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家族信託

家族信託の内容を変更したい

家族信託は数年、数十年に渡る運用が多くなるため、当然ながら、家族の状況の変化に伴って信託期間中に契約内容や受益者・受託者を変更したいという事態になることがあります。

家族信託の契約内容は運用途中でも変更することが可能です。では、何をどうすれば良いのでしょうか。

1.家族信託の内容の変更方法

家族信託の内容の変更方法は、当初の信託契約の内容によって取る方法が異なります。

(1) 信託契約に定めがある場合は定めに従う

信託契約書に信託内容の変更に関する定めがある場合には、それに従います。

例えば、「契約内容の変更は、委託者と受益者の合意によって行うことができる。」と記載されている場合には、その二者の合意さえあれば受託者の同意を得ずとも変更することができます。

(2) 信託契約に定めがない場合は信託法149条に従う

信託契約書に契約内容の変更に関する記載がない場合には、原則として、委託者・受託者・受益者の三者全員の合意が必要になります。

しかし、家族信託は認知症に備えて利用する人が多い制度であり、変更した時には既に委託者は意思判断能力を失っている可能性、また三者合意だと相当の時間を要してしまう場合などのために、信託法149条第2項以下で、次の例外も設けられています。

<例外>

① 信託の目的に反しないことが明らかな場合
受託者と受益者で合意をしたうえ、委託者へ通知することで変更します。

② ①かつ受益者の利益に適合することが明らかな場合
受託者は書面または電磁的記録(パソコンで作成したDVDデータなど)によって意思表示をし、委託者と受益者に通知することで変更します。

③ 受託者の利害を害しないことが明らかな場合
委託者と受益者による受託者に対する意思表示により信託契約の内容を変更します。

④ ①かつ受託者の利益を害しないことが明らかな場合
受益者は受託者に対して意思表示をし、委託者へ通知することで変更します。

(3) 裁判所による変更(信託法150条)

信託契約当初には予見することができなかった事情により、事務処理全般についての信託行為の定めが、信託目的・信託財産の状況その他の事情に照らして受益者の利益に適合しなくなったときは、委託者・受益者または受託者が裁判所へ申立てを行い、裁判所がそれを認めた場合には変更が命じられます。

例えば、受託者が信託財産の運用から得た利益を着服した場合、委託者と受益者は裁判所へ申し立てて、受託者を辞めさせることができます。

2.家族信託の受益者・受託者の変更

次に、受益者や受託者を変更したい場合の方法を解説します。

(1) 受益者の変更

信託期間中に、受益者を指定する権利のことを「受益者指定権」、変更する権利のことを「受益者変更権」といい、両者を合わせて「受益者指定権等」といいます(信託法89条1項)。

例えば、父を委託者兼受益者、子を受託者とし、その後父が死亡した場合、受益者は子となり同時に受益者指定権者となる家族信託を締結した場合を考えてみましょう。

すると、父の死後に受益者となった子は、介護など自身への貢献度に応じて、自身の子(父から見ると孫)の中から受益者を指定することができます。

さらに、受益者指定権だけではなく、受益者変更権も付して受益者指定権等としておけば、やはり他の子を受益者にしようと思った時にも変更することが可能になります。

この仕組みは事業承継の場面にも応用することができます。

後継者候補が複数いる場合、経営者に受益者指定権等を与え、事業用資産を信託財産とする家族信託を設定すれば、それぞれの後継者候補の経営手腕を見極めてから受益者を指定することができます。

また、受益者指定権等と設定しておけば、もし、当初の受益者指定における目論見と異なり、他の後継者候補にすべきだったと経営者が考え直した場合であっても、その後継者候補へ受益者を変更することができます。

株式を贈与や売買などで完全に後継者に権利移転させてしまった後では、このように簡単には変更できませんので、このような受益者指定権等による後継者指名方法は、後継者選定方法の選択肢を増やすことになりそうです。

受益者の変更は、現受益者から新受益者へ信託財産からの利益を得る権利を無償で貰ったということになるため、新受益者は贈与税の課税対象になる点に注意しましょう。

【受託者指定権等の行使方法】
受託者指定権等は、次のいずれかの方法で行使することができます。

  • 受託者に対する意思表示
  • 受託者が受益者指定権等を有する場合には、受益者となるべき人に対する意思表示
  • 遺言

(2) 受託者の変更

受託者の変更は、現受託者が自身で辞める場合(辞任)と、何らかの事情により辞めさせられる場合(解任)があります。

いずれも委託者と受益者の同意により可能となりますが、家族信託で多いのは委託者=受益者であるため、実務上は委託者兼受益者の独断で辞任または解任ができるということになります。

そして、次に新たな受益者を決めなければなりません。信託契約書に後継受益者の定めがある場合には、それに従います。

もし、その後継受益者が就任を拒否した場合や、信託契約書に定めがなかった場合は、委託者と受益者の合意により新たな受託者を選任します。

3.家族信託変更の問題は委託者の判断能力

信託内容に変更に関する定めがない場合には、原則として委託者、受託者、受益者の三者の合意が必要になります。

受託者の判断能力が低下した場合には、後継受託者就任により解決することができ、受益者の場合には、受託者に代わって資産の管理運用や財産給付について指示できる受益者代理人を設置することができます。

これが委託者の判断能力が低下した場合になると、三者間の合意を行うことができないため、内容によっては希望通りの変更ができない可能性があります。

家族信託の内容が変更できるかどうかは、委託者の判断能力にかかっている部分が大きいため、判断能力が低下する前に、契約内容の変更により合意を要する者から委託者を除くなど、不測の事態に対応できるようにしましょう。

ただし、反対に、あまり簡単に変更できるようにしてしまうと、委託者の願いから離れた内容に変えられてしまう可能性もあるため注意しなければなりません。

4.まとめ

家族信託の契約内容は、期間中であっても変更することができます。
ただし、当初の契約内容に変更に関する定めがあること、定めがない場合には委託者・受託者・受益者が元気でいることが重要になります。

家族信託は自由で柔軟な設計ができる点が大きなメリットですが、反面、あらゆる可能性を考慮しなければならない難しさがありますので、契約内容を変更する際には弁護士へのご相談をおすすめします。

泉総合法律事務所では、相続問題の解決策の一つとして、家族信託についてのご相談も承っております。

家族信託であれば、ご家族の事情にあわせて対応することが可能です。そういった意味からも、できれば契約内容の作成時点からご相談いただけると幸いです。

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