遺言書に関するよくある質問
私が死亡した後、長男に妻の面倒を見てもらいたいと思っています。長男に妻の面倒を見てもらう代わりに、すべての財産を長男に与え、妻と長女には財産を与えないという内容の遺言を作ることはできますか?
妻の扶養義務を負担させた上で財産を遺贈する、負担付遺贈として可能です。この場合、遺贈を受けなかった他の相続人から遺留分を侵害されたとして遺留分減殺請求がなされてしまう可能性もありますので、予め妻と長女に遺留分を放棄してもらうべきです。
もう少し詳しく述べます。
負担付遺贈は、受遺者に対して一定の法律上の義務を負担させる遺贈です。本件では、全財産を長男に遺贈するとともに、長男に対して妻を扶養する法的義務を課すこととなります。
もっとも、負担付遺贈は、受遺者の方で放棄することができます。父の死後、長男が、そのような遺贈は受け入れられないとして遺贈の放棄をすれば、遺産が長男の所有となることもありませんし、また長男が妻の扶養義務を負うこともありません。このような場合には、負担の利益を受ける者である妻が受遺者として総財産を受け取ることとなります。
また負担付遺贈の受遺者が負担を果たさないような場合には、相続人・遺言執行者は、家庭裁判所に請求して遺贈を取り消すことができます。たとえば、長男が全く妻の面倒を見ないような場合であれば、妻や長女、遺言執行者を指定した場合であれば遺言執行者が、長男に対して妻を扶養するよう催告し、それでも長男が義務を果たさないときは、負担付遺贈を取り消すことができます。この取消しをした場合には、遺産は、法定相続分に従い、妻が5割、長男が2割5分、長女が2割5分という割合で相続することとなります。長男は、負担付遺贈の負担としての扶養義務を果たさずとも、総財産の2割5分を受け取ることが可能なのです。
なお、今回は全財産を目的とする負担付遺贈ですので問題ないと思われますが、負担付遺贈の場合の受遺者の責任の範囲は、遺贈される目的物の価格(負担の履行時)を超えない限度となります。本件の場合で仮に父の総財産が1万円程度しかなかったような場合、長男は、1万円の範囲で妻を扶養すれば足り、以降の扶養については原則通り長女と共同して行うこととなります。
また遺留分減殺請求権についても注意が必要です。予め妻と長女が遺留分を放棄している場合であれば特に問題となることはありませんが、これを放棄していなかった場合、相続発生後に相続人がこれを行使することが考えられます。本件では、長女が事前に遺留分を放棄していなかった場合、長女は、相続財産の8分1について遺留分を持っています。遺留分減殺請求権を行使されると、その分長男へと遺贈される財産が減ることとなり、長男は遺産の8分の7の限度でしかを取得できない結果となります。またこの場合、長男が扶養すべき責任の範囲も減少します。総財産が800万円だったとすれば、長男は700万円の遺産を取得し、長女は100万円の遺産を取得することとなり、長男が妻を扶養する責任は、700万円の範囲で足りる、ということとなります。
負担付遺贈でもって長男に妻の扶養をしてもらいたいという場合には、負担付遺贈をする前提として、ご家族と良く話し合い、長男に対して扶養を約束してもらい、また妻と長女から遺留分の放棄をしてもらうようにするとよいでしょう。
もう少し詳しく述べます。
負担付遺贈は、受遺者に対して一定の法律上の義務を負担させる遺贈です。本件では、全財産を長男に遺贈するとともに、長男に対して妻を扶養する法的義務を課すこととなります。
もっとも、負担付遺贈は、受遺者の方で放棄することができます。父の死後、長男が、そのような遺贈は受け入れられないとして遺贈の放棄をすれば、遺産が長男の所有となることもありませんし、また長男が妻の扶養義務を負うこともありません。このような場合には、負担の利益を受ける者である妻が受遺者として総財産を受け取ることとなります。
また負担付遺贈の受遺者が負担を果たさないような場合には、相続人・遺言執行者は、家庭裁判所に請求して遺贈を取り消すことができます。たとえば、長男が全く妻の面倒を見ないような場合であれば、妻や長女、遺言執行者を指定した場合であれば遺言執行者が、長男に対して妻を扶養するよう催告し、それでも長男が義務を果たさないときは、負担付遺贈を取り消すことができます。この取消しをした場合には、遺産は、法定相続分に従い、妻が5割、長男が2割5分、長女が2割5分という割合で相続することとなります。長男は、負担付遺贈の負担としての扶養義務を果たさずとも、総財産の2割5分を受け取ることが可能なのです。
なお、今回は全財産を目的とする負担付遺贈ですので問題ないと思われますが、負担付遺贈の場合の受遺者の責任の範囲は、遺贈される目的物の価格(負担の履行時)を超えない限度となります。本件の場合で仮に父の総財産が1万円程度しかなかったような場合、長男は、1万円の範囲で妻を扶養すれば足り、以降の扶養については原則通り長女と共同して行うこととなります。
また遺留分減殺請求権についても注意が必要です。予め妻と長女が遺留分を放棄している場合であれば特に問題となることはありませんが、これを放棄していなかった場合、相続発生後に相続人がこれを行使することが考えられます。本件では、長女が事前に遺留分を放棄していなかった場合、長女は、相続財産の8分1について遺留分を持っています。遺留分減殺請求権を行使されると、その分長男へと遺贈される財産が減ることとなり、長男は遺産の8分の7の限度でしかを取得できない結果となります。またこの場合、長男が扶養すべき責任の範囲も減少します。総財産が800万円だったとすれば、長男は700万円の遺産を取得し、長女は100万円の遺産を取得することとなり、長男が妻を扶養する責任は、700万円の範囲で足りる、ということとなります。
負担付遺贈でもって長男に妻の扶養をしてもらいたいという場合には、負担付遺贈をする前提として、ご家族と良く話し合い、長男に対して扶養を約束してもらい、また妻と長女から遺留分の放棄をしてもらうようにするとよいでしょう。
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