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相続に関する税金

相続財産の固定資産税は誰が負担する?

不動産に固定資産税は付き物であす。相続によって取得した不動産であっても、固定資産税を納めなければなりません。

しかし、相続した不動産などの固定資産税を、誰が負担するのかについて、相続人間で揉めることも少なくありません。
こんなはずではなかったとならないためにも、今回は相続財産にかかる固定資産税について詳しく解説します。

1.相続財産の固定資産税は

まずは、相続財産に課税される固定資産税の基本から解説します。

(1) 固定資産税の対象となる財産

固定資産税は次の固定資産に課される地方税です。毎年春頃に固定資産の所在する市町村から納付書が届くので、金融機関などで支払います。

  • 土地(宅地、田畑、山林など)
  • 家屋(家屋、店舗、工場、倉庫など)
  • 償却資産(工具器具、機械装置などの事業用資産)

(2) 固定資産税の納税時期

固定資産税は一括払いか年4回の分割払いを選択することができます。

4回の納税期日は各市区町村によって異なっており、例えば、東京23区の令和3年度の納期は次のようになっています。

  • 第1期(令和3年6月1日から6月30日まで):6月30日
  • 第2期(令和3年9月1日から9月30日まで):9月30日
  • 第3期(令和3年12月1日から12月27日まで):12月27日
  • 第4期(令和4年2月1日から2月28日まで):2月28日

例えば、第2期の納付時に第3,4期分も一緒に支払うなど、当初は4回払いのつもりでも、途中で残りの固定資産税すべて支払うことも可能です。

(3) 相続財産の固定資産税納税者義務者

固定資産税の納付義務者は、1月1日時点で所有者として固定資産課税台帳に登録されている方です。

もし、被相続人が、その年の10月に亡くなったとしても、1月1日時点で所有者として固定資産税課税台帳に登録されていれば、被相続人にその年の残りの固定資産税の義務があります。

その納付義務は、相続人全員に相続されることになります。したがって、相続開始日から遺産分割終了までの期間は、固定資産税が相続人全員の連帯債務となり、相続人全員に支払いの義務が生じます。ただし、相続人全員に納付義務があるというだけで、誰がどのように支払うのかは相続人同士の話し合いで決めることができます。

その後、遺産分割が確定すると、その固定資産を取得した方が、固定資産の納付義務者となります。

  • 被相続人が死亡するまで:被相続人
  • 相続開始から遺産分割終了まで:相続人全員の連帯債務
  • 遺産分割後:固定資産の相続人

2.固定資産税の支払い方

相続した固定資産に課税される固定資産税は、遺産分割前と遺産分割後で支払い方法も変わります。

(1) 遺産分割前

前述した通り、遺産分割されていない固定資産は、相続人全員の共有財産となっているため、固定資産税も相続人全員が納税の義務を負っています。

一般的には、法定相続分に応じてそれぞれの負担を決めますが、全員の合意があれば、その割合は自由に決めることができます

相続人の代表者が支払う場合

複数いる相続人のうちの1人が固定資産税を支払うことになった場合には、市町村へ「相続人代表者指定届」を提出すると良いでしょう。

遺産分割前の固定資産は、被相続人を所有者として登録されているため、固定資産税の納付書は被相続人宛に送付されます。相続人代表者指定届を提出しておけば、代表相続人の元へ納付書が送付されるため、納付忘れの心配がありません。

相続人全員が分割して支払う場合

相続人全員でそれぞれ負担することにした場合には、代表相続人がそれぞれからお金を集めて納付することになります。相続人がどのように納付するかは市町村には関係がなく、納付書は変わらず1枚しかないためです。

故人の遺産から支払う場合

遺産分割前の固定資産税は、相続財産から支払われることも一般的に行われています。

相続財産に手を付けることになるため、事前によく話し合い、相続人全員が納得したうえで行いましょう。支払う際においても、固定資産税の支払いに使ったということがはっきり分かるように、領収書などの証拠書類を確実に残しておきましょう。

相続人全員が相続放棄した場合

相続放棄は、相続する一切の権利・義務を放棄することであり、固定資産税の納税義務もなくなります。相続人全員が相続放棄した場合には、相続財産法人が納税義務を負うことになり、相続財産管理人が選任された場合は、相続財産の中から固定資産税が支払われます。

ただし、この場合に注意しなければならないのは、固定資産税は毎年1月1日時点で課税台帳に登録されている人が納税義務者となることです。

相続放棄のタイミングによっては、1月1日時点で納税義務者となっており、固定資産税の納税義務を負う可能性があるため注意しましょう。

(2) 遺産分割後

新所有者が支払う場合

遺産分割によって固定資産の新所有者が決まり、法務局での相続登記が完了すると、その翌年1月1日時点における固定資産税課税台帳上の所有者はその固定資産の相続人となり、固定資産税の納税義務者になります。よって、春には新所有者である相続人の元へ納付書が届きます。

共有名義にする場合

共有名義で相続登記をすると、市町村から代表者を聞かれます。その後は、調査の問い合わせへの対応や、納付書の受け取りから納付まで、代表者の役目になります。

代表者は共有名義人からそれぞれ固定資産税を預かり、まとめて納付します。共有名義人のそれぞれに納付書が届き、別々に納税するわけではありません。

もし、共有名義人の誰かが支払わないために、結局滞納となった場合には、代表者の元へ督促状が届きます。

共有名義人は固定資産税の支払いについて連帯納付義務を負っているため、払わない共有者の責任では終わりません。最悪の場合、きちんと支払っている共有名義人の財産を差し押さえられる可能性もあります。

