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遺言書に関するよくある質問

Q

遺言書の作成を考えているのですが、遺言書ではどのようなことができるのですか?

A
遺言をすることにより、遺言者の財産をどう分けるかを決定したり、遺言者がその子供を認知したり、また誰が遺言の内容を実現するかを決めることができます。
詳しく述べますと、遺言の内容は、以下の通り、①相続の法定原則の修正に関する事項、②相続以外の財産処分に関する事項、③身分関係に関する事項、④遺言の執行に関する事項、⑤付言事項にわけることができます。
まず①としては以下のような内容を定めることができます。
・相続分の指定:
各相続人が相続する財産の割合(相続分)を定め、または相続分を決めることを誰かに委託することができます。例えば、妻および長男の3人家族で、長男は働いて収入を得ているが、妻には収入がなく今後の生活に不安があるような場合、妻の法定相続分は2分の1ですが、遺言によって妻の相続分を4分の3、長男の相続分を4分の1と指定することで、妻により多くの財産を残し、今後の生活の助けとすることができます。
・特別受益の持戻し免除:
相続人のうちの誰かが、被相続人(遺言をする人)から遺贈や贈与を受けた場合、この贈与財産を無視して相続分を決定すると、結果としてこの相続人が他の相続人より多くの財産をもらえることになります。民法は、基本的にはこのような偏りがないよう、被相続人からの遺贈や贈与について、相続分の計算に反映させるものとしており、これを「特別受益の持ち戻し」といいます。もっとも、被相続人としては、このような計算方法を希望しない場合もあるでしょうから、そういった場合には「特別受益の持ち戻し」を「免除」し、相続分の計算から、遺贈や贈与した財産を反映させないようにすることができます。
たとえば、長男に対して自宅を生前贈与したが、残りの財産については相続人である兄弟で均等に分けてほしいというような場合には、「特別受益の持戻し免除」をすることとなります。
・遺産分割方法の指定等:
相続が発生した場合、被相続人の財産は、相続人間で共有となり、その後、相続人の間で、どのように遺産を分けるか協議することとなります(遺産分割協議)。遺言の中で、遺産の分け方を指定することで、誰にどの遺産を与えるかを決めることができます。また、5年を限度として、遺産の分割を禁止することもできます。
たとえば、長年暮らしていた土地建物については長男に与え、預金や現金などについては次男に与えたい、というような場合には、その旨の遺産分割方法の指定をすることとなります。
・遺産分割における担保責任に関する別段の定め:
民法は、相続財産に予想外の欠陥が見つかった場合や、相続した債権について債務者の資産状況が悪化したため債権回収ができなくなった場合について、相続人全員の負担となるよう調整する規定を置いています(民法911条ないし913条)。遺言によってこの調整をしないようにすることができます。
・遺贈の減殺方法に関する別段の意思表示:
遺留分減殺方法としての遺贈は、民法上、その目的物の価額の割合に応じて減殺されます。しかし、遺言によって、遺贈についての遺留分減殺請求の順序や割合を指定することができます。
・推定相続人の廃除、排除の取消:
被相続人を虐待したり、著しい侮辱をした者、著しい非行がある者について、相続人としての地位を喪失させ、財産等を与えないことができます。
・祖先の祭祀主宰者の指定:
仏壇や墓地などの管理をする者を指定することができます。
また②については、以下のような内容を定めることができます。
・遺贈:財産の全部または一部を相続人や相続人以外の者に与えることができます。個別の財産について与えることとするだけでなく、総財産の一定割合を与えるとすることができます。また、遺贈の相手方に一定の法的義務を負担させることも可能です(負担付遺贈)。たとえば、建物を遺贈する代わりにペットの面倒をみて欲しい、といった場合にはこの負担付遺贈をすることが有効ですが、相手方は遺贈を拒絶することもできる点に気を付けなければなりません。
・相続財産に属しない権利の遺贈について別段の意思表示(民法996条但書):被相続人の死亡時に、被相続人が所有していなかった財産(他人の財産)について、相続人または遺言執行者にこれを購入するなどさせ、被相続人の希望する者に対して与えるよう義務づけることができます。
・その他:生命保険の受取人の変更、信託の設定、財団法人設立のための寄付行為をすることができます。
また③については以下のような内容を定めることができます。
・認知:血は繋がっているが嫡出ではない子、未だ認知していない子について、法律上の親子関係を発生させ、相続人の一人とすることができます。なお、子が成年の場合には、その承諾が必要です。
・未成年後見人等の指定:遺言をする者以外に未成年者の親権をもつ者がいない場合、遺言で未成年後見人を指定することができます。また未成年後見人を監督する未成年後見監督人を指定することができます。
また④については以下のような内容を定めることができます。
・遺言執行者の指定:遺言の内容を実現する者(遺言執行者)を指定することができます。またその指定を誰かに委託することもできます。遺言による認知や、推定相続人の廃除、排除の取消については、遺言執行者でなければできませんので、これらの行為をする場合には予め遺言執行者を指定しておくことをお勧めします。
またそれ以外の場合でも、例えば不動産を遺贈する場合など、遺言執行者がいない場合には相続人全員の署名押印をもらうなどしなければ遺贈の登記ができませんが、遺言執行者の指定があれば、遺言執行者の協力だけで遺贈の登記をすることができるなど、遺言の執行がスムーズに進むメリットがあります。
最後に⑤ですが、遺言の内容として希望や訓戒を残すことができます。これらの記述に法的効力はありませんが、相続人の皆様にとって後の人生の一助となるはずです。
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