全員の合意が得られていないため取消しになります。

また、遺産の情報を正しく伝えなかったなどの詐欺行為や、合意を強迫するなどの問題があった場合にも同様です。

(3) 第三者の権利を害することはできない

やり直したい遺産分割協議において、既に第三者が絡んでいる場合には注意が必要です。

例えば、その協議で取得した遺産を既に第三者に売却している場合などが挙げられます。遺産分割協議をやり直すからといって、その第三者から遺産を取り戻すことができるということにはなりません。

第三者の権利は守られているため、遺産分割の全てをやり直すことはできない場合もあります(民法第545条第1項)。

(4) 再度の遺産分割協議は所得税・贈与税の課税対象

税法上では、最初の遺産分割で相続が完了したとして扱われる点に注意しましょう。

その時点で相続税が課されることになるため、再度の遺産分割協議の後は、最初の協議の取得者から新たな取得者への移転として、贈与または譲渡として扱われることになるため、贈与税や所得税の課税対象になります。

(5) 遺産分割協議に時効はない

遺産分割に時効はありません。再度の遺産分割についても同様で、何年後であっても相続人全員の合意があれば行うことが可能です。

しかし、錯誤、詐欺や強迫を理由に遺産分割を取り消したいときの取消権には追認をできるときから5年の消滅時効がある点に注意しましょう(同法126条)。

4.まとめ

遺産分割協議後では原則として遺留分侵害額請求はできません。

「協議内容に納得はしていないけれど、とりあえず合意しておいて、あとから遺留分侵害額請求をすれば良いか」というのは通用しないのです。

遺産分割協議は条件によってはやり直せるとはいっても、その内容に有利な相続人がいる以上、一度決まったものを覆すことは非常に困難です。
また税金や登記の問題も付いて回るため、「遺産分割協議は慎重に行う」「言いたいことは言う」「納得していないなら同意しない」ことが重要です。

遺産分割協議や遺留分について悩まれた際には、できるだけ早く弁護士へ相談しましょう。

泉総合法律事務所では、相続問題について積極的に取り組んでいます。遺産分割協議についてお悩みの方は、是非一度ご相談ください。

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