「固定資産の共有は避けた方が良い。」というのは、固定資産税の支払いにも共通して言えることです。

固定資産が未登記だった場合

車庫や物置などの簡易的な建物のような固定資産は、わざわざ余計な費用をかけて登記しないのが実情ではあります。

しかし、未登記であっても固定資産税はかかります。役所は登記情報のみに頼っているわけではなく、定期的な現地調査や航空写真などを駆使して、固定資産税の課税漏れがないように努めているからです。

未登記のままにしておく場合には、役所へ「所有者変更届」を提出して、今後の固定資産税の納付者を知らせておきましょう。

遺産分割完了後に相続登記をしていない場合

固定資産に相続が発生したことは死亡届からすぐに把握されるため、相続人の誰かに固定資産税の納付書が送付されてきます。相続登記しないことにメリットはありません。

相続登記をしないと、その固定資産を売却することができません。相続した不動産の売却には各種特例が設けられており、税金の優遇を受けることができます。チャンスを逃さないためにも、相続登記は速やかに行いましょう。

3.固定資産税の評価方法

固定資産税は市町村が計算して納付書を送付してくるため、どのように計算されているのかは知らない人が多いでしょう。簡単に解説します。

(1) 固定資産税の算出方法

固定資産税は、次の通り、固定資産の課税標準額に、標準税率である1.4%を乗じて算出されます(なお、標準税率と異なる税率を設定している自治体もあります。)。

固定資産税=課税標準額×標準税率(1.4%)

課税標準額とは固定資産の評価額のことであり、税額計算の基礎になる金額のことをいい、この金額の計算方法が固定資産の種類によって異なってきます。

固定資産税の算出自体は税率を乗じる簡単なものですが、この課税標準額の計算が複雑です。

(2) 土地の評価額の計算方法

土地の評価額は「路線価方式」による次の算式で計算します。

土地の評価額=土地の面積×路線価

路線価とはその土地が面している路線の価値であり、国税庁が細かく定めています。

【参考サイト】財産評価基準書|国税庁

(3) 家屋の評価額の計算方法

家屋の評価額は、次の通り「再建築価格方式」によって計算します。

再建築価格方式とは、再度同じ家屋を建築する場合の建築費を求め、それに経年劣化分の減価率を乗じて評価額を計算する方法です。

家屋の評価額=評点1点あたりの価額×床面積×単位面積あたりの再建築費評点×経年減点補正率

この計算は非常に複雑であるため、ご自分で細かく計算することは難しいでしょう。

家屋の対価(購入価格)に70%を乗じた金額を評価額として標準税率を乗じることで、概算の固定資産税が計算できます。

(4) 償却資産の評価額の計算方法

償却資産の評価額は、その償却資産の取得が、賦課期日(1月1日)の前年中なのか、前年より前なのかで計算式が異なります。

前年中に取得した場合
取得価格 ×(1-耐用年数に応じた減価率※÷2 )

前年以前に取得した場合
前年度評価額 ×(1-耐用年数に応じた減価率)

前年中に取得した場合には、取得月にかかわらず半年分を償却します。
また、算出された評価額が取得価額の5%を下回った場合には、取得価格の5%相当額が評価額になります。

※減価率とは資産の劣化を数字で表したもので、各市町村に減価残存率表があります。
【参考サイト】東京都主税局<都税Q&A><減価残存率表>

4.相続財産の固定資産税納付の際のポイント

最後に、相続財産にかかる固定資産税を納付する際のポイントを解説します。

(1) 固定資産税の支払い期限に注意

固定資産税を納付期限までに支払わなかった場合には、延滞税が発生します。税額が大きければ大きい程、比例して延滞税の金額も高額になるため注意しましょう。

特に、相続財産の場合には、被相続人の元に納付書が届くこと、他にもやるべきことが多いことなどから、つい忘れてしまうことがありますが、もちろんそのような個人的事情は考慮してもらえません。ご自分で管理するしかないのです。

督促を無視し続けると、最終的には財産の差し押さえが行われてしまいます。固定資産税の金額が大きすぎて資金がないなど事情がある場合には、とりあえず役所に相談してみましょう。無視はしてはいけません。

(2) 未払固定資産税は相続税の債務控除の対象

未払固定資産税とは、被相続人が死亡した時点において納付義務がある固定資産税で、まだ納付していない部分をいいます。

例えば、固定資産税の納付期限が6月30日、9月30日、12月27日、2月28日である場合で、被相続人が7月10日に死亡したとすると、9月30日、12月27日、2月28日の納付分が未払固定資産税ということになります。

これは被相続人が本来支払うべき費用であり、相続税の債務控除の対象になるため、忘れずに行うようにしましょう。

ちなみに、被相続人が一括払いをしていたとすると、当然ながら死亡時点において未払固定資産税はないということになります。

5.まとめ

遺産分割前の固定資産税については、誰が負担するのかを揉めるケースが少なくありません。またその場しのぎに共有名義で相続してしまうと、その後の固定資産税の支払いでトラブルが発生することもあります。

弁護士を間に入れると、話し合いが円滑に進むケースは多々あります。またその時の取り決めも確実に残るため、後々にトラブルが起こる可能性も最小限にすることができます。

固定資産税がかかる相続財産がある場合には、遺産分割について弁護士へ相談してみましょう。

